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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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32/428

アチラのお医者さんとアカカガチ3

「こごだ」


「えっ、ここって……」


 つれてこられたのは、商店街の中にあるさびれたゲーム・センターだった。 

 あまりお客さんもいない。

 若者はとくに少なくて、むしろお年寄りが時間をつぶしているようだ。ぼくはこういうところにはあまり来たことが無いので、どうしていいのかわからない。


「あの、先生は?」


「いねぇ。いるのは、オメエだげ」

 そう言って、豚鼻さんはぼくをそのゲーム・センターの奥につれていった。


 そこにあるのは、なかなか年季の入った、旧式のクレーン・ゲームだった。操作盤にはホコリがつもってるし、中に入っている景品もガラクタみたいで、まるで物置みたいだ。


 そんな古ぼけたゲームの前に立つと、豚鼻さんはいかにも真剣そうに

「あれ、()れ」

 ゆびさすのは、ほかのぬいぐるみやガラクタの下にうずもれている、ハトロン紙につつまれて中身の見えない四角い箱だった。


「えっ?取れって、ぼく、お金……」


「カネ、ある」

 そう言う豚鼻さんの手には、ゲーム・センター専用コインがにぎられていた。


「そんな。せっかくお金出すんなら、ぶ……おじさんが自分でしたらいいじゃないですか?」


「これ、のどい。オデ、さわでない。オメェ、サカイモノ。さわでる」

 よくわからないけど、どうやらこのクレーン・ゲームには呪い(のろい)がかかっていて、アチラモノにはさわることができない。しかしサカイモノなら操作できる。

 それでぼくが呼ばれたらしい。


「でも、ぼくクレーン・ゲームってしたことないよ。取れるかどうかわからない」


()でるまで、やれ」

 そう言うと、豚鼻さんはポケットをじゃらじゃらさせた。大量のコインを用意してるみたいだ。


(う~ん、にげられないな)

 ぼくは、かくごを決めると、おそるおそるはじめてのクレーン・ゲームに挑戦することにした。


挿絵(By みてみん)

 はじめにクレーンのヨコの動き、そのつぎにタテの動きを指定して……あっ、ほらっ、やっぱりつかみそこねた。


「むずかしいです。あの箱、取れにくいところにあるし、上にほかの景品が乗っかってて……」


()でるまで、やれ」


「――はい」


 豚鼻さんは容赦ない目でにらんでくる。ぼくは何回かくりかえして、やっといちばん上にあったシカのぬいぐるみをとった。

「シガ、いらね。(はご)()で」


「上から少しずつ、くずしていこうと思います」

 何回かくりかえしているうちにじょじょにゲームのコツがわかりだしてきた。なにもすべての景品をきれいにつかみあげなくてもいいのだ。クレーンをすこしひっかけてじゃまな景品をのぞけばいい。

 お金のことを気にせずゲームをするなんてはじめてで、ぼくもだんだん熱をおびてきた。


 そして、何十回目だろう。コインをさんざんつぎこんで余計なガラクタを出した末に、やっとねらいの箱をつかみだすことができた。


「やった!」

 つかもうとするぼくを


 ドンッ!

 と、らんぼうに押しのけたのは豚鼻さんだった。


「えっ?」


 とまどうぼくを見もせず

「これでいい。あの医者から、()った」

 血走った目でつぶやく豚鼻さんに、ぼくは不安を感じた。


「『取った』って……あなたはのんのん先生に言われて、これを取りに来たんじゃないんですか?」


 すると、豚鼻さんは、ニタリと口をいがめると

「ちがう。オデ、これ、ほしかった。だから、オメェ、だました。オメェ、ばが」

 わらいながら言った。


 ――えっ!?まずい!どうやらぼくはだまされたらしい。


「オメェ、ただ帰す、()ぐない。いま、ここで、()おう」


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