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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんとアカカガチ2

 ……図書館には三十分ほどいて、本を一冊借りた。

 「西遊記」の上巻だ。ぶあついからさけてたんだけど、おじさんのところで古いテレビ・ドラマ版を見て、ちょっと興味がわいたんだ。そのドラマでは孫悟空が綿菓子みたいな筋斗雲にのっててかわいかった。


 家でゆっくり読もうと帰ろうとしたとき、声をかけられた。

「――オメェが、のんのん先生の、助手か?」


 それは、よごれた黒のコートに、ハンチング帽をかぶった大柄なおじさんだった。一見ふつうの人に見えるけど、その顔のまんなかには上を向いて大きい、みごとな豚ッ鼻があって、しかも耳がとんがっている。

挿絵(By みてみん)

アチラモノだった。ぼくは思わず

(あっ、猪八戒!)と心のなかでさけんだ。


 コチラモノと話すのに慣れていないらしいそのようすに、ぼくは

「はい。そうですけどなんですか?」

 と、あいそよく応対した。

 先生の助手になってから、アチラモノに話かけられることはめずらしくなくなっていたからだ。


「オデは、のんのん先生の『つけい』だ」

 たどたどしいことばで、豚鼻さんは言った。


「使い?……ああ」

 ヨシノさんが言ってた「先生からのおねがい」か。ずいぶんはやかったな。

 今度は、紙ヒコーキじゃないんだ。


「えっと……それで、なんでしょう?」


「ついでごい」


「今からですか?」


「おあ」

 豚鼻さんは少し、目を光らせて言った。……どうも豚にしては体つきがシャープすぎるみたいだ。動きもなんだかふらふらしてぎこちない。

 たとえたらヘンだけど、まるで、よせあつめのボロ布を集めてパッチワークしたようなかんじだ。いったいなにものだろうと思ったけど、聞くのも失礼だ。

 それよりも助手として、のんのん先生の使いにはきちんと対応しないといけないだろう。もしかしたら、先生の出先でなにかあったのかもしれない。


 まだ、そんなにおそくないし、ぼくはすなおにそのぶっきらぼうな豚鼻さんのあとにしたがった。

 



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