アチラのお医者さん探索隊11
鉄甘露はこびのアリについていく道すがらも、いろいろな種類の働きアリたちが立ち動いている。
ほんとうに、巣の中で一つの社会ができているんだ。
「……あれは?アリのカタチをしてないね」
ぼくが小声でささやいた先にいるのは「茶色」の虫だった。はたらきもせず寝そべってボーッとしている。
ジャックが
「あれはハガネコオロギだな。やつは横着もので、アリの巣に侵入しては、ああやってアリに餌をわけてもらって生きている。今のおれたちと同じく、フェロモンと似たものを自分でうまく合成してハガネアリのふりをして生きている。擬態生物ってやつだ」
——まぎれこむなんて、やるなあ。アリたちにバレたら、おそろしいことになりそうだけど。
ぼくは感心して
「……じゃあ、あれもうまいことやってるんだね。見た目はケモノだけど」
ちがうものをなにげなく指さすと
みんなあわてて急にぼくをおさえてものかげに隠れた。
特に、セバスチャンの緊張ははなはだしくて
「なんでこんなところに、やつらがいやがる?」
うなるようにつぶやく。
ハガネアリといっしょに歩いているのは、大型のネズミだ。
顔面はなかなか荒々しい。
「やつらは、いやしい妖鼠だ。妖鼬……イタチとともにかむのから追放された連中だ」
口にするのもいやらしく、ペッと唾を吐く。
えっ?この街から追放って……この街のアチラモノって、べつになにかの法律でしばられてるわけじゃないし、みんな基本的になにしようと勝手でしょ?
だからアヤツリツカイみたいなやつでも、のうのう(?)と生きてる。
しかし若猫は、苦々しい表情をくずさず
「——あいつらは、かつてコチラモノに受けた恩を仇で返しやがった。それこそ、コチラモノ以下の呪われたケダモノどもよ」
ああ、前に先生が言ってた
「アチラモノはコチラモノに受けた恩を忘れない」……そのわずかな例外なのか。
それより猫から見ると、コチラモノ……人間のほうがケダモノなのね。




