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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんとエルフの親子14

「――エア、ちょっと来い。いいもの見せてやる」

 と、エアーノスがジャックにささやかれたのはひと月ほど前だったという。


「なんですか?」


 エアーノスにとってジャックは、右も左もわからない職人の世界を教えてくれる、いい先輩だったらしい。

 親方がケチすぎて行きとどかない分、こまかいことはみな先輩のジャックに教わっていた。

 エルフとゴブリン、種族こそちがえど、わかいエアーノス(本当はエアーノスのほうがずっと年上であるのだが)にとってはあこがれの存在だったらしい。 


 その先輩のさそいを断るはずもなく、親方の目の届かない作業場のすみに行くと、ジャックは、だまって頭にまいてあったタオルをはずした。


 そのひたいには毒々しいクモの入れ墨がほられてあった。


「兄貴!そんなことして、親方にバレたらクビになりますよ!」

 ジャックが親方に入れ墨の許可をもとめて却下されたことをエアーノスは知っていた。

 見られてはまずいとあわてる彼に、


 ジャックは

「だいじょうぶだ。だまって見てろ」

 そう言うと、なんと、ひたいにあった入れ墨は、まるで本物のクモのようにうごめきながら胸におりてきた。


「……わかっただろ?この入れ墨はオレの意思にしたがって体の表面を自由にうごくんだ。都合の悪いときは髪の毛の中にでもかくしちまえばいい。親方の目にもふれないですますことができる。いいもんだろ?」

 そう言って、耳せせ(みみせせ)まで口を開けてわらうゴブリン独特の表情は、親方の前では決して見せないものだった。


「どうだ?これならおまえでもバレずに入れ墨を入れられるぜ。やってみろよ」

 そう先輩に言われたエアーノスの心の中で、親方に見つかってしまう恐怖より、若者らしい無分別な好奇心が上回ってしまった。


挿絵(By みてみん)


「良い彫師を見つけたんだ。おまえにも紹介してやる」

 ジャックにしたがって、かむの駅そばのビルの一室につれていかれ、そこで入れ墨を入れてもらったのだという。


「その彫師というのは、どんな顔でしたか?」

 先生の問いに


「どうって……そういや、よくおぼえてないな。たしか男だったけど、いくつぐらいだったかもよくわからない……」


 とにかく、こうしてエアーノスは、ドクロ柄の入れ墨をその身に入れた。

 ふだんは二の腕や胸、背中にはわせていたが、仕事や風呂で、もろ肌ぬぎとなるときには入れ墨を頭の髪の下に移動させてかくしていた。

 命令したらそのとおり動く、まるでペットを飼うようなかんじで、カッコいいと思っていた。


 しかし、そのうちどこかおかしいと思うようになった。

 どうも、日に日に入れ墨が大きくなっているようなのだ。最初は3センチ四方ぐらいの小さなものだったのに、倍以上になってきたように思う。そして、だんだんに自分の言う通りではなく、かってに動いたりする。

 風呂場で母親に見つかったときはまさにそれだった。頭の中にかくれていろと言ったのに、背中にかってに出てきた。なんとかごまかすことはできたが、あせった。

 さらには体の具合までおかしくなってきているのにも気づいた。イライラしやすくなったし、もともとは大きらいでニオイをかぐのもいやだった肉や魚なんてものを欲しがるようになって、まるで自分の体が自分のものでない感じだ。

 母親にもおかしく思われはじめている。


 こわくなってジャックに相談したら

「体がなれるまで、ちょっとおかしくなる時期があるんだよ。それをのりこえればだいじょうぶ、もとどおりだ」と言われた。


 それでほったらかしにしておいたのだが、症状はよくなるどころか、ますます悪くなっていく。最近では、どうも記憶のかけている時間まであるようだ。 

 どうしたらよいか、母親にも言い出せず、苦しんでいるうち、ついには正気をうしなってしまったということだった。


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