アチラのお医者さんと憑物たち3
彼は姿勢を直すと
「ダンナがたにイヤな話をお聞かせすることになっちまって、あいすいやせん。とんだお耳汚しでございました」
ぼくは首をふった。
「……まさかそれから百年以上たって、消えたと思った同胞に出会うとは考えておりませんでした。それもこんな形でとは……」
シロタヌキのうめきに、のんのん先生は
「今アオタヌキくんが曲りなりにとはいえ形を保っていたということは、そのミィ……蛇霊の使い手はあなたのきょうだいを滅さなかったんですね。
おそらく、従属の契約をかけなおして自分の支配下に置いたんでしょう」
推測をのべた。
「じゃあ先生、アオをこんな浅ましいすがたにしやがったのはあのミィ使い……?」
「いえ、それはどうでしょう?百年も前のことです。蛇霊はともかく、その使い手自体はもうこの世にいないでしょう。このマゼモノは最近のしわざです。どういうことでしょうねぇ?」
先生にも見当がつかないようだ。
シロタヌキは手がかりがないことに、じっとしてられなくなったのだろう。
「――先生、じゃあアオのことはよろしくお願いいたしやす。あっしは、コイツらをこんな目に合わせた野郎のことを探し出しやす」
と、診療所を飛び出そうとする。
なにせアオタヌキの話だと、まだもう一匹のきょうだい・クロタヌキがひどい目にあっているようだから、必死だ。
そんなクダギツネを、のんのん先生は止めなかった。ただ
「無理はしないよう気をつけてくださいよ。こんなことをする相手は、アチラモノにしろコチラモノにしろまともじゃないですから、いつもよりさらに気をつけてください。
行動する前には必ずわたしに報告を入れてください。ひとりで動こうとしてはいけません。これは命令です」
とは言った。きびしい口調だ。
「――へい、ありがとうごぜぇやす」
シロタヌキは頭を下げると、部屋を出ていった。




