アチラのお医者さんと行者さま7
のんのん先生は童子の腕にかむの鋼製のメスを当てると、痛んだ部分を少し切り取り、そのあとをもう一度ひっつけて、細かな糸で縫いつけた。
よく見ると糸に見えたのは、先生が自分の指先から出す細やかな光だった。それが「念」ってやつなんだろう。
先生の念は、青紫っぽいおだやかな色だった。その念が傷まわりを丹念にめぐって固定した。
「――さあ、これでいいですよ」
そのことばどおり制多迦童子はうれしげに自分の腕をぶん回している。わきの矜羯羅童子もうれしそうだ。
行者は、金剛杵あたりをじっとにらんで
「そうか――ふむ。細かいことはわからんかったが、おぬし、わしの護法に自分の念を混ぜたな?」
「ほんの微量ですよ。なんといっても人間の念によって生み出された物霊の治療には、同じく念をつかうのが一番早いですからね。
わたしのわずかな念なんて、あなたが使役しているうちに置き換えられて、霧散してしまいますよ」
先生のことばに行者は、むずかしい顔のままだったけど
「――そうか、まあ良い。とにかく、これでまたこいつらは使えるな?」
「……使うとは、すぐですか?」
「ああ、受けた仕事がまだ残っとる。逃した獲物をしとめにゃならん」
「えもの」って、その「あやかし」ってやつかな?
のんのん先生は少し顔をしかめて
「あなたがたのことばでは『調伏』とか言うんでしたか?……しかし童子に無理はさせないでほしいですね。弱ったところからまた傷つくこともあります」
そのことばに、行者はきびしい表情で
「なにを言う。『道具』は使ってこそだ。わしがこのものたちをつくったのは、人に仇なす仏敵を調伏するためだ。このものたちの存在意義はそれのみにある。仏の道だ」
仕事人のきびしい表情になった。
そして、その行者の姿勢を童子たちも受け入れている。いつでも仕事に行くという顔だ。
先生は、ため息をつくと
「……あなたが仏を信じているとは、とても思えませんがね」
ちょっと皮肉げに言うと、行者は鼻を鳴らして
「ふん。われらはあくまでコチラの人間のために働くものよ。
おまえのようにコチラへの関与を極力さけ、むしろ人に仇なすアチラモノ……魔物どもを積極的に救う『外道』に説教される筋合いはないわ。
もうよいだろう?わしらはこれで去る。支払はいずれ、仏恩のかたちでそちらに行くだろうよ」
とても治療をしてもらいに来たとは思えないエラそうな態度で、行者は診療所を去った。
(だけど護法童子たちは去りぎわ、行者にバレないようこっそりぼくらに合掌してた。かわいい子たちだ)




