アチラのお医者さんと行者さま3
いま、シロタヌキは先生に調査の報告をしている。
「――へい。ちゃんとあの子ザルは群れになじんでおりやす。いじめなどはござんせん」
その子ザルって、イワザルのシチノスケのことだよね。
こないだのリトル・グリーンたちとの騒動で、年老いたイワザル・ガンジロウは自らの身をもって異宇宙卵の誕生をおさえこみ、この世界を救った。
宇宙を包んだまま固まったガンジロウは、今もこの診療所の棚に置かれてある。
世話になったその老猿に会うため、シチノスケはここのところ毎日のように診療所に来ていたんだけど、今日はいなかった。
(実は今日ぼくがこの診療所に来たのも、シチノスケの顔を見たかったからなんだけど、それはジェームスにはないしょだ。ジェームスったら、ぼくがほかの子にいい顔すると、すぐやきもち焼くからね。ただ、のんのん先生に会いに来たってことにしてる)
先生は
「彼は当分来ないでしょうね。群れが山の方に移動すると言ってましたから」
「えっ、そうなんですか?」
ぼくの残念そうな声に、ジェームスはシッポでほほをはたく。
いたいな、
もおっ。
今シチノスケが所属しているイワザルの群れは、こないだガンジロウともめたときにボスが変わって、それ以来はシチノスケを群れの一員として受け入れている。あの子ザルが以前とちがって、いじめられることもなく機嫌よく生活できているのはうれしいけど、そうか、山のほうに行っちゃうのか……。
イワザルの群れは定期的に移動するから、次はいつ街のほうに下りてくるかわからない。
そうなったら、シチノスケとも当分会えなくなるな。
残念だ。あの子ザルは口はほんとに悪いけど、見た目はとてもかわいらしいから(と思っているのは、ジェームスにはないしょだ)。
まあ、彼一匹では生きていけないから、群れの方針には従わないとね。
しかたない、しかたない――。
ぼくがだまって自分を納得させていると、ヨシノさんがドアを開けた。
「先生、患者さまです。初診で飛びこみの方です」
「ああ、そうですか」
それを聞いて、シロタヌキは頭を下げ
「お邪魔の無いよう、あっしはひかえておりやす」
そう言うと、見るまに紙みたいにうすくなって棚のすきまに隠れた。シロタヌキはこうして姿を変えたり身をかくすのが、ほんとうに上手だ。
ぼくにはもちろんそんな一反木綿やスレンダーマンみたいなまねはできないので
「いないほうがいいですか?」
と先生にたずねたけど
「助手なんだからいいでしょう」
と言われたので、座ったままでいた。




