アチラのお医者さんと行者さま2
「あっしは、のんのん先生やホウイチのダンナがたの手下になると誓いやした。同等の座に着くことはございやせん」
「ダンナって……」
「ホウイチさんはあっしの命の親でございやす。ダンナとお呼びするのは当然なこって。今のあっしは、ダンナがたの忠実な密偵でさぁ」
前にシロタヌキともめたとき、シロタヌキはジェームスの広大なおなかの中に閉じこめられた。
のんのん先生は危険を冒してその中に入ってシロタヌキを探索救出したから恩を感じるのはわかるけど、ぼくは先生の探索中、ジェームスが気ままを起こしてどこかに行ってしまわないよう彼を抱きかかえていただけだ。
えらいのは、じっと辛抱していたジェームスだよ。
「もちろん尊いトカゲさまにも、あっしは返しきれねえ罪と恩をしょってやす。
ただホウイチのダンナがとりなしてくださらなかったら、今でもあっしはトカゲさまの胃の中で無間地獄を味わってるところでやす。それをまぬがれたのはひとえにダンナのおかげです」
シロタヌキは怖気をふるって平伏する。
「無間地獄」って、どんだけきみの胃の中はおそろしいんだ。ぼくは友達のトカゲを、つんとした。
とにかく、シロタヌキはぼくへの態度と呼び名を変えない。なかなか頑固なのだ。
シロタヌキって不思議なアチラモノなんだよな。アチラで長らくぬすっと稼業をしてきたとは聞いたけど、なんだか妙に人間くさいところがある。
それこそ時代劇にでてくる股旅者みたいな筋の通し方するんだよな。
だいたいシロタヌキって名前だけど、ぜんぜん狸には見えない。どっちかっていうとするどい狐とか狼とかの雰囲気だ。
でも、なんでタヌキなのかとか、むかしのこととかはなんとなく聞きにくくて、ぼくからたずねたことはない。




