アチラのお医者さんとなぞの玉3の12
「――ああ、やれやれ。ホウイチくんにはまたもおそろしい思いをさせてしまいましたね。もうしわけありません」
教会からはなれた空き地で一息つくと、のんのん先生はぼくに謝罪した。
「そんなのは、どうでもいいですよ」
もちろん、ほんとはどうでもいいことじゃなかったけど、今はそれどころじゃない。
わけのわからないことが多すぎた。
「あの銀の玉は、ほんとうにクロハさんのたまごなんですか?」
ぼくの問いに
「いえ、そんなことはありません。あの銀の玉は、たしかに異世界のものです」
「じゃあなんで、クロハさんはそんなウソを?」
ぼくの不満顔に、先生はつかれた表情で
「ウソ……とは言い切れませんね。彼女は、ほんとうにあのたまごを自分が生んだものだと思っています……少なくとも『思いこもう』としてるのは、まちがいないです」
なにそれ?わかんない。
「あのカラス女……クロハさんは、むかし卵を生み孵化をまつ抱卵期に体の調子をくずしてね、ひなを孵すことができなかったんですよ」
かえすことができなかったって、ひなが死んじゃったってこと?
「ええ。さらにそのときの不調がもとで、もう卵を生めない体なんです」
そうなの?じゃあ、どうして……
「彼女は母性が強いんです。ふだんは街のゴシップや情報にくちばしをつっこんだり、わたしをからかったりして気散じ(きさんじ)をしていますが、ほんとうはこども……ひな鳥が欲しくてしかたなかったんですね。
たしかに、あの銀の玉は彼女が生む卵に似てましたね。それが落ちているのを見つけたときに、彼女は自分がそのたまごを生んだと思いこむことにしてしまったんでしょう。なにせ、アチラモノというものは思いこみの力が強いですからね。ほんとうに自分のこどもだと思っています」
先生はため息をつくと
「コチラモノ……人間でもときおりありますがね。こどものいない女の人が、よその子をさらうのは。しかし、まさかクロハさんがこんなことをするとは思っていませんでした。病後の患者のケアが行きとどかなかったわたしの責任です」
自分を責めるように言った。
そんなところまで、いくら先生でもケアしきれないと思うけどなぁ。




