アチラのお医者さんとなぞの玉2の15
ぼくの疑問に、先生はそのまま答えず
「彼みたいな気ままなイワザルでも、罪滅ぼしの気があったんですかね」
「つみほろぼし?」
さらによくわからない言い方をした。
「あのサル……ガンジロウは以前にも一度、とあるイワザルの群れと闘争を起こしたことがあります。どう見たって、彼の方が悪かったんですけどね。なにせ、彼はまだ若く気性も今よりずっと荒かったですし、今回のような『手加減』ができませんでした。……最終的には、力にまかせてその群れをほろぼしてしまったのです」
――えっ!ほろぼすって……みなごろしってこと?
先生はだまってうなずくと
「ガンジロウがたおしたボスはシルバーと言って、とても美しい銀色の肌を持っていました」
「銀色?ってことは……」
「ええ。あのシチノスケという子ザルは、シルバーの血筋ですね。
シルバー・グループの数少ない生き残りザルが、スカーフの群れをたよったんでしょうが、そのサルたちも亡くなったかしてシチノスケを守ってくれるオトナがいなくなったんです。だから、いじめられた」
「じゃあ、ガンジロウは……」
「彼は、自分が群れを一つ滅ぼしたことを悔いていました。あんな乱暴者でも、さすがにやりすぎたと思ったんですよ。ですから、それ以降の彼は気が荒いのは変わりませんでしたが、自分から大きなもめごとを起こすことは決してなかったんです。
そんな彼が、自分が滅ぼした群れの生きのこりをたすけるために、また群れとケンカする羽目になるなんて、なかなか因果なことですねぇ」
先生は、去り行く老猿の背中を見ながら嘆じた。
「でも、だからってあんなふうにシチノスケと別れなくともいいじゃない?シチノスケはガンジロウになついていたんだから」
「――それができないんでしょうね。なにせ彼は融通が利かない頑固者ですから。それになにより自分の最期を見せたくないんでしょう」
さっきもそれを言ってた、なんなの?
「彼……ガンジロウの寿命は、もうそろそろつきようとしています」
えっ?それって、死んじゃうってこと?
「まあ、そうです。イワザルの最期はかわっていて、体の結晶化が進んで鉱物そのものとなるんです。そうなると、すっかり固まって子ザルの世話はできなくなりますから、シチノスケくんをあずける群れをさがしてたんでしょう」
「そういうことなら、ちゃんとシチノスケに言ってあげればいいのに……頑固すぎるよ」
でも、まちがいなくガンジロウはシチノスケのことを大事に思ってたよ。
だって、ぼくはシチノスケに背を向けたときのガンジロウの顔が見えたから。
あんな切ないおサルさんの表情をぼくは見たことなかったし、これからも見ることはないだろう。




