アチラのお医者さんとなぞの玉2の10
なんだよ!
「ルールとのつきあいは、ゆるくしといたほうがいい」とか言ってたくせに!
こんなときにまでテキトーを発揮して無関係を決めこむなんて、ちょっとガックシだ。
そんなぼくらのだらしないやりとりを見て、イラッとしたのだろう。
『義を見てせざるは、これ勇無きなり』がポリシーのサムライ・ガールが動こうとするが……
「――あなたも、手を出してはいけません」
いつになくきびしい声で、先生がとどめた。
「イワザルは非常に執念深いアチラモノです。とくにコチラモノ……人間に手を出されることをきらいます。ヘタに手を出せば、それこそあなたが死ぬまで追いかけてきかねません。
いかにあなたが腕利きの妖刀つかいだとは言え、一生追いかけてくるものを相手にするのは無理です。それこそ群れを全滅させる覚悟でないとね……それはいやでしょう?」
先生のことばに、坂上さんも(歯ぎしりしながら)ぬきかけた松風を異空間の鞘にもどした。
先生は、不満顔のぼくらに対して
「前にも言いましたが、アチラのことに関して、わたしたちの望むとおりにものごとが行くなんて思ってはだめですよ。大抵はうまく行きやしないんですから」
それは前にも言われたけど、だからってあのちっこいおサルを見捨てるなんて……。
「気持ちはわかりますけどね、しかたないこともあります……でもまあ、このままコトがすんなり行くかどうかはわかりませんよ」
「?」
そんなこと言ったって、いま現に目の前では、グラサンがスカーフにシチノスケをわたそうとしている。
「――これで、うちのグループに手出しは無しだぜ、スカーフ」
そう言って、いやがる子ザルを相手のボスザルに手わたそうとしたが……
なんと!スカーフの手は子ザルでなく、それを持っていたグラサンの首にかかった。
すばやく後ろに回って、ヘッドロックふうに固める。
あらかじめ命じてあったのか、スカーフの子分がシチノスケのほうも逃がすことなくひっつかまえていた。




