アチラのお医者さんとなぞの玉2の7
貨物駅から診療所にもどる道すがら
「……あそこでの玉探しは、もういいんですか?」
とぼくがたずねると、
先生はうなずいて
「ええ、今回もハズレでしたね。……あなたも気づいたでしょう?あのシチノスケとかいう子ザルくん」
「はい。ガンジロウにじゃれついてると、まるっきりちいさな銀色の玉に見えました」
「あれではクロハさんが、ガンジロウが銀の玉を持っていたと見まちがえても無理ありませんね。彼はなにも玉など持っていませんでした」
どうやらリトル・グリーンの玉探しは二日続けて無駄足に終わっちゃったみたいだ。また他のところに探しに行かなきゃいけない。
でも、それはそれとして
「あのシチノスケって子ザルが狙われているのは、ほうっておいていいんですか?」
ぼくの問いに、先生は
「――まあ、しばらくはだいじょうぶだと思いますよ。グラサンも年齢は寄っていますが古豪のイワザルですから、その群れにいるかぎりスカーフも安易に手出しはしないはずです……」
そう言いながら、なにか気がかりみたいだ。
「一度ガンジロウの体を診ておきたいですね。彼ももう老齢ですから」
「そうですか」
ただ純粋に診察をするだけだから、次はついてこなくともよいと言われちゃった。
ほんとは、もういっぺんあのサルたちに会ってみたいんだけどな。
なにせ、あのシチノスケって子ザルは口が悪いけど
「かわいかったよね」
ってつぶやいたら、ジェームスにシッポではたかれちゃった。
イワザルの群れは移動するっていうし、もうあの子ザルと会うことも当分ないんだろうなぁ……って、ぼくは思ってた。
次の日、学校の教室で授業を受けてると、キィーキィーとやかましい声が外から聞こえてきた。
思わず窓の外を見ると、家々の屋根の上を飛びうつりながら北の方に進んでいく、小さなぬいぐるみみたいなものたちが見えた。
(けっして、ふだんから授業を聞かずに外をボーッと見てるわけじゃないぞ)
あれはイワザルだ。それも全員赤いスカーフを巻いて……まちがいない、スカーフが率いる群れだ!昨日見たグラサンの群れよりずっと多い頭数がいる。
それだけのサルたちが一方向……かむのの貨物駅のほうに向かってる!




