アチラのお医者さんとなぞの玉2の6
ぼくはてっきり、さっきのサルたちが仲間をつれてもどってきたんだと思った。
けどよく見ると、このサルたちはさっきのサルたちのようなスカーフをしていない。かわりにみな黒いサングラスをかけている。
「……グラサンの群れですね。このあたりにたまにおりて来る、古株のイワザル・グループです」
そのサルたちから一頭、前に出てきたのはひときわ体の大きなイワザルだった。
先生もガンジロウもだまっている。
そしたら、黒メガネの大ザルが
「なにしに来やがった?このくたばりぞこないの岩っカス野郎が!」
そうさけぶと、ガンジロウの片頬をぶんなぐった!
すると、ガンジロウもだまって大ザルをぶんなぐり返した。
(げっ、やばい!このままケンカになったら、いくらガンジロウでも勝てないよ!ぼくたちもまきこまれたら、たいへんなことになっちゃう!)
どうやったら逃げ出せるかとぼくがおたおたしているあいだ、殴りあった二匹のサルは、たがいにじっとにらみ合っていたが、しばらくすると
「――ひさしぶりだなあ、こんちくしょう!会いたかったぞ、この白猿が!」
サングラスをかけたオオザルはニーッと歯茎を見せると、無口なサルをギュッと抱きしめた。
びっくりしてるぼくに、のんのん先生が説明してくれた。
「殴り合いは、イワザルの親愛をしめす挨拶です。わたしはまねしたくありませんがね」
ボスザルのグラサンとガンジロウは古い知り合いだったらしい。久しぶりに会って盛りあがっている。
どうやら子ザルが言ったとおり、ガンジロウはグラサンをたよってここまで来たようだ。
見ると、メスらしい(サングラスをした)サルがシチノスケの毛づくろいをしている。
「ふつう、メスのイワザルは自分のでなくとも子ザルの世話を見るものですからね。ボスがゆるすのなら、よろこんでシチノスケの世話も見るでしょう」
先生は安心したように
「――もう、わたしたちは不要ですね。帰りましょう」
そう言うと、サルの群れに背を向けた。




