アチラのお医者さんとなぞの玉2の3
子ザル……シチノスケはさっきから、のんのん先生が持ってきた袋の中に手をつっこんでは中にある粉を一心不乱になめてる。
それは、のんのん先生がイワザルの機嫌を取るために持ってきた「かむの鋼」のくずだった。研ぎ師のチュウゴロウにわけてもらったものだ。
イワザルは鉱物が好物らしいけど(あっ、ダジャレになっちゃった)、特にかむの鋼はごちそうだ。
(それはほかの鉱山・鉱物系のアチラモノにとってもそうで、わざわざ海外から「かむの鋼」を求めに来るアチラモノもいるらしい。もうほとんどかむの鋼は出ないから、手に入れるのはとてもむずかしいんだけど)
いきおいこんで袋に顔をつっこんでなめようとする子ザルの首を、白猿はつかんで引っぺがした。
「やめとけ」
口数の少ないサルのかわりに、のんのん先生が説明する。
「ええ、かむの鋼は刺激が強いです。いくらイワザルでも、目に入ったら痛くて耐えられませんよ。顔をつっこんだりしたらだめです」
ガンジロウが自分の身を気づかってくれたのがわかった子ザルは
「そうかい?じゃあ、やめとくね。もう明日のおやつに取っとくよ」
袋をしっぽにくくりながら、うれしそうに言った。
シチノスケの肌は白いガンジロウのそれとはまたちがって、つややかな銀色の金属光沢を放っている。(これはこれできれいだ)
のんのん先生は二頭のサルのやりとりに興味ぶかげで
「ガンジロウ……あなたがそんな子ザルを引きつれているだなんて、おどろきですね。どういう風の吹き回しですか?あなたは終生一匹で生きていくのだと思っていましたが……。
たしか、あなた、こどもなんて大きらいだったでしょう?自分の通り道にねっころがっていただけで、蹴とばしてたのに」
「オジサンはそんなことしないや!オイラのことたすけてくれたんだい!」
子ザルのことばに、さらに先生は目をまるくして
「あなたが?よそのサルをたすける?冗談でしょう?」
先生の言い方はかなり失礼だと思うけど、ガンジロウは鼻をならすばかりで何も言わない。そのかわり
「冗談なんかじゃねえぞ、この頭カチワリ野郎!なんにも知らねえくせに、だまってやがれ!おじさんはオイラに良くしてくれるいいサルでいっ!……ねっ、おじさん!」
そう言いながらシチノスケはガンジロウにじゃれつくと、うれしそうに毛づくろいを始める。
「……」
白猿はなにも言わず、そのままにさせている。




