アチラのお医者さんとなぞの玉2の2
(コジロウくんをつれてきてあげたら、よろこぶだろうな。
「あの駅は一般客が入られないんだよぉ」って、なげいてたから)
雑草が所々生えているだだっ広い土地に複数の線路、そしていろんなコンテナやフォークリフトが置いてある。作業する職員らしき人ともすれちがうけど、ぼくらのことは目に入ってない。
先生もまるで気にせず
「さて……どのあたりにいますかね」
なんて、きょろきょろしてる。
「このへんにいると思うんですけど……ああ、あれだ」
そう言って先生が指さしたのは、コンテナの上にある、なんだか白くピカピカしてる、小さなお地蔵さんぐらいのかたまりだ。
「やっぱり一頭でいるということは、ハグレですね。しかもあの白さは……よりによって『彼』ですか」
どうやら知り合いだったらしいそれに、先生は話しかけた。
「ガンジロウ。ひさしぶりですね」
その声にふりかえったのは小さな「サル」だった。
顔とか体格はニホンザルとおんなじだけど、肌質がぜんぜんちがう。ガラス質の肌は白くすべすべとして、ところどころ透明にさえなっている。まるで結晶まじりの岩石が動いてるみたいだ。
そのサルは先生の方をちらっと見ると、鼻をならした。
「――医者か」
そう言ってまたそっぽを向く。
どうやら口数が少ないらしい。それっきり押し黙るサルに代わって、先生がぼくに説明した。
「彼の名はガンジロウ……イワザルとよばれるアチラモノです。
イワザルは、その名のとおり鉱石のような体を持つとても硬い生きものたちでしてね。ふつうは群れを作って暮らしているんですが、ときおりそれから外れて暮らす特殊な個体がいます。
このガンジロウはそういったハグレの一頭です。時には身をよせますが、特定の群れに所属することはなく転々としながら生きるイワザルです。まあ……業の深いサルですよ」
先生は意味の分からないことを言ったが、ガンジロウは鼻を鳴らすのみだった。
そのかわり
「――ふん、うるせぇっ!この金髪メガネぽんつく野郎め!ガンジロウのおじさんにそんななめた口ききやがると、このシチノスケさまがゆるさねえぞ!」
ピーピーとかわいらしい声がしたと思ったら、ガンジロウのわきから顔を出したのは、ゴムまり程度の大きさのかわいらしい子イワザルだった。
「えっ?ガンジロウが子ザルをつれてる?」
よっぽどおどろいたのか、のんのん先生はすっとんきょうな声をあげた。




