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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんとエルフの親子4

 エルフがドワーフと仲が悪いというのはどうも本当らしい。


 先生が

「――しかし、ペンキといっても、たしかあそこの工房で使われている塗料は、ブロッケン親方が苦心して生みだした特殊なものだったと聞いています……彼はコチラモノ相手にも商売をしていますから、人間世界とまじわって生きようとする息子さんの就職先としてはわるくないでしょう」

 と言っても聞き入れる気などなさそうだった。


 エルフは、自然と生きていくのが本来のすがたで、そんな化学薬品まみれのくらしを送ることは許せないという。ジョゼフィーヌさんもふだんはオーガニックな野菜しか食べないらしい。


 そして

「その『アチラモノが使っても害がない』というのが大ウソなんでございます。今日わたくしが、診療所にうかがいましたのもそれが原因なんでございます。宅のせがれは、あのペンキのせいですっかりおかしくなってしまったんでございますよ!」


 ジョゼフィーヌさんは怒りでぷるぷるふるえていた。

 彼女によると、息子がドワーフのところに就職すると言ったときは、おどろきと怒りのあまり卒倒するほどだったが、しかし「じゃあ、このままずっとなにもしないまま、家にいてもいいのか?」と息子に言われて何も言い返せず、しかたなく受け入れたのだという。


 そして、実際、その息子・エアーノスはブロッケン工房に勤めだしてからは規則正しい生活を送るようになった。


「毎日、きちんと自分で起きて、遅刻するようなこともございませんでした。ごはんのときも、わたくしとふつうにいっしょに卓をかこむようになりました」


「それはよかったじゃないですか」


 しかし、母親エルフはにがにがしげに

「ただ、就職してから息子がどんどん変わっていったことはいやでございました。あの絹のように美しい誇り高きエルフの金髪を、作業に邪魔だからと短く切りつめまして。先輩のマネだと言って似あいもしないヒゲなんぞまでのばしはじめました。しかも酒まで飲んで帰るようになりましてね。すっかり息子が不良になったと思いました」


「そりゃドワーフは酒が好きですからね、おつきあいもあるでしょう。……社会人ですからね……」

 横から見ると先生がまじめに答えているようで、ほんとうはわらいを押しころしているのがわかった。

挿絵(By みてみん)


 こどもが自立し始めたことについていけない教育ママのようすが、ちょっとおかしかったらしい。


 しかし、エルフママはそんなのんのん先生の悠長な物言いに、腹が立ったのか、ますますいきりたって

「わらいごとじゃございませんことよ、先生!それだけでなく、せがれのこころまでが、だんだんにおかしくなったんでございます。気分にムラともうしましょうか、おこりっぽくなったかと思うと、急に元気が無くうつろな目になることがあるようになりました。最初は初めての就職のストレスからかと思いましたが、それにしてはおかしいのでございます。

 あの、おはずかしいことでございますが、食の好みまで変わりまして……肉や魚なんてものを欲しがり、食べるようになりました」


 いままで、あまり気を入れた様子じゃなかったのんのん先生が、ジョゼフィーヌさんの最後の言葉に目を光らせた。

「――ベジタリアンであるエルフが肉を?それはおかしいですね」


「ええ、なんであんな汚らわしいものを欲しがるようになるのか。わたくしにはわかりませんでした。さらには、わたくしにむかって口汚くののしるんでございますよ。そんなことは、前はございませんでした。ただ、口をきかない程度でございましたのに……かと思うと、正気に返ったようになりまして、わたくしにひどいことを言ったこともロクにおぼえていないようなありさまです。

『診療所に行ったらどうだい?』となんどももうしたんでございますがいやがって、参りません。

 そうこうしておりますうちに症状はどんどんひどくなりまして、ついには今日、急に家の中で暴れるかと思ったら半狂乱のていで外に飛び出していってしまったんでございますよ」


「とびだしていった?いったいどこに?」


「わかりません。見失いまして。ほかに相談できる相手もありませんのでとほうにくれて、こちらにまいったのでございます」

 急に深刻な内容になって、先生もおどろいたようだった。


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