アチラのお医者さんとなぞの玉1の6
のんのん先生って、本当にテキトーなところがあるからな。
ベティーさん……ハンター・エリザベートが言ってた「ウソツキのヤブ医者」ってのも、まったくまちがってはないんだよね。
「そう。わたしはたしかに野巫です。べつにきちんとした国家資格を取って、やってるわけじゃないですからね。ハッハッハ」
お得意の、わらいながらちがう方向を見てごまかすやり方だ。
「それはともかく、リトル・グリーンを怒らせるのはいけません。なにせ、彼らは壊し屋ですからね」
「こわしや?」
「ええ、古くなった家とかビルとか、大きなアチラモノの巣とかなんでもね。彼らの性分に合うのかして、なんでも請け合ってはみんなでむらがって破壊しつくします。こないだも依頼されて、ちょっと太陽系から離れたとこにある星団の破壊とかやってましたね」
……なにそれ?やってることが、まるっきり悪いインベーダーといっしょじゃない。そんな調子で地球をこわされたら、たまったもんじゃないよ。
「そのとおりです。まあ星全体とまではいかないまでも、街をこわされるだけでもこまりますし、なによりヒカゲモノも救わなきゃいけませんから、ここは素直に言うこと聞いてその宝とやらの行方を探しましょう。……しかし『ピカピカした銀色で球状のもの』ってだけじゃねぇ。あのリトル・グリーンたちもくれる情報が少なすぎますよ。とにかく、われわれに必要なのは情報です」
先生はそう言うと、商店街の魚屋さんで刺身を買った。
会いに行くのは、決まっている。
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「ふうん……リトル・グリーンの宝ねえ」
先生が買ってきたマグロの赤身を長い舌で器用に口に放りこみながら、カラス女のクロハさんは目をぐりぐり回す。
ぼくたちがやってきたのは、ガード下のカラスたちが群れなすところ……情報屋のクロハさんの根城だ。
美しく気高い濡羽のカラス女は
「……そんなの、ほうっておけばいいじゃないですか?あんなうすぼけた影野郎をたすけたところで、持った性根は変わりゃしないでしょうに。手癖の悪いのは、死ぬまでいっしょでしょう?」
冷淡に言いはなつが、のんのん先生は
「そうはいきませんよ。リトル・グリーンのあぶなさはあなたにだってわかるでしょう。なにか、それっぽい球状のものについて知りませんか?」
クロハさんは目をぐりぐり回しながら
「そうねえ。たま……ボール……たま……ボール……そうね、そんなピカピカした玉を見たのは、そりゃ何回かありますけどね」
「ほう。それはありがたいですね」
先生の笑顔に、クロハさんはマグロの油を舌でなめながら
「もおっ。先生ったら、あたしに会いに来てくださる時はいつでも仕事がらみ。つれないですわ」
という毎度の愚痴をこぼしながら、情報を教えてくれた。




