アチラのお医者さんとなぞの玉1の1
六月の初め、ジェームスとぼくはひさしぶりにコーポまぼろしに行った。
アチラモノのハンターたちとあったもめごとのあと始末について聞くためだ。
ほんとうはもっと早くに行きたかったんだけど、なんとなく入院してるハンター・エリザベート……ベティーさんと顔をあわすのが気まずかったんだ。先生によると、ぼく以上にベティーさんのほうが気まずがっていたらしい。
なんたって赤い妖魔……ツノウサギのダットをハントしたさに、ぼくらにウソをついていたからね。
退院したベティーさんはハンター・メアリーにつれられて狩道会の本部にもどったそうだ。どんな処分が下されるかは、先生にもわからないらしい。
「……でもまあ、よかったですよ。うちはアチラモノの診療所ですから、それを狩るハンターなんかに長居されてもこまるだけなんですよねぇ」
先生はかるい感じでぼやいてたけど、本当はもっと大変だったって、ヨシノさんがあとで言ってた。
のんのん先生とベティーさんは入院のあいだに、アチラモノとの関わりかたについてずいぶん話をした……というか、先生が彼女を説得していたらしい。夜中にふたり、大声で怒鳴りあうこともあったんだって。
ベティーさんはともかく、先生が怒鳴るイメージはあまりないけど、ふたりとも学者気質だから議論が白熱しちゃったんだろうな。
とにかく、その話し合いの結果、ベティーさんは赤い妖魔……ダットをハントしようとするのをあきらめた、と先生は言っていた。
よかったよ。ダットが狙われるのはもう勘弁してほしいもの。
先生は
「なにより大きかったのは、あなたがあのツノウサギに名づけたことです。そのことによって『赤い妖魔』はもうあなたに狩られたものと彼女は思ったようです。人のものをうばう趣味はないと言っていました」
ぼくはヨシノさんが出してくれた「みまつ屋」のアップル・パイ(ここのリンゴは干しブドウがいっしょに煮てあっておいしいんだ)を食べながら
「ぼくはダットを狩ったりしてませんよ」
不平を言った。名前をつけただけだもん。
「――アチラモノにとって『名づけ』とは、いわばその名づけ親に命をあずけるようなものです。むりやり狩られるなんてことより、ずっと値打ちがある縁なんですよ」
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へえ、そんなたいしたことなんだ?ふかく考えてなかったな。
でも、そのわりにダットはぼくのところに長くいたりしなかったよ。名づけたら、すぐにいなくなってどっかに行っちゃった。ほんと脱兎だ。




