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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんとハンター26

 そういえば

「あのリスが文句言ってました。せっかく取った村雨をハンターに横取りされたって。あれって、ベティーさんのことだったんですね」


 ぼくと坂上さんがチュウゴロウの研ぎ処ですれちがったのは、ベティーさんだったんだ。ハンター・メアリーとおんなじフードをすっぽりかぶってたから、わかんなかった。


 これは後の話だけど、武芸者である坂上さんは、ベティーさんが研ぎ処前ですれちがったハンターであることを見ぬけなかったのがよっぽどくやしかったらしく

「――なさけない!あたしの目は節穴か!これでは、あの世で銀狼先生にあわす顔がない!」

 と、ぼくらの前でくやしなみだを見せた。


 ハンターは隠密行動が得意ですから……というのんのん先生のなぐさめもきかず

「二度とこんなことがないように、片目をくりぬいて戒めとします!」

 なんてバカなことを言い出すもんだから、先生やヨシノさんたちと必死に止めた。

挿絵(By みてみん) 

(……両目でもわかんなかったのに片目にしたら、もっとわかんなくなっちゃうよ)


「今の狩道会の母体となったのは、むかし中東からヨーロッパにかけてこっそり存在していたサカイモノの共同体ですから、いまだにあんな修道服みたいなのを着用してますね。重っくるしくて大変でしょうに」


 ほんとそうだよ。まぎらわしい。


「ベティーは『赤い妖魔』をハントしようとかむのじゅうを追いかけていたようですが、彼のような妖獣は、まず出没位置を把握することもむずかしい。旅館に泊まることもできませんから、情報を得るのも大変だったでしょう」


 ベティーさんはうれしくてさわいだから出入り禁止になったって言ってたけど、ほんとうは旅館のアチラモノ宿泊客をハントしようとして、番頭につまみ出されたらしい。


「彼女は研究者である以上に、強者にいどむことを好むチャレンジャーです。そんな彼女にとって、ツノウサギになつかれているあなたは、おとりというか待ち受け場所というか、とにかく近づくに足るものだったのでしょう」


 「貴重なアチラモノの保護に協力して」だなんて、うまいこと言って近づくんだもんな。これだから、コチラモノは信用ならないよ。


 昨日のネチョネチョとのごたごたで、ぼくがダットになつかれていると知ったベティーさんは、おおあわてで赤い妖魔対策用のフェイク・ギンロウを用意したのだ。

 そして、朝早く村雨とつれだってぼくのところへ来ようとしたけど、そのとちゅうでハンター・メアリーに出くわしてしまい、ごちゃごちゃしてしまった。


 おかげで、ぼくも走って大汗かいちゃったよ。



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