アチラのお医者さんとハンター22
「おかげで、我々が確保している貴重なアチラモノの健康状態が改善されました。のんのん先生がかむのをはなれるなんてめったにないことですから、会所属の飼育医療スタッフもその技術をまじかで見ることができて感激していました」
ハンターの賛辞に、
ヨシノさんは
「当然です。当診療所の医療は世界一です」
さもどうってないことのように言ったが、その声音は鼻高々だった。
のんのん先生は
「……そんなことはありませんよ。アチラモノを診る純粋な技術においては、狩道会の方がはるかに上です。なにせ、こっちは個人でやってる町医者ですからね。共同研究が進んでいる大きな組織とは比べようもありません。ただアチラモノとの接し方については、わたしのほうが多少ていねいでしょうね……とにかく、つかれました」
ぼくを見ると
「わたしとしては、早くかむのに帰りたかったのですよ。あなたにまかせた闇丑光のことも気になっていましたしね。まさか、村雨がアヤツリツカイからエリザベートの手にわたっているとは知りませんでした。彼女がハンター資格を剥奪されたと知ったのも『狩道会』本部に着いて、しばらくしてからだったんですよ」
ベティーさん……ハンター・エリザベートの話題になると、ハンター・メアリーの表情はくもった。
彼女は、ベティーさんに直接指導を受けた後輩らしい。
「先輩……エリザベートが『狩道会』を追放されたのは三か月前です。あまりに会の定めたコンプライアンスを無視した、放埓なハントが多すぎたせいでした。先の五行の精のハントに関しても、のんのん先生に苦情こそ言いましたが、消滅まで追いこむのはやりすぎだ、という声は会のなかで上がっていたんです。
我々ハンターのありようも、むかしとはずいぶんちがいます。アチラモノを見つけては『化け物退治』と言ってやみくもに狩りだす、そんな時代ではもうありませんからね。二十一世紀に入って、世界的にもアチラモノとの共生がテーマとなってきています。特にこの国には、たとえどんなにおそろしいアチラモノであっても、それをマツリアゲて共存する文化があります」
そう言ってツノウサギを見る。




