アチラのお医者さんとハンター16
思うことはいっしょなのか、なんでか知らないけど坂上さんの左肩にいるチュウゴロウが叱咤した。
「なにをしておる!?嬢よ!いかにあのネチョネチョが師の動きをそっくりまねたものだとせよ、おそるることなどあるまい!おぬしが今手にしておるのは、わしが研ぎあげたばかりの松風ぞ!それに比してあの村雨は、しょせんまともに研がれておらん鈍よ!
切れ味ならば、おぬしらの方がはるかに上じゃ!」
ネズミのことばに、少女は息荒く
「……そうかんたんに言わないで。銀狼先生は、あたしの太刀筋をすべて知っている。安易にふところに入ったら、見切られ、やられてしまう」
その声は、どことなく弱気だった。冷静に自分の状況を把握しているというより、攻め切れない言い訳を口にしているみたいだった。
そのあいだにもフェイク・ギンロウはするどい刀を浴びせてくる。
「ギギギ。松風ヨリ、村雨ノ方ガ、良イ刀」
村雨は、松風への復讐に燃えているのだ。
のんのん先生もこまったふうで
「ありゃ……これはちょっと、まずそうですね。楽勝だろうと、わたし高をくくっていたんですけど……」
防戦一方の坂上さんが、苦しまぎれに刀をふるうと
「いかん!さそいこまれた!」
少女の後ろを取ったフェイクが、坂上さんに刀をふりおろす!
……と思ったら、なぜだろう?急に、フェイクは飛びのくように後ずさった。
いま、あぶなかったよ!危機一髪だ!
どうやらフェイクは、にわかにアーケード上に立ちこめてきたものに警戒したようだ。
この赤くもやもやしたものは……きのうネチョネチョがやられる直前にあらわれたのといっしょだ!
「この赤い霧は……やあ、あなたがたすけてくれるんですか?」
先生の視線の先にいるのは……




