アチラのお医者さんとハンター13
「――まあ、とにかくいいかげん止しにしてもらえませんかね?あなただって会からハンター資格を剥奪されたのでしょう?もうバカなことはやめて、村雨をかえしてください。そんなみょうなおもちゃを動かすのもやめて」
正体がわかっているのか、村雨つかいの方を見る。
ベティーさ……じゃないハンター・エリザベートはいきり立って
「うるさい!村雨とあたしは契約した!村雨、こいつらをおさえろ!」
その声に応じて、村雨……というか村雨をつかうものは、先生とハンターに剣先を向けたが……どうしたのだろう?そのまま動かない。
「どうした、村雨!?あたしとの約定をはたせ!」
エリザベートのいらだちに対して、
村雨つかいはその頭巾の下からくぐもった声を出した。まるで、ことばを話し始めて間なしのようなたどたどしさだ。
「――オマエノ、望ミハ、りすくガ、高イ。先ニ、ワレノ、望ミヲ、ハタス」
そう言うと、村雨つかいはきびすをかえしてどこかへ走り去った。
そのスキを見て、ツノウサギがしげみへ飛びこみ逃げ出した。
「おのれ!にがさん!」
アチラモノ研究者……じゃないハンター・エリザベートがその後を追いかけると、ハンター・メアリーもそれを追う。
ちいさな公園にはぼくとジェームス、それにのんのん先生が置いてかれた。
「先生!いったいどういうこと!?」
わけのわからないことが多すぎるぼくとちがって、けっこう事情がわかってるらしいのんのん先生は
「うーん……さすがは闇丑光作のアーティファクト。自分で『かって』に約定を見直しましたか。しかも村雨は、あの『自分をつかうもの』のコントロール権さえもベティーからうばいとったようです。いや、おそろしいものです」
そんな、ひとりで納得されてもわかんないよ!
「いったいなんなの、あの村雨つかい?ほんとうに銀狼先生なの?」
ぼくの問いにも
「『あれ』は、あなたがよく知っているものですよ。よく見たら、すぐわかるはずです……。それにしても、これからわたしたちはどうしますかね?……ホウイチくん、おじょうさんは今どこに?」
「坂上さんなら、ひとりで研ぎ処に行きました。松風を取りに」
「そうですか……村雨が狙うのは松風、そしてあのおじょうさんとのリベンジ・マッチです。村雨は、それを追ったにちがいありません……ふあぁぁっ」
先生は、あくびをすると
「わたしもつかれてるから、とっとと家に帰りたいんですけど。しかたないですね。じゃあハンターのことはハンターにまかせて、わたしたちは刀の始末を見に行きますか?――商店街に行きましょう」
診療カバンをかたげなおすと言った。




