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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんと光るトカゲ14

 わらった上で

「ハガネアリにひきわたすというのが一番簡単ですが、それではあのふたりの命は危ういでしょう。アリたちにコハクづめにされちゃいます」

 あっさりこわいことを言う。


「しかし、まあ今回はわたしの顔を立てて、紫水晶を返しさえすればゆるすと女王が言ってくれました。……ただし」

 先生はジェームスを見ると

「彼の胃袋からシロタヌキと紫水晶を探し出すのは大変でしょうね。命綱をつけてロッククライマーか災害救助隊のように降りて行かないといけません。しかも、その捜索はわたしがしなきゃいけません。それが彼ら二人を見逃すためのアリ側の条件です」

挿絵(By みてみん)


 ため息をつくと

「まあ本当に大変なのはジェームス君のほうですかね。捜索のあいだ、じっとしてもらわないといけませんから」

 ジェームスはいやそうにシッポを振った。


 当然だ。自分をケガさせたモノを助けるために、じっとしとかなくちゃならないなんて。先生はこまり顔になったが、ジェームスをなでるぼくを見ると

「……よかったら、そのときは藤川……ホウイチくんもいてもらえませんか。あなたがそうしてそばにいてくれるのなら、彼も静かに協力してくれるんじゃないかな?」

 先生の問いかけにジェームスはしばらく思案気にシッポをゆらしてたけど、しまいには炎で○をつくった。

 ぼくは思わずジェームスをギュッと抱きしめた。


 先生は

「あなたはすっかりアチラモノになじんじゃったようですねえ。――しかし彼らと今後も関わっていく気なら、いろいろ知っておかないといけないこともあるし大変ですよ。今から新しい学校に行こうってときに、わずらわしいかもしれない」

 わずらわしい?なんで?


「だって、それは先生が教えてくれるんでしょ?」

「えっ?……それはまあ、わたしとかヨシノさんとかジェームス君でしょうね」

 じゃあ、なにもわずらわしいことなんてない。なんたって学校に行く前に、もうぼくには友達ができたんだもの。その友達とのつきあい方を教わるのが大変なはずはない。


 先生はそんなぼくのノリノリの様子をいぶかしく見ていたが

「……まあ、いいですかね。心配してもはじまらない。

 それよりどうです?今日はひるごはんを食べて行ってくださいよ。

 さっき、ワタリネズミが危うく罪をかぶせられるところを助けてくれた礼だと、旬の食材をいろいろ持ってきてくれたんです。彼らは全国を行商しているだけあって、うまいものをよく知ってますからね。いまヨシノさんが桜鯛を焼いてくれているから、いっしょにいただきましょう」


「もう焼きあがりますよ。ほかに牛肉の味噌漬けや豆ごはん、ハマグリのお吸い物、それに苺のタルトもありますから」

 奥のヨシノさんが声をかける。

「さあ、春を楽しみましょう!」

 わらう先生に、おなかの鳴る音を聞かれるのがちょっぴり恥ずかしかった。

挿絵(By みてみん)

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