アチラのお医者さんと刀とぎ13
「そして勝った。あんたコチラモノのこどものくせして、おそろしいつかい手のようだな」
チュウゴロウは松風を一瞥すると
「あの刀……村雨は、この松風、そしておじょうちゃんに負けたことがくやしうてならんのよ。復讐する気だ」
「復讐って……村雨は刀だよ。つかうものがいないと話にならない」
村雨をつかっていたフェイク・ヨウコは、松風に切られて消滅した。
「たしかにそうじゃが、ここに村雨を持ってきたものはサカイモノじゃろう。おかしな感じじゃったが、かなりのつかい手に見えたぞ。それこそ、おじょうちゃんとならぶくらいにな」
坂上さんは沈黙した。否定しないことが、答えなんだろう。
チュウゴロウはつづけて
「どういう筋合いかは知らぬが、あの顔かくしと村雨は手を組んでおるな。顔かくしは村雨が松風に勝つ手助けをする……そして、その見返りに村雨が顔かくしに協力する……」
「協力って、なにを?」
「わからん。ただ、あの村雨が力を貸すのじゃ。血を見ずにはいられぬことであろうよ。それに……」
「なに?」
「わしの見たところ、村雨をここに持ってきたのは『ハンター』じゃ。アチラモノを相手にするのは慣れておろう」
ハンター!
あの五行の精霊たちを追いつめたっていう!そんなのが、かむのに来てるの!?
のんのん先生は、このことを知っているんだろうか?
先生と約束してるから、ぼくがハンターを知っていることは坂上さんには言わなかったけど、早くこのことを先生に伝えないと……そう思って、ぼくは帰りにコーポまぼろしに行ったけど、もうすでに診療所は閉まっていて、だれもいなかった。




