アチラのお医者さんと刀とぎ11
「……そりゃ、刀を研いでほしいんです。のんのん先生の紹介です」
紹介状やぶれちゃったな。
「のんのん?……ふうむ。たしかにあの男の小刀は、わしが研いどるが……」
「これを研いでほしい」
そう言って、坂上さんはふたたび宙から松風を取り出す。
刀を見ると老鼠は、にわかに態度をあらためた。
「むむ、その刀は……」
坂上さんが先ほどとおなじく袱紗をそえて差し出すと、ねずみたちは桶の水で手をきれいに清めたうえ、うやうやしく頭を下げ、三匹がかりで器用に刀を受け取った。
今度は、松風もいやがらなかったらしい。
老鼠は刀を丹念に検分すると、目をすがめて
「……闇丑光。われらが祖先の作じゃ」
そうか!かむの鋼をあつかえるのが火鼠だけなら、かむの鋼でつくられた松風と村雨を打った刀鍛冶・闇丑光っていうのも火鼠に決まってる!
まさかこんなちっちゃい鼠たちが、どんなアチラモノでも切り裂くおそろしい刀を打ったなんておどろきだ!
チュウゴロウたち三匹は、刀をうやうやしく台に置くと
「何度見ても、すばらしい打ちものじゃな……しかし、異なこともあるもの。まさか、同じ日に二振りも闇丑光を見るとはな……」
「「えっ!」」
思わず声がそろった。闇丑光がふたふりって「松風」以外には……
「村雨……」
松風とそろいの妖刀が、アヤツリツカイにうばわれたと聞いたばかりだ。
「いったい、だれが持ってきたの?」
ぼくがおもわずたずねると、
チュウゴロウは
「知らん。顔をかくしとったでな。ただ研いでくれと持ってきた」
顔をかくしてたって……そうか、あの路地ですれちがったフードかぶり!
アヤツリツカイに言われて刀を研ぎに来たんだろうか?
「そして、そのものが去ると入れ替わるように、あの鬼が裏口から押し込んで来おった。……おぬしらといい、この研ぎ処に客がこんなに来たのは、開処以来はじめてよ」




