アチラのお医者さんと刀とぎ5
もし、あのときカラス女のクロハさんが助けてくれなかったら、ぼくは彼らに血を吸いつくされてカラカラになっていたかもしれない。
今、あそこでのんきにUFOキャッチャーをしている中学生のおにいさんたちは、そのとなりにある筐体が、のんのん先生の秘密の物置だなんて知らないんだよな。
「このとなり……」
のんのん先生は、このゲームセンターのとなりに研ぎ屋があるって言ってたけど……
「ここか?」
いやだな、なんだか暗くて細い路地だよ。
ここを奥に進むのか……前にハインリッヒたち野良猫のすみかに向かったときは、のんのん先生についていけばよかったからまだ行けたけど、今度は……
本当は坂上さんに先に行ってほしいけど、さすがのぼくにも男としてのプライドがある。
案内役ということで来てるのに、同級生の女の子に「先に行って」とは言えなかった。
見栄を張らなきゃいけないんだ。
しぶしぶあきらめて、ジェームスを抱きしめながら入ろうとしたら
「ひっ!」
その暗い路地から、なにやら茶色いフードにおおわれたものが、ぬいっと出てきた。
――もおっ、やめてよ。急に暗がりから出てくるなんてひきょうだよ……って、坂上さんはなんにもおどろかず、しらっとしてるから、声を出したぼくがバカみたいじゃないか。
それより、そのジェダイの騎士みたいなおおぎょうなフードはなに?
すっぽり頭からかぶっちゃって、あやしさ満載だ。
ハロウィンでもないのに、日本でそんなかっこうをしているものが、ふつうの人間だとは思えないけど……アチラモノの感じはしないんだよな。(まぁ、こないだの五行の精霊との接触以来、自分のコチラモノとアチラモノの見きわめには自信がなくなってるけど)
ぼくは先生の教えどおり、なるべく見ず知らずのモノとは目をあわさないようにしたから相手にされないみたいだったけど、坂上さんはちがうようだ。
少女とすれちがうとき、フードのくらい下で眼光がするどく光ったように見えた。




