アチラのお医者さんと五行の精霊14
そのことばに、のんのん先生もうなづいて
「そうでしょうね。下界でそのままとはいかないでしょう……となると、行先はやはり、あそこですか?」
そう言うと先生は、日がいくら長いとはいえ暗くなりつつある初夏の夕空を見上げた。
「「「――ああ、あそこがいい。仲間も多いだろうしな。……すまないな、のんのん先生。あんたにはさんざん世話になっておいて、こんな急なわかれになるとは」」」
「仕事です。気にしないでください」
ほほえむ先生に、
光球はもうしわけなさそうに
「「「……しかし、こんなにハデに動いちまうと、さすがに『あいつら』に気づかれちまっただろうな。オレはもういいが、のこったあんたに迷惑がかかるかもしれない」」」
あいつらってだれだろう?
でも、先生は気にしない口ぶりで
「――まあ、知らない相手じゃなし、なんとかしますよ」
わらうように言った。
「「「……そうか。まあ、あんたならだいじょうぶだろうが……ああ、もうこのすがたではここにこうしていつづけるのはキツイみたいだ……もう行かないと。ハクオウのじいさんやそこの助手にも世話になったな、せいぜい達者でくらせよ。じゃあ、アバヨ!」」」
古風なおわかれをのこすと、光の精は
それこそ一瞬!光の矢となって上空に消えた!
「先生!彼ら……いや、彼はどこに?」
ぼくの問いに、
先生は空を見上げながら
「どこまででしょうね?プラズマなんて宇宙には普遍的にありますから、地球を離れてよいといえばよいでしょうけど……おそらく、そこまでは行かないんじゃないですかね?大気の上の電離層あたりでしょう。プラズマ粒子には居心地がよいはずです」
そして、つづけて
「……しかし、まあ。アチラモノというものにはつくづく驚かされます。まさか属性を変えるとはね」
にがわらいをうかべる。
ハクオウじいさんも
「わしもはじめて見たぞ。まさか光の精の誕生に立ちあえるとは、長生きはしてみるもんじゃで。ふぉっふぉっ」
わらっていると
「――ああ、ほらごらんなさい」
先生の指さす先、うすぐらい上空になにやら光るものが広がりだした。
「……あれって?」
「オーロラです。そういやオーロラってのもプラズマでしたね。北極近くなら緑だけど、このあたりの緯度でなら赤く光るんですね……」
先生のことばに、
ぼくは
「赤だけじゃないですよ、緑や黄色……それにちょっとだけど白や黒もまじってます!」
「ああ、ほんとうだ。いや、すごい、こんなのはじめてみました」
まるでカーテンのようにたなびく五色の光の帯を、ぼくらはしばらくながめつづけていた。




