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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんと五行の精霊10

「火乃さん!ちょうどよかった!木土さんを足止めしてください。いま、どうにかして確保する工夫をしますから!」

 先生のことばに、


 火乃さんはあきれ顔で

「先生、まだこいつらを『治療』する気か?……わかってるだろ?もうこいつらはダメだ。いくらあんたでも、やつらをこれ以上維持させるのは不可能だ」


「しかし!」

 のんのん先生がこんな表情を見せるのをぼくははじめて見た。なんとも言えない、せつない顔だ。


「……もう、あんたには十分よくしてもらったよ。ここからは、おれとこいつらのあいだでカタをつける。あんたにはそれをちゃんと見届けておいてほしいんだ」

 そう言うと、火野さんは巨大な菌に向かっていく。


 そのとちゅう、うちからただならぬ気配を出すと思ったら、木土さんとおなじく火乃さんの眼の玉もポロリと落ちて……そこからわき出たのは、今度は真っ赤な炎だ。


 なんてことだ!やっぱりこの人もコチラモノじゃない。アチラモノだったんだ!

 でも、サカイモノのぼくにもわからないようにしておくなんて!


「……火のしょうじゃな。わしはニガテじゃよ」

 ハクオウじいさんはぼやいて、距離をとる。


 もえさかる炎のかたまりとなった火乃さんが、木土さんに近づいていく。


 のんのん先生はあわてて声をかけた。

「火乃さ……いや火精かしょう!しかし、それではあなたの命も!今のあなたには、とてもあの二体の精をどうにかする力はのこっていないはずだ!」


 人間のかたちをかろうじてたもった炎は、ふりかえると声を出した。

「……先生。あんたが手を貸してくれたおかげで、おれたちはここまでもっていられたんだ。もお十分だよ。最後の始末ぐらい自分たちにつけさせてくれ」

挿絵(By みてみん)

 ゆれる炎は、なんだろう。わらっているように見える。


 そして、もえさかる紅蓮の炎は抱きかかえるかのようにキノコの塊をつつみこんだ。


「先生……」

 ぼくはおもわずふりかえって、のんのん先生の顔を見たけど、炎の光が反射してメガネの奥の表情はわからない。


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