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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんと五行の精霊6

 ぼくらは自転車に乗って公園に向かった。


 のんのん先生もおんぼろ自転車のうしろにハクオウじいさんを乗せて、こいでいる。

 ふつう自転車のふたり乗りはいけないことだけど、じいさんは人間じゃないからいいんだろう。どうせ、コチラモノ(ふつうの人)には見えない。


 公園につくと、大きな建物の博物館をスルーして、となりの植物園にむかった。

 知らなかったけど、植物園に入園するのにこどもは無料だった。タダならもっとひんぱんに来られる。


じいさんは高齢パスでタダ……じゃなくて、係員さんに見えないからタダだった。

 のんのん先生はちゃんとお金(200円)を払っていた。こないだは同級生たちに見えてないみたいだったけど……どうも、先生はアチラとコチラを使いわけてる気がする。


 先生は、窓口のおねえさんに「キドさんはおられますか?」とたずねた。


 たずねられたお姉さんは、一瞬なんのことかという顔をしたが、そのあと思いだしたかのように

「キド?……ああ、キドさんですね。はい、うちの職員です。植物の世話担当の……あれ?なんでわすれてたんだろう?」

 自分でもふしぎそうに首をかしげたが

「木土さんなら、たぶん奥にいるはずですよ。古代樹のエリアあたりじゃないかしらん?」

 と教えてくれた。

「――そうですか。ありがとうございます」

 そう言った先生の表情は、しかし晴れていなかった。


「……認識されにくくなってきているのかもしれませんね」

 歩きながらごちたが、どういう意味だかわからない。


 とにかく先生とじいさん、そしてジェームスとぼくは言われた植物園の奥に向かった。


 あたりまえだけど植物でたくさんの植物園を、ハクオウじいさんは道すがら、ぼくにていねいに解説をしてくれる。


「――ボタンの花は終わったな。今だとシャクヤクが見ごろじゃな。バラはぽつぽつといったところか。まだウツギの花を見るには、ちょいとはやい」

 ここのみどりはじいさんの直接の管轄ではないが、くわしくはあるらしい。


「まあ、なんにせい今年はお日ぃさまが、よぉ照ってくださるから良いわ。ふぉっふぉ」

 どうやら、今年のかむののみどりの成育はおおよそ順調らしい。

挿絵(By みてみん)

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