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私は一人だけ・・・・・

作者: 紅羅斬 琥珀

この物語は,謎解き・・・・,と言うわけではありませんが,読んで下さる方は少し考えるような物語です。ラストをどう捉えるかは,読んで下さった方次第!最後まで楽しんで読んでいただけると嬉しく思います(^^)

 

 私はとある会社で働く普通の新人OL。毎日,仕事は大変だが,ブラック企業でも無いし,給料もきちんと出るし,割と充実した生活を送っている。 


「佐藤さん,この書類,明日までにまとめて置いて下さい。」


「分かりました。」


 最近は調子が良く,仕事も良好。周りに頼りにされたり,よく仕事を任されるようになった。ちなみに,佐藤というのは私の事。




「最近の佐藤さん,前と雰囲気違うわよね。」


「そうそう,仕事もすごく早くなったし,気配りも出来るし,明るくなったわよね。」


「私,佐藤さんの事,前は,暗いし全然話さないし,苦手だったけど,今は結構好き。」


「そうねぇ。人が変わったみたいよね・・・・。」




 書類をまとめていると,お昼休憩になった。近くのコンビニにコーヒーとサンドイッチを買いに行き,食べていると,同僚に声を掛けられた。


「佐藤さん,この間の日曜に,そこのデパートで会いましたよね。顔色が優れてなかったですけど大丈夫でしたか?というか,声かけたのに気づいてくれませんでしたよね~。」

 

と言ってきたが,


「え,私,その日はずっと家に居たよ。そもそもデパートなんて滅多に行かないし。人違いじゃ無い?」


 私は本当にその日はずっと家に居た。仕事で疲れて,その日は朝から夕方まで寝ていたから,外には一歩も出ていない。


「人違いじゃ無いです!髪とかぼさぼさだったけど,身長とか顔とか,間違いなく佐藤さんでしたよ!」


「うそ~。」


そんな会話をしているうちにお昼休憩も終わってしまった。食べてた物を片づけて,私はまた,パソコンと向き合った。




「でさ~。こんな事同僚に言われたの。どう思う~。」


「え~。やっぱり見間違いとかじゃ無い?」


「だよね~。」

 

会社が休みの日。私は友人と二人で近くの喫茶店で色々と話していた。


「あ,そう言えば,あんたさ,この間彼氏に振られた~ってラインしてきたのはどうなったのよ。」


「え?」


また,覚えの無いことを今度は友人に言われキョトンとしていると,


「ほら,これ。」


と言って,スマホを見せられた。そこにはちゃんと私とのやりとりで「彼氏に振られた」と友人にラインしていた。


「まあ,忘れてたんならいいんじゃない。かなり落ち込んでたし。思い出させるようなことしてごめんね。」


申し訳なさそうにスマホをしまう友人。


「ちょっ!待って待って。私,そんなの送ってない!彼氏も最近は出来てないよ!」


私は,自分のスマホを取り出して友人に見せた。友人のスマホにあるやり取りは,私のスマホには無かった。


「ほ,ほんとだ・・・。じゃあ,このラインは誰から・・・?」


「それが分かったら苦労しないよ。」


少し,沈黙が流れた後,友人が口を開いた。


「ドッペルゲンガーとか・・・・?」


「やめてよ。そんなの居るわけ無いでしょ。どうせ,誰かの悪戯でしょ。」


「そうだよね。ごめんごめん。」


 友人とは長い付き合いだが,昔から都市伝説や心霊現象などが好きで,何かある度にそんな話をする。私はそんなの信じてないが,友人の話は結構好きだ。


それから,しばらく話し,少し買い物をして解散した。


「今日はありがと。またね。」


「うん,またね。」


友人と別れた後,家へと歩き出した。交差点まで来て,信号が変わるのを待っていると,ふと,反対側にいた信号待ちの人に目が留まった。

 

 その人は髪はぼさぼさで下を向いていた。服もよれよれで引きこもりのような人だった。

 

 そのまま,見ていると,信号が青に変わった。


 私は,歩き出し,反対側の人も歩き出した。


 すれ違う少し前で,その人と目が合った。近くで顔がはっきりと見えた。それは,私と同じ顔だった。「ドッペルゲンガー」そう友人が言ったのが頭に浮かんだ。


 ―ドッペルゲンガーに会ってしまうと,その人は死んでしまう―


 私は怖くなって家まで急いで帰った。布団に潜り,ギュッと目をつぶった。



 気がつくと,すでに朝を迎えていた。あのまま寝てしまったのだろう。


(夢・・・か・・・・な・・・?)


ベットから起き上がると,仕事へ行く準備をした。友人にあんな事を言われて,私は夢でも見たのだろうと思った。


 そして,今日もいつも通り,会社へと向かった。今日は早く帰りたかったのだが,こんな日に限って,いつも以上に仕事が多い。


(仕方ない・・・・。)

 


 お昼休憩を削り,残業もし,やっと帰れる。


「つがれた~。」


背伸びをしながら,電車に乗り込む。


電車に揺られると自然とまぶたが下がってくる。寝てはいけないと思いながらも,私は睡魔に負けてしまった。


「ん・・・・?」


目が覚めると,知らない駅に着いていた。


「え!噓,下りる駅過ぎちゃった!」


ひとまず,電車から降り,現在地が何処なのかを調べる。しかし,電波が悪いのか,県外となってしまっている。


誰かに連絡することも出来なければ,電車が来る気配もしない。近くに民家もありそうにない。街頭も点滅して今にも消えそうだ。


「最悪だ・・・・。」


落ち込んでいてもどうにもならない。駅で寝泊まりするのも怖いし,仕方なく歩いて離れたところに民家が無いか探すことにした。


 街頭も道も無いが,幸い今日は月が出ていて明るい。  


  道無き道を進んでいると,崖にたどり着いた。下は海でこれ以上進めない。来た道を引き返そうと振り返ると,人が立っていた。

 影が掛かっていて顔がはっきり見えないが,一歩,また一歩とこちらへ近づいてくる。月の光に照らされて,その人の姿ははっきりと映し出された。その人は,あの,交差点ですれ違ったもう一人の私。

 

 もう一人の私は,私を見るなり,顔を真っ青にさせて,こう言ってきた。


「誰・・・・?」


 私は,もう一人の私に向かい,小さく微笑んだ。












「今日のニュースです。今日午後一時五分,○×地域にある無人駅から少し離れた崖の下で身元不明の女性の遺体が発見されました。発見したのは―」









 私は,いつも通り,会社へ向かう。


「おはようございます!」


「おはようございます。」


私が元気よく挨拶すると,同僚は私の近くまで来て,


「佐藤さん,何か嬉しそうですね。良いことでもあったんですか?」


と聞いてきた。私は笑顔で答えた。


「何もありませんよ。」















 ドッペルゲンガーなんていない。この世に二人も全く同じ人なんていない。いちゃいけない。だから,私は二人もいらない。でも,もう大丈夫。だって,
















 もう一人の私は二度と現れることは無いのだから・・・・。

「私は一人だけ・・・・」を最後まで読んで下さり誠にありがとうございました(*^o^*)

 いかがでしたでしょうか(°▽°)?楽しんでいただけたなら幸いです!物語の感想アドバイスなどお待ちしてます。

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