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俺をバ美肉させないで  作者: 天才川 スプリーム太郎
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4 古典的生徒会長病

「いましたか。いなかったら即、廃部にできたのに」


 見覚えのないメガネの男子が立っていた。エコがうしろで「ドラマのメガネ役みたいなメガネ」と呟く。


「ええと」

「生徒会のものです。会長がお待ちですので生徒会室まできてください」


 その男子に連れられて俺たちは生徒会室に向かう。

 まだ正式な部員ではないエコは必要ないのだが、勝手についてきた。部が置かれている現状を知って諦めさせるにはちょうどいいだろう。


「電子工作部の、活動を望んでいる生徒だな」


 生徒会長は長い髪をかきあげながら言った。


「かっこつけた女だな……」


 さっきから、マスクのしたの小声でも言うなよ馬鹿。俺も同じこと思ったけれども。


挿絵(By みてみん)


「本年度の生徒会、私の生徒会では活動の実態のない部活動を廃部にして一掃する方針だ。我が校ではすべての生徒になんらかの部に入ることを推奨しているが」

「マジかよちょーだりーじゃん」


 ちょっと黙ってよ、ね。


「幽霊部員ばかりの部に生徒が逃げこんでしまうと、その意義が無いも同然になってしまう。そんな部に予算もやりたくないしな。電子工作部はその第一候補だ。在籍は五名でギリギリ部の存続要件は満たしているが、活動しているのは実質二名。これではな」


 エコは部員ではないので実際はもっと悪いんだけど。当人の様子を見ようとしたら、自分から一歩まえに出てきた。


「あぁん? なんだおまえ、権力持った生徒会ごっこか。アニメあるあるっつーか? 張りきって仕切ってんじゃねぇよ同じ生徒がよ」


 マスクのしたからとは思えない音声を上げる。

 なんだこいつほんと誰にでもキレるじゃねぇか。サイコ野郎だって普段は人当たりいいんだぞ沸点低すぎだろ。

 会長も毅然とした態度は崩さなかったものの、不意を突かれてすぐには言葉を返せなかった。


「学生の部活動なんてやりたいやつが勝手にやればいいんだよ。部活も生徒会もごっこ遊びだろうが。引っかきまわすなよわざわざ。なあなあですませとけよ。波風たてたら生きていけんこの国の社会の予行演習しとけや」


 ぺらぺらとよく舌が回る。さすがはしゃべりで稼いでるだけのことはある。

 しかし言葉がおわるころには会長も余裕を取りもどしていた。


「たしかに生徒が学生レベルで運動や芸術活動をするのも、自治をするのもごっこ遊びと言ってしまえるかもしれない。そして私はこの社会の縮図ごっこを完璧にやり遂げるつもりだ。そのごっこ遊びに不良役は要らない」


 舌の滑らかさではあっちも遅れをとっていない。役割に酔ってかっこつけてる、と思っていたがこいつは本物かもしれない。


「人間退屈すると余計なことをしだす。薬をやったり火を点けたりネットに動画を上げたりな。生徒にはせいぜい運動でもなんでもやって、時間と体力を使ってもらいたい。幽霊部員だらけの部活で部室を溜まり場にし、いかがわしいことをして過ごしてもらっては困る」


 エコのマスクの奥でなにかがギリギリと音を立てた。

 歯軋りかこれ?

 歯軋りって本当にするやついるんだな。


「どういう意味だコラ。いま頭のなかで考えたこと頭のなかで訂正しとけ」

「というわけで入学式で伝えたとおり、文化部は今月末の部活紹介兼発表会で一年間の活動結果を報告してもらい、その内容が希薄なものには廃部になってもらう」

「一年間って、こっちは三週間しかないじゃん」


 俺はマスクのしたで息を漏らす。


「だから廃部になるんだって。普通は前年の活動をまとめるのを、先輩たちがサボってなにもしてこなかったのを受け継いだんだから」


 会長はもう奥の席に腰かけ、こちらを見ていなかった。


「警告はした。警告の警告もな。もし新入生ながらその部にこだわる理由があるのなら、三週間後の発表会で一年分の密度のものを見せることだな。半端なものでは存続はないと思ってくれたまえ」

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