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俺をバ美肉させないで  作者: 天才川 スプリーム太郎
16/41

16 この回にはいじめっ子が出てきます(四人)

 月曜、電車に揺られ登校する。

 もうこの金曜に部活紹介兼発表会は待ちうけている。

 あの女、中野エコと出会って二週間が経ったことになる。

 まだ二週間しか経ってないのかよって感じだけど。


 前向きなことを言って部を存続させるって希望を持たされたときにはちょっと見直しかけたが、あれはやっぱり間違いだった。

 あいつはどこをどう切っても性格が悪い。

 部室では陰口ばかり言うし、二言目には金の話をするし、基本自分のことしか考えていないし。

 本当に人生で出会ったなかで最低の部類に入る人間だ。

 おわったらきっちり縁を切って、それっきり他人として生きたいもんだ。




「中野ってさあ、かわいいの?」


 放課後、さきに部室に向かったエコを追いかけようと掃除道具をしまっているときだった。

 チリトリを持った近藤に訊かれ、俺はどう答えたものか固まってしまった。


「ずっといっしょにいるんだから見たことあるでしょ? どう? かわいい?」

「べつに、普通」


 俺があいつの謎を守ってやる理由もないんだが、あいつの顔のことを話すとつぎは俺の顔について言及されそうなので、黙っておいてやる。


「ふーん」

「なんで?」

「なんかあいつが部に入ってから、小豆畑、イキイキとしてるからさ。入学式があった最初の週とか、ほんと死にそうな顔してたよ」


 心外なことで褒められると、貶されるより傷ついたりする。

 とくに近藤に。

 だから俺はわざと寄り道してから、のんびりと部活の扉を開けた。


「おせーよ。さっさと着替えろ」


 エコは入れかわりに部室を出ていく。

 今日は装置を押すところから、とおしでやってみることになっていた。

 朝のうちに部室に置いておいたぱふぇ子の衣装に着替える。

 知らない部屋ではなく、普段過ごしている部室でパッドを入れたブラジャーを身体に回すと、誰かに見られるのではという心配がふつふつと湧いてくる。

 袖にレースっぽい飾りやら派手な襟やらついた衣装を着込み、ウィッグをつける。

 廊下から死角になる扉の真横に隠れ、エコを呼ぶ。


「ちょっとふりっと動いてみて。うーん。本番までにスカートを糊づけして動きを不自然にしよう。髪もジェルつけてちょっと不自然に動くようにして」


 改善点を見つけてはメモを取っている。

 その真面目さをほかのことに向けてくれればねぇ。お母さんか。


「ジェルね。親父の持ってくるか」


 手で無意識に掻きあげると、髪に乗ったなにかが当たる。

 髪飾りか、かたちをたしかめてみる。

 伸びたクリームや刺さった菓子に指を沿わせる。


「おいあんま触んなよ。壊れたらどうすんだ」

「これ要る? ちょっと大きいし重くて邪魔なんだけど。思いきってなくしちゃ駄目か?」

「てめ、あたしのデザインに」


 エコは俺の額のあたりに両手をやり、髪飾りを守ろうとする。


「おまえが?」

「そうだよ。ぱふぇ子のモデルができあがって動かしてみたとき思ったんだよ。パっと見で、ほんとにほんとの人間だと思われたらなんの面白みもないって。だろ? だからわざと普通の人間ならつけないデザインを自分でモデリングしたの。ぱふぇ子って名前もそう。違和感を演出したの。わざとなの!」


 褒めてほしいんだか言い訳したいんだか。


「ぜんぜん気づかなかったわ。いい出来じゃん」


 エコは中途半端な愛想笑いみたいなものを浮かべる。

 とにかく髪飾りをつけたまま、エコに手伝ってもらい筒に入る。

 ビニールシートの円を半分ほどずらして土台に置き、それから逆手で土台を押してみた。

 思ったより重いが、動く。


「危なっ」

 エコが慌てて駆け寄って円筒を支えた。

 倒れそうになってたのか。見えんかった。


「高さがあるから安定性が全然ねーよこれ」

「となると俺一人じゃ無理だな。やっぱりおまえが土台を押して俺は上半分だけなかから持って進まないと」

「無理だって。あたしスモークマシンのリモコン押してなきゃならないもん。片手しか使えない。それともリモコン改造して切り替え式にする?」

「おまえそれ借りもんだってこと忘れてるだろ。土台に紐つけよう。そうすりゃ片手で引っ張れる」

「え~? スーパーホログラフィック・スリーシックスティに紐~? ダサいなあ。そんな家電買わねぇぞあたし」


 消費者の目線は要らねぇんだよ。

 不満は捨ておいてちゃっちゃと紐をつける。


「あたしがぷしゅーって言ってるあいだ煙が出てると思って。すぐ行くなよ。出始めてから三秒後くらいからな。ぷしゅーぅぅぅぅ……」


 エコの擬音に合わせ行軍を開始する。

 狭い部室をぐるぐる回って適当な距離を進み、エコが手を離し止った土台のうえに乗って、足場の透明な厚みと土台に空いた穴との隙間にビニールを嵌める。


「ぅぅぅ……。いけそうだな。じゃああたしが出てって軽く説明。えーコホン。これは我が部の天才高校生技術者にしてみなさんお馴染み大人気リアル系Vチューバー珠稀ぱーふぇく子の熱狂的ファン、小豆畑ライカ製作、夢の三百六十度高解像度ホログラフィックディスプレイでございます。今日はこの装置にこれまたお手製の3Dモデルを投影いたしまして、人工知能、合成音声による受け答えと手つけモーションによる踊りを披露したいと思います」


 エコが口上を述べているあいだ、俺はいかにもCGキャラクターがなんの役割も与えられてないときみたいな笑顔と首振りと揺らめきをやっていた。

 それにしても改めて設定を並べると凄い技術の集合体だ。

 IT企業からスカウト来ちゃうだろこれ。GAFAから。


「んであたしはさりげなくうしろに隠れて……、ま今回はいいや。合成音声モードで……。こんにちハ。ぱふぇ子でェす。では最ショの質問ヲ、そこのあナた」

「ちょっと待て。なんで撮ってんだよ」


 スマホを構えたエコを咎める。


「あとであんたも見て気づいたとこ直さないといかんだろ。AMPMサイクルだ」


 日々じゃん。


「ほらいくぞ。そこのあナた。ぼ、ぼくですかぁ? じゃあぱふぇ子さんはぁ、なんのために生まれてなんのために生きているんですかぁ? 私ハ、マンジ固メに生まれてサソリ固メに生きていまァす!」


 言葉に唇と感情表現を追わせる。

 指を頬に当て悩む仕草、大げさな顎の上下、華やかな笑顔。

 俺は心を中間に縫いつけ対応していく。

 自分を失くすと感情の偽物はよどみなく引きだせた。


「よし。じゃあ最後に歌だな」


 わずかに曇った膜の向こうで、エコの顔がいつになく上機嫌なのも気のせいではないだろう。


「でこれ、なんでおまえの生歌なわけ? 放送部に歌入りの音源渡せばいいじゃん」


笑顔を消し、声を円筒に響かせる。

 エコはビニールの外から閉じこめられた俺を指差して笑いだした。


「ははは、それー。急に笑うのやめるとサイコホラー映画みたい。でなんだっけ? 歌入り音源流せって? なに言ってんだ、ぱふぇ子の初めてのライブイベントだぞ。生歌に決まってるだろ。あたしはアーティストとして絶対口パクはしねぇぞ!」


 いや口パクなんだよ。

 目のまえで披露される音量控えめな生歌に合わせて踊る。

 この二週間、ひたすら練習してきたことを吐きだしていく。ミスはない。


「ぷしゅー、で撤収と」


 俺が土台を降りるとエコがふたたび紐を引っぱる。

 俺は成功を確信して筒から出る。

 が、エコの機嫌は傾いていた。


「なんだよ。なんかミスったか?」

「そうじゃないけど、なんか違う」


 エコは首を捻り、録画しおえたスマホを眺めた。


「前半はよかったけど後半の踊りはなんか全然、CGって感じがしなかった。ただの生きた人間にしか見えなかった」


 そんなはずはないって希望と、やっぱりなって絶望とで目のまえがチカチカする。


「見せてみろ」


 エコが再生する動画を見る。

 だが俺には、こいつの言う違和感がわからなかった。


「俺にはもう、ぱふぇ子にしか見えねぇけど。薄気味悪いくらい」

「うん。あたしもこれ見たらおかしく感じない。でも、さっきは絶対そう思ったの! あこれ駄目だ、って!」


 二人して押し黙る。エコがスマホをホームに戻し、時刻を口にした。


「いまからあたしの家に来い」

「おまえんち?」

「あたしのPCで本物と並べて、なにが違うのか見比べてみよう。親はいないから遠慮するな。なに想像してんだ。いま頭のなかで考えたこと頭のなかで訂正しとけ」


 それは考えてない。本当に。




 エコの住まいは学校の最寄り駅を通りすぎ、ちょっとだけ歩いたタワーマンションだった。

 金あるなぁって感想だけどこいつの金ではないわな。

 親が金持ちなのか。

 Vチューバー始める初期投資を親に借りたとか言ってたけど、これなら出してくれるわな。

 なんですでに金持ってるくせに、そんなに必死こいて儲けようとするかね。

 エコはマンションの入り口で隣のコンビニに向け顎をしゃくる。


「片づけるから十分くらい暇潰してろ」


 自動ドアに消えるエコを見送り、コンビニへ。

 こういうとき俺は雑誌を立ち読みしたりせず、意味もなく酒が冷やされてる冷蔵庫を眺めたりネット決済のカードを見比べたりする。

 十分経ってコンビニから出たところでスマホを取りだす。

 父親に連絡しておこうか。また遅くなるかもしれないし。

 ……そういう意味じゃない。本当にそんなことは想像していない。


 ほかに会話もない画面には、まだ先日のやりとりが残っている。

 無駄におわったメッセージが。

 文字を打ちこむことはなんの手間でもない。

 一語入力すれば予測変換で文章は完成するだろう。

 でもまた、まだ、送らなくてはならないのか。


「あれ? 小豆畑じゃね?」


 声をかけられ顔を上げる。

 五人の高校生が広がって歩いてくる。

 こいつら、この制服は、同じ中高一貫校だった……。

 男子二人に女子三人。

 どいつもこいつもちょっと派手になっている。

 なんでこんなところで会うんだ。


「しりあいー?」


 同じ制服を着た知らない女が言う。

 この五人目は、外進組か。


「中学までうちにいたんだよ」

「おまえいねーと思ったら、わざわざどっか受験したんだって?」

「なんも言わずにいなくなるか? ふつー」


 ぞろぞろ接近して俺を囲む。


「なにそれいじめー?」

「違うっての。普通に友達だったし?」

「そーそー。友達だからネタにしてやってんのに」

「それでおまえマスクして学校通ってんの? ずっと? 無理あるだろ」


 口のなかが粘っこく引っついて、なにも言えない。


「いみわかんないんだけどー」

「へへ。こいつの顔見てみろよ。マジかわいい、本物みたいだから」


 一人の男子が無造作に俺の顔に手を伸ばし、マスクを取ろうとする。

 夢のなかみたいに力の入らない手で払おうとして、顔のほうを逃がす。

 身をよじってすれ違い、エコのマンションに逃げこむ。


「おい!」

「やっぱりいじめっこじゃん」

「違うんだって。あいつが……。もー!」


 声が自動ドアに封じられる。教えられた番号を押す。

 チャイムが鳴ってカメラで見ているってランプが点いて、なにも応答なしにエレベーターホールへ道が開く。

 エレベーターが昇るにつれ、俺は学年も一つあがると暗示をかける。

 中三から高一へ。

 あるいは一年以上前に戻りたいと願う。

 父親とエコが俺を利用し、おかしなことをしだすよりまえに。母が生きていたころに。

 妄想は、エレベーターが停まってあえなく打ちきられる。




「どうかした?」


 扉を開け第一声で訊いてくる。

 身体のあちこちに白のラインが入った黒いランニングウェアみたいなものを着ている。

 動きを検知するための撮影用スーツか。


「べつに」


 開放感すらある広さのリビングを通り、エコの部屋に。

 片づけるって言ったよな?

 そもそも散らかりようがないっていうか、荷解きもしてないダンボールばっかじゃねぇか。

 そういえば引越しがあって登校が遅れたって言ってたっけ。


「っちょ来い」

 

 広々としたPCデスクに座って呼ぶ。

 大型のモニタが二枚、それに金魚掬いみたいなフィルターのついたマイクやカメラ、脇にはなにかで見たVチューバーの撮影機器が丁寧に置かれていた。

 新興メーカーの参入もあり、機材それぞれは一昔前に比べかなり安価になったとはいえ、一式揃えるとなると相当な額になるだろう。

 これを買い与えるのは親としても勇気がいるし、借金というかたちにして金勘定を考えさせる教育という名目にするのは理に適っている。


「よし、じゃあ狭いとこバージョン踊ってみっか。ちょっと離れな」


 顔を捉えつづけるカメラを被り、指の動きを検知する手袋をはめる。

 以前なにかで見たものよりかなり簡素だ。

 技術が進んだ結果なのか、安物なのか。

 PCでしばらく調整らしきことをしたのち、床に貼ったビニールテープに乗っかる。

 モニタに目をやると、いつもよりやや平坦なぱふぇ子の簡易版が、エコの動きを盗んでいた。

 夜中ふと鏡を見てあれが映ってたら怖いなー、なんてことを考えていると音楽が流れだす。


 顔を上げたときには人が変わっていた。

 目のまえにいる人間が、エコの偽物にすりかわった。

 エコの顔を被ったぱふぇ子、エコのCGを着たぱふぇ子が歌っている。

 ぱふぇ子はエコを操って優雅に踊り、かわいらしく笑う。

 ぱふぇ子のファンがいま何十万人なのか、正確な数は知らないが、そいつらは間抜けだ。

 曲のおわりまで、彼女はそこに居つづける。


 PCに近寄り録画を止める。拍手とかしたほうがいいのか?


「拍手くらいしろよ」


 自分で言うな。


「じゃあ装置と同じ感じを再現してみっか。筒置いてマテリアルをいい感じの半透明に変えて、定点のカメラを置いてー。照明置いて丸く配列してー」


 知らない3Dソフトで手早く作業し、ぱふぇ子の周りを整理していく。


「えーとここからここまでカットして、ここに置いて、レンダリング開始っと。最近PC買い換えたからそんなに時間かからんはず」


 足元のフルタワーケースから猛烈な排気が吐きだされる。

 これでゲームとかしたら楽しいだろうな。


「親いないって、共働きか?」

「共働き、かな。そう言えば」


 歯切れが悪い。

 だが俺も、人の家庭を突っつく身分じゃない。


「質問パートだけどさぁ、最初の一人くらい仕込みがほしいよな」


 エコが話題を変える。


「道作って全体の流れを観客全体に理解させて、そうすりゃつぎに指名するやつも変な質問せんだろ。パンツの色とか」

「仕込みって、何列何番のそこのあなたって指名するのを狙ってやるってことか? 座る場所決めておいて、なに質問するかも打ち合わせしといて」


 こいつ、どこまでも卑怯なことを考えつくな。


「でもそれって、そいつにはあらかじめなにをやるか教えるってことだよな? もちろん本当になにをやってるかじゃなくて、設定で、だけど」

「そうそう。近藤とかどうかな」

「なんで?」

「なんでって、まえも放送部に行かせるとこまでは上手くいったし、ぱふぇ子関連を盛り上げるためだとか言えば扱いやすいかなって。陽キャ代表だからあいつが乗ってきたら周りも逆らわないでしょ」


 たぶんこいつの言ってることが正しいのだろう。


「駄目だ。マスクつけてるとはいえ毎日顔合わせてんだ。勘づかれるかもしれない」

「まだんなこと言ってんのかよ。いいじゃん、むしろバラして、それきっかけで仲良くなれば」

「ぱふぇ子を利用して、みたいなのは違うだろうが」

「潔癖だね。損するよ」

「それに逆に気持ちわるがられたらどうすんだよ。そんでみんなにバラされたら」

「なんでそんなこと考えるの?」

「なんでって」

「あんたもうすでにクラスでナメられてんだから、失うものなんてたいしてないし。頑なにならずにさあ、喋ったほうが状況変わる可能性高くない?」


 一理あると思っても、頷けないこともある。


「俺はそういう人間じゃないんだよ」


 優しくしてくれとは言わないが、なにかを察して放っておいてくれないものか。


 二人してパントマイマーの動画を見たり真似したりしながらすごす。

 やがてレンダリングがおわる。


「よし、これで並べて再生できる」


 エコはスマホから移した映像とたったいま作った映像とを並べ、再生する。

 映像の作りに差異こそあれ、それは一人の人間が同じ曲に合わせ同じ踊りをしているようにしか見えなかった。

 片方はちょっと素人くさい画質と手ぶれで、化粧のノリが悪いかなって程度。


「俺にはやっぱり、区別がつかない」

「うん、あたしも。ここまでやってなんだけど。……でも生で見たときは、違った」

「違ったって、どう違ったんだよ」 

「それは、なんてっかな。アップグレードしたって感じだった。PC買いかえて同じゲームやったっていうか」


 当人がわからない感覚を言葉だけで推察できるわけもない。

 俺たちは二人して腕を組み、何度も映像を見比べる。

 数周後、エコが諦めてモニタから目を離した。


「プロに聞くべきかもねー」

「プロって?」

「あんたの親父さん。かわいい息子の頼みなら聞いてくれんじゃないの」


 俺の歯が鳴った。


「しるかよ」

「両方の生みの親なら、あんたと本物がどう違うのかわかるかもしれないじゃん」


 へらへらした言いかたも、きっかけにすぎない。

 ついさっき中学の同級生に会ったりしなければ、さっき顔を晒せば近藤と仲良くできるなんて言われなければ、どうってことなく聞き流せただろう。

 今日の、数週間の、一年間の、溜めこんだもののきっかけにすぎない。


「俺はぱふぇ子の偽者じゃねぇ」


 いまさら振りかえったって遅いんだよ。


「俺はぱふぇ子の宣伝材料じゃないし、素材でもねぇ」

「言葉のあやだろ」

「俺はおまえや親父みたいに人間関係を利用したりなんかしない。うんざりなんだよ。おまえらの金儲けに利用されるのは」

「あたしはともかく……。おいっ!」


 鞄を掴む。

 見知らぬ家で駆けだして、見当を失いそうになる。

 廊下を出て非常階段へ。

 階段を滑る単調さが心を刻む。

 嫌な気分だった。嫌な気分になることはわかっていた。

 自分に非があるとは思っていないのに、階段を下りる一段ごとに嫌な気分で心が刻まれていった。

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