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その後、目が覚めたら私は、『林 紗良』に良く似た女の子。サラ・レイティアになっていた。
レイティア家はどうやらかなりのお金持ちらしく、漫画みたいな大きなお屋敷に何人もの使用人の人達がいた。
……本当に異世界なんだなぁ……と、遠い目をしたのももはや懐かしい記憶である。
どうにも彼女──サラは、通っている学園での騒動に巻き込まれ頭を強く打ち、昏睡状態に陥っていたようだ。
多分だけど、彼女はその時に亡くなってしまったんだろう。
そこに魂だけの私が送り込まれた──、といった所だろうか。
サラの両親はとても優しい。
サラ事をよく可愛がり、起きた時は泣いて喜んでくれていた。
テレビでしか見た事のないようなメイドや執事といった使用人達からも、目が覚めた事を心から喜んでもらえていた。
……サラは、とても愛されていたようだ。
だから、だろうか。
サラの両親がどことなく雰囲気が私の両親にも似ているからか、……嬉しいと思う反面、どうしても申し訳なくなってしまう。
──私は、本当のサラじゃないのに。
チクチクとした罪悪感は1ヶ月経った今でも無くならず、どうしても少しよそよそしい態度になってしまうのは、まあ……仕方ないと思う。
そもそも20代の社畜がお金持ちの高校生(異世界人)になりきれる方がヤバいでしょ。うん。
元より、サラも口数の多い子ではなかったみたい。
両親も学園での件を気にしてか、無理やり私に踏み入って来ようとはしなかった。
そのおかげか、ひっそりとこの世界の常識や知識を詰め込むことが出来たのはありがたかった。
天使のお役目、というのはいまいちわかりきってないけど……この世界でしばらく生きなきゃいけない以上、知識はないと困る。
まず、この国の名前はリリア王国。
海に面した、とても綺麗な国だ。白い外壁の建物を並ぶ城下町は壮観だった。
元の世界でいうなら、ヨーロッパのような街並み、だろうか。
そして、この国には魔法という物が存在する。
その他にも王族、貴族、聖女……というファンタジーのオンパレード。
正直とてもワクワクした。魔法とか杖とか、いくつになっても憧れるよね!
そしてなんとなんと、この『サラ』の体も魔法を使えるらしいのだ!
属性は水。優秀なこの『サラ』は氷魔法も使えるらしい。家電製品のないこの世界では重宝しそうな属性だ。
『学園に戻る前に、復習をしておきたくて……』
なんて理由で執事さんに教えて貰った魔法訓練はとても楽しかったです、まる。
そして、そんなこんなで。
「いよいよ高校生やり直しかぁ……」
どどーん、という効果音の着きそうな巨大な洋風の学園。
スウェラル・レティ学園へと降り立った私は。
「いい加減にしてくださりませんこと!?」
登校早々に、少年少女達のド修羅場に巻き込まれていた。
……………………帰っちゃダメかな〜〜、これ。