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この世界はバグとフラグで出来ている  作者: 金屋周
第5章 異世界の力
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5-21 ミノア

「えっと……どうしてここに?」



俺は目の前の赤髪の人物に問いかける。


以前、出会ったことこそあれど、会話を交わしたわけでもないし以降関わったこともない。それなのにどうして急に、それも俺を待っていたのだろう?



「どうしてって……君の要望だろう?」



俺の要望!?


また会いたいですとか言ったっけ!?


自分で覚えてないだけで、そんなナンパみたいなことを言っていたのか俺は!?



「……いや、言ってないな。」



冷静に考えてみると、絶対と言い切れるほどの自信があった。初めて会った人にそんなことを言えるほど、俺の精神も度胸も強くない。


ロートとずっと一緒にいるから異性に慣れてきた節はあるけれど、この世界に来たばかりの頃の俺がそんなことを出来るはずがない。


つまり、この状況は何かの間違いだと言えるな。うん。



「何言ってるの?寝ぼけてるのかな?」



「寝ぼけてないから!悪いけど、俺は君に会いたいだなんて……。」



「伝えたでしょ。昨日、神様メールで。」



「言って…………神様メール?」



何でその存在を知ってるんだ?


それを知ってるのはアカリと俺くらいのはず。他には神様と管理者くらいじゃ……。


……そういや、この人の声、どこかで聞き覚えが……。



「少しは落ち着いた?それでナギト、ボクに訊きたいことがあったんだろう?なに?」



「……あー…………えっとですね。」



そうか……この人……。


管理者のミノア様だ。


これまでに会った時は赤いローブで全身を隠してたから気付かなかった。こんな素顔をしていたのか……。


……名乗ってくれなきゃ分かんないよ!!



「聞きたいことが……いくつかあって……。」



必至に頭の中を整理しながら質問する。


1つ目は、この世界に起きていること──つまり異世界からの攻撃についてだ。管理者がこれをどう捉えているのか、それを知りたい。



「──そのことか。それについては、ボクも調べていた内容だよ。」



そう前置きをして、管理者は語り出した。



「結論から言うと、深く干渉することは出来ない。前提として、この世界アネモスは将来的に異世界ティフォナスから攻撃される。それは決定事項だった。」



「決定事項!?どうして!?」



侵略に脅かされることが決定されていたなんて、信じがたく憤りも感じる話だ。



「最初から、そうなるように決められていたんだ。そもそも、アネモスとティフォナス……2つの世界はダムレイが創ったモノだ。本人に問い合わせてないから断定は出来ないけど、元々そういうつもりで創ったのだろう。」



俺たちの住んでいるこの世界が、侵略されるのを前提とされていた……?


じゃあ、俺を含め皆がこの世界に転生したのも、ただまたここで死ぬために……?



「……けど、それは決まっていることだけど、その先については何もなかった。」



「……?それってどういう……?」



「異世界間で戦争が始まる。そこまでしか決定事項でないということだよ。だから君が生きるも死ぬも、君次第だ。」



「つまり……助かる道はある……ってことですよね?」



俺の問いにミノア様は頷き、それに安堵した。


良かった……全部ムダになるわけじゃ……無くなるわけじゃないんだ……。


でも、戦いを避けることは出来なさそうだし、ただ最初の状態になっただけだ。結局は戦って、自分たちの手で平和を守るしかない。



「うん。ここから君たち次第だけどね。他に訊くことは?」



えーっと……優先順位の高い疑問は……。



「……!この戦い、アカリに協力してもらうことって出来ますか?」



仕事にないから参戦しないって当人は言ってたけど、ここで管理者から許可が下りれば味方になってくれるはず。


彼女の実力は未知数なところが多いが、俺のカンだと相当なはず。



「アカリ……ダムレイの部下の……分かった。彼がどこで何してるかなんて分からないし、ボクから言ってみるよ。これで最後かな?」



「最後……にもう1つだけ!」



これでコッチの状況は整理出来てきた。


だから後は、敵の方について……知っておきたい。



「コウキがEXコードを発動出来ること……炎刀ミノアって武器を持っていたこと、それらについて教えてほしいです。」



俺の言葉にミノア様の顔が微かに動いた。



「……ボクの名前が付いた武器……多分、ダムレイがワザとそうしたんだと思う。特別を創るために、管理者の名前と簡易的な能力を持たせた武器を用意した。そんなところだと思う。」



すぐに無表情に戻ったけど、この人も知らなかった内容だったみたいだ。


知らなかったってことは、直接的に関わってないってことだ。それなら絶対的な武器ではないはず。俺のイリスでも充分に太刀打ち出来る可能性があるってことだ。



「それでEXコードの方だけど……それは興味がある内容だ。前々から少し調べていたことでもある。どんな紋様だった?」



「どんな……?確か……。」



記憶を探る。


コウキのEXコード……ゆりりんと一緒で黄金に輝いていて、違うのは形……刃が幾層も重なったような紋様で……。



「……そう。まるで竜巻のようだった。」



それを聞いて「やはり。」と呟いた。



「風のEXコード。ダムレイの管理下にあるものだ。旧型を強化アイテムとして渡したってところか。」



「あ、あの!そもそも、EXコードって具体的にどういう存在なんですか?」



話を聞いていると、単なるパワーアップする能力ってわけじゃなさそうだ。



「管理者だけが所有している能力……と言えばいいかな。身体能力を極限まで強化することに加え、その属性の能力の精度も上がる。主に世界を再構成したり創造する時に使う力。」



「えっ……?」



そんなにヤバい能力だったの?


じゃあその気になれば、ゆりりんはこの世界を自分好みにすることが……。



「流石に最新バージョンは渡してないはずだけど。そういった権限の付かない旧型を使わせているはず。だから単純に強化するための存在になっていると思う。」



あ、そこまで最強の能力ってわけじゃないのか。いや充分過ぎるほど強かったけどさ。



「それと、その点についてボクも知りたいと思ってたんだよね。ボクがこの世界を気にするようになったキッカケ……気付いたのは最近だけど。この世界にEXコードを持ってる人がいるよね。」



「ゆりりんの……ことだと思います。滴の紋様が現れてました。」



「やっぱり水属性のEXコードか。旧型を勝手に持ち出して使用したってことか。実験にしても壮大だな……何か企んでいるのか……。」



無表情のままブツブツと呟き始めた。



「……まぁ取り上げるつもりはないから安心して。どういった経緯であれ、もうその人が持ち主であることに変わりはないから。それに、どうせ元の持ち主は気付いてないと思う。ボクが気付いたのもたまたまに近かった。」



その言葉にホッとした。


ゆりりんのEXコードが失われたら、勝てる見込みがほぼゼロになってしまう……かもしれない。



「それじゃあ、そろそろボクは行くね。あんまり長居してダムレイに余計なことをされたくないし。これくらいの干渉しか出来ないけど、頑張ってね。」



「あ、ありがとう……。」



ございました、と言い切る前に管理者の姿はなくなっていた。


一瞬で姿を消し、まるで初めからこの場に俺しかいなかったみたいだ。



「ナギト!随分と早起きだけど、何かあったのか?」



声がして振り返るとダイチが大きく手を振っていた。



「……何でもない!ちょっと早く目が覚めただけだ!」



さっきの出来事……話しても信じてもらえるか分からないし、今の状況だと混乱させるだけになるかもしれない。だからまだ、秘密にしておこう。


俺はダイチに駆け寄って胸を小突く。



「やることいっぱいあるんだろ?何からやればいいんだ?」



「凄いやる気だな……いやいいことなんだけど。……ライブが決まった以上、とにかく告知と広告だ。ゆりりんとスタッフの方々に相談して、最速でいつ開催出来るかを確認。そしてそれを世界各地に知らせる。まずはその作業だ。」



「おう分かった!」



色々な話を聞いたけど、結局はやることは変わらない。


準備して、戦って、勝つ。ただそれだけだ。


それに気付いたら心が軽くなった。悩みや不安の材料はいくつもあるけど、いくらそれらについて考えても解決出来るわけじゃない。


だから今は、やれることをやっていくしかない。



「ホントに上機嫌だな、ナギト。昨日は悩んだりもしてたのに。」



「おっ?お前からその話題を蒸し返すのか?確かに不完全燃焼みたいなところではあったけど……。」



「……少し気になっただけだ!それに、昨日の話は直面するようなものだしな。ナギトはどう考えているんだ実際?」



朝日を横目に俺は腕を組む。



「そりゃあ……まぁイヤだなって思う気持ちもある。けどよく考えたらさ、そんなに大きな問題にもならないんじゃないかって思ったよ。」



昨日はヒートアップしてたせいで考えつかなかったけど、冷静になったら答えは見えてくる。



「というと?」



「多分、この世界でゆりりんは3本の指に入る実力がある。だから面倒くさいファンやアンチが出現しても、いざとなればボコボコに出来る。だから問題ない。」



EXコードの性能は管理者からのお墨付きと言える。


その強さは目の当たりにしたし体感もした。あれを敵に回そうって考える輩は少数……というかバカだ。



「まぁ……確かに。そうだな。」



ダイチもそう思ったらしく、特に反論せずに頷いた。



「おーーいっ!!」



太陽をバックに手を振る少女の影が2つ。


ロートとゆりりんだ。


目が覚めて俺たちが外にいることに気付いて出てきたのだろう。


俺たちは大きく手を振り返して、2人の元に駆け寄っていく。


さぁ!張り切っていきますか!

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