表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界はバグとフラグで出来ている  作者: 金屋周
第5章 異世界の力
62/116

5-5 次のステップへ

「うおっ……!」



どうなった……!?


咄嗟に盾を構えたというのに衝撃でビリビリと手が痺れる。離れたところにいる俺がここまでの余波を感じるんだ。ヴラヴィはどうなったんだ……?


流石に直撃して死んだなんてことはあり得ないはずだが(そもそもゆりりんが当てるとは思えない)、この威力を相手にして無事でいられるとも思えない。


宙に舞った砂埃が徐々におさまってきて、視界がクリアになっていく。



「…………!」



結論から言うと、2人とも無事だった。


そう信じていたとはいえ、実際に目にするとやっぱり安心するな。


今の攻撃で出来たクレーターの真ん中にゆりりんは拳を地面につけた体勢で固まり、そのすぐ傍にヴラヴィが立っていた。


彼女の身体を覆うように透明な赤く輝く……あれはバリアか?


どうやら、それで攻撃を防いだようだ。あの威力の攻撃を防ぐって……どんな性能だよ、あのバリアは。



「……良い威力だよ……流石は、この国のナンバーワンと言ったところかな。」



喋り方はいつも通りだけど、その声音はどこか真剣さを含んだものだった。



「ふぅ……今のを防がれると、ちょっと悔しいわね……。というか、今のにこそ、名前を付けるべきだったのかしら?」



「かもしれなかったけど……過ぎたことさ。」



そう言ってゆりりんはへと手を差し伸べる。


ゆりりんは頷いてヴラヴィの手を握ると立ち上がった。



「さて、良い感じに引き分けって結果になってしまったからね……今日のところは、これくらいにしておこうか。」



「いいの?結局、何にもしてない気がするけど……。」



「ああ。君の実力ちからが少しは知れたからね。それで充分だよ。それに……。」



俺の方を見てくる。



「ナギトの持っている武器……霊装イリスと言ったか。あちらにも興味がある。」



「イリスに?」



俺は2人に近づく。


霊装これ管理者ダムレイから貰ったわけだから、そりゃあ特別なもんには違いないけど……。



「興味があるって……どうするんだ?」



「それを調べるってことかな?それ自体が魔力を持っていて、供給を必要としていない……そんな物は初めて見るよ。ゆりりんの持つEXコードもとても気になるけど、優先はナギトの方かな。」



「そんなにか……。マギサに見てもらうとか言ってたけど、そういうことなのか?」



魔女が見れば分かることがあるのかな?



「その可能性が高いってことだけど……先ほどまでの話にも繋げられるかもって話でもあるよ。」



先ほどまでって……必殺技の話か。


……ん?どう繋がってくるんだ?



「まぁ詳しくはマギサから話してもらうつもりさ。さて、付き合ってくれてありがとう。」



ヴラヴィは改めて手を差し出し、2人は握手を交わす。



「近いうちにまた、協力を頼むかもしれないけど……その時にも承諾してくれると嬉しいよ。そうだ、今度2人でディナーにでも……。」



「ごめんなさい。そういうのはちょっと……。」



流れるようにデートしようとするヴラヴィと、それをあっさり断るゆりりん。まぁ殺伐としているよりはいいか。


それで城の方へと帰り、ゆりりんとは城内で別れた。夕食に招こうとも考えたけど、さっきのやり取りがあったせいで躊躇してしまった。それと俺の部屋じゃスペースが足りない。ロート、シメアに加えて、ヴラヴィとマギサ、コーキラが来ているからな。



「おかえり。カレー、出来てるよ。」



「おう。サンキューな。」



小さなちゃぶ台の上に、所狭しとカレーが置かれていた。普段はここで食事をすること、あんまりないからな。一応、小さなキッチンはあるんだけど。


こういう機会は今後もあるだろうし、もう少し大きなちゃぶ台を買ったり自炊の練習をしておいた方が良さそうかも。



「それじゃ、いただきまーす。……コーキラは食べないのか?」



1人だけ何故か、部屋の隅にいる。



「はい。僕は食事を必要としていませんので。定期的に魔力ドリンクを摂取すれば充分なんです。」



「へぇ~……。」



食べる楽しみがないってのはアレだけど、食事を必要としないってのはいいな。



「ふふん。私の開発した……。」



「いや、もう自慢話はいいから。」



喋り始めたマギサを速攻で止める。


もうどや顔は見飽きちまったよ……。



「いいや?その話が重要になってくるかもって思っていたんだ。」



「ん?どういうことだヴラヴィ?」



マギサの自慢話が?



「そっちじゃなくてね。魔力ドリンクの方の話。それが供給源となるから、応用が色々と効くんだ。」



「そっちの話なの?確かに魔力ドリンクを使うことでコーキラは活動出来るし、今後の発明にも応用出来る物だと思っているけど。」



「それを使うと、誰でも魔法が使えるようになるの?」



ロートの質問にマギサは首を横に振った。



「魔法は使い方自体を知らないと扱えないわ。アレはあくまで魔力を強化するようなものよ。コーキラは魔法人形ドールだから適用出来るの。ただの人形には効果がないわ。」



詳しい原理は分からないけど、魔法を強化するようなアイテムってことか。



「それで?魔力ドリンクを何に使いたいのよ?」



「それは勿論、ナギトに対してさ。」



「はぁ?あんた、魔法使えなかったわよね?」



そうだけど、なんか癪に障る言い方だな。



「彼自身じゃなくて、もっている武器の方だよ。」



「出来ればフォローしてくれよ……ヴラヴィが言ってるのはコレだ。」



首からぶら下げている十字架を見せる。


手合わせの後、元に戻ってくれと言ったらこの状態となった。十字架がデフォルトって捉えていいみたいだ。



「十字架……?かなりの魔力が宿ってるみたいだけど……。」



ヴラヴィは頷く。



「ああ。多分、魔力を供給しなくても平気なように作られていると思う。だから強化したりすることは出来ないと思うけど……。」



「一時的な増大はいけるかもって話ね。それが出来るなら、魔力ドリンクによって溢れ出る魔力をエネルギーに変換して……。」



「通常では出せない威力……つまりは必殺技となる。」



「それじゃ、もしかして……!」



俺の言葉に2人は頷いた。


なんか、どんどん進んで行く感じがするな……!


イリスが手に入って、その後に必殺技の話がやって来て……運命ってやつがもしあるなら、それは今間違いなく俺に味方している。



「明日、試してみよう。もしかしたら、ナギトがきっかけとなって、この世界が変わるかもしれない。」



「それは言い過ぎよ。でも、新しい発見になることは確かね。まぁ詳しいことは明日にして、カレーを食べましょう。」



ようやく、ようやく俺は強くなれるのかもしれない。


思い返してみれば仕事ばかりの日々で、異世界らしさなんて全然感じない生活を送ってしまっていた。いや、冒険者になったりしてればまた違ったんだろうけど、安定を捨てるのには勇気がいる。


ここにきて、特別な何かになれるかもしれないんだ。


その嬉しさを胸にカレーをかきこむ。辛い。



「そんなにカレー、好きだったんですか?」



コーキラが俺の様子を見てそう尋ねてきたけど、人間には色々あるんだよ。


そして翌日へ──。


ちなみにヴラヴィたちは城下町の宿に行かせた。俺の部屋は3人でぎゅうぎゅうだからな。これ以上、誰かが寝泊まりするのは無理がある。



「──さて、早速だけど……。」



中庭に俺とヴラヴィ、マギサとコーキラが立っている。


シメアは部屋で留守番。ロートは仕事(俺の仕事はヴラヴィが大臣おっさんに頼んで休みにしてもらった)。



「魔力ドリンクが残り少ないから、一度帰る必要があるわ。」



「え、えぇー……。」



なんかテンポ悪いなぁ……。ここはサクサク行かせてくれよ。ないものは仕方ないけどさぁ。



「というわけで、私の魔法で帰ろうか。」



「……ん?ヴラヴィ、そういう魔法、使えたのか?」



テレポート的なのが出来るなら、わざわざ船で移動する意味ってなかったんじゃ……。



「使えるようになったのは最近だよ。」



「ホント、実は頭悪いんじゃないかってくらい、応用力がないのよ。魔法のね。ひらめきがないというか、視野が狭いというか……。」



へぇ……最強のヴラヴィにも、そういう弱点?欠点かな?……そういうところがあるとは。



「まぁ私の話は置いといて、行こうか。皆、私に触れてくれ。」



言われた通り、腕とか肩とかに皆で触れる。



「それでは……ハイ。」



何気ない言葉で景色が揺れ、気が付いたらどこかの部屋の中にいた。



「到着。まだ私の家に移動するくらいしか出来ないのが課題だね。」



なんか見覚えがある部屋だと思ったら、ヴラヴィの家か。前に来たことあるな。



「ここに例のドリンクがあるのか?」



「いいや?ここじゃなくて、マギサとの研究所の方になるよ。ここから歩いて向かおう。」



……やっぱり、テンポが悪いんだよなぁ。



「──これが魔力ドリンクよ。在庫が少し心もとないわね……。」



こうして研究所へとやって来て、細長い小瓶を見せてきた。


大量の箱が部屋に置かれてるけど、これで在庫が少ないって……心配性過ぎる。



「全部が魔力ドリンクなわけないでしょうが!でもコーキラとあんたで分ける必要性が出てくるなら、もう少しストックしておきたいのも事実なのよ。」



「まぁ単純に考えて、消費量が2倍になるわけだからな。」



「それなら、調達と検証を同時に行ってしまおうか。」



「どういうことですか?」



コーキラの問いにヴラヴィは腕を組み目を閉じる。



「ふっふー……ナギトが魔力ドリンクを服用した状態で仕事をするというわけだよ。これなら2つの要件を同時にこなせる。」



「それなら、ついでに他の仕事も頼みたいわね。」



「一応聞くけど、そこに俺の意思は?」



「ないに決まってるじゃない。」



ですよねー。


でも色々してもらいっぱなしなのも悪いし、お礼も兼ねてここはしっかり働きますか!



「で、俺は何をすればいいんだ?」



「えっと……。」



マギサがガサゴソと資料の山を漁る。



「……これね。海辺の方に遺跡があるのよ。その辺りで採れるものをいくつか……リストにするから、採ってきてちょうだい。」



「あいよ。前の仕事と似たような感じだな。」



前はイサジのせいでちょっと大変なことになったけど……。


とにかく、これがパワーアップするための試練ってことだな!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ