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この世界はバグとフラグで出来ている  作者: 金屋周
第4章 魔法の国
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4-9 世界最強からの依頼

結局、あの子はなんだったんだろう……?


船を下りながら俺は首を傾げていた。


あれから何回も船の中を捜しに歩いたけれど、アカリという少女を見つけることは出来なかった。召使いの人に尋ねてみたけど、俺たちの貸し切りとして船は用意されていたみたいで、他の誰かが乗ってることはないそうだ。



「ナギト……?どうかしたの?」



まさか……本当に幽霊だったとか……?


そうかもしれないな。転生した後も人間であると誰が決めたのであろうか?転生して幽霊になり、第2の人生を過ごしている……なんて可能性も否定出来ない。


狭い視野で物事を決めつけてはいけないのだ。



「ねぇナギト?大丈夫?」



「わっ!」



気が付いたらゆりりんの顔のアップが目の前にあって、めっちゃ驚いて声を上げてしまった。


いけない……考え事に集中し過ぎていたみたいだ。



「だ、大丈夫だ。なんでもない。」



「そう?ならいいんだけど……。」



女の子に心配させてしまうとは、紳士失格だな。うん。自分が紳士であると思えないけど。



「──ようこそ。マギア国へ。」



そうこうしているうちに、背の高い女性──ヴラヴィがやって来た。



「あ、船は適当なトコに片しておいて。」



「かしこまりました。」



サラッと召使いの人たちに言いつけて、豪華客船は再び出港していった。見るからに高い船の様子も見ないで動かすなんて、やっぱ凄いな。感性とか色々と。



「さて、はじめましてだね。私はヴラヴィ。君たちを招待した者だ。お会い出来て光栄だよ、ゆりりんさん。」



「はじめまして。こちらこそ。」



2人は握手を交わす。



「フフッ……噂に違わぬ人のようだね。」



「噂……ですか?」



ヴラヴィは手をひらひらと横に振った。



「なんでもないよ。それより、敬語とかは止してくれ。君たちとは対等でありたいんだ。むしろ、私が敬語を使うべきというか……ともかく、友人と話すように自然体でいてほしいな。」



「はい……あ、うん。分かったわ。」



ヴラヴィはゆりりんに微笑んだ後、俺の方を向いた。



「また会えたね。君たちなら来てくれると思っていたよ。」



「あぁ……うん。こうなるってこと、分かってたのか?」



この質問に彼女は「まさか。」と肩をすくめた。



「偶然だよ。ゆりりんに手紙を出したのは、君たちに会う前のことだよ。ナギト、ロート。」



まぁ……そうだよな。


だからこそ、先見の明というか、何か特別な力でも持ってるんじゃないかって思ってるわけだが。でも世界最強なわけだし、未来を見ることだって出来る……のかもしれない。



「ここで立ち話もなんだから、ついて来てくれ。君たちを歓迎したいという気持ちも勿論あるし……まぁ来てくれ。詳しくは着いてから話そう。」



重要な話がある……ってことかな。



「なぁ……知り合い、だったのか?」



道中、ダイチがそう尋ねてきた。



「まぁな。ほら、俺がその……中学生くらいの女の子と一緒にいた時にな。」



「なるほどな。ところで、その子はどうしたんだ?」



「……元気にやってるよ。」



こっそり部屋に住ませています。なんて言えないしなぁ……こう言って誤魔化すしかない。



「……そうか。」



ダイチは何か察したような表情でしんみりと頷いた。


死んだわけじゃないからな?勝手に悪い方向に察しないでくれ。察せてないけど。



「さぁ、着いたよ。」



到着した町はなんというか……カラフル?


カノナス城下町のようなザ・西洋って感じの町じゃなくて、黄色とか青色とか色々使われた……おもちゃの町って感じだ。



「ここが……えっと……ポリスって町なのか?」



「うん。この国で一番発展している町……言ってしまえば、首都だね。ここにも私の拠点があるんだ。そこで話そう。」



まるで子供が作ったような、そんなカラフルな町中を歩いて行く。


遊園地みたいな空間だな。そんなところで沢山の人たちが暮らしていて……凄い不思議な町だ。ある意味、これまでで一番異世界って思うところだ。



「ここだよ。さっ、入って。」



そんな町中にある普通の家。


その扉をヴラヴィは開けて俺たちを招き入れた。


中はいたって普通……というより簡素な造りだ。景観とのギャップが凄いな。



「ここから大丈夫だろう。では改めて──私がヴラヴィだ。冒険者として活動している。」



キリッとした顔つきになり自己紹介した。



「今回、君たちを呼んだのは手伝ってほしいことがあるからだ。言ってしまえば、人手不足でね。誰でも良いということではなく、君たちのような手練れを……その前に、君たちの情報が先か。失礼。」



というわけでコッチも改めて自己紹介。


考えてみればゆりりんとダイチのことはほとんど知らないだろうし、やっておくのが順当か。



「では、仕切り直して……君たちに協力してほしい件がある。」



ヴラヴィは俺たちの顔を見渡しながら話す。



「内容は魔女の探索。何千年も前から存命し、国全体に魔法をかけている……という噂の持ち主だ。その魔女を見つけてほしい。」



思ったり単純な話だ……。


って思ったけど、そんな簡単じゃないんだろうな。国全体に魔法をかけていて、ずっと生き続けている……しかもヴラヴィが追うような存在だ。



「しかし、あくまで噂なのだろう?どうして他の人たちに応援を頼んでまで捜す必要があるんだ?」



「あっ確かに。」



噂の持ち主って言ったもんな。まぁ噂が立つってことは、少なからず当たってるってことなんだろうけど。そこまでして見つけにいく価値があるのかって話だ。話を聞く感じ、実害があるってわけでもなさそうだし。



「うん。その点なんだけど……それは国からの依頼だから、ってことで納得してくれないかな?」



ヴラヴィは困ったように笑った。



「上から聞き出せたことは、何でも神からのお告げがあったとかなんとか……よく分からない話なんだ。」



「へ、へぇ~……。」



神からのお告げ……まさかシメアが?


いや……もしそうだったなら、俺たちに何か言ってくれても良いはずだし、きっと変な宗教とかの話だな。うん。



「ともかく、4人には魔女捜しに協力してほしい。何しろ、この国のどこかにいるってことしか分かっていないからね。人手はいくらあっても足りないんだ。そして出来れば9日までに終わらせたい。」



「9月9日に何かあるのか?」



「私の生誕祭が行われるんだ。その時は国もまともに機能しないだろうし、そこを狙われると不味い。」



国全体のレベルで誕生パーティーをやるってことか。


ホント……凄い。もうそれしか感想が出てこない。



「分かった。」とダイチが頷く。



「そこを期限として行動すればいいんだな?」



「そういうことだね。この地図に私が調べたところはマークがしてあるから、これを参考に行動してくれ。それじゃ悪いけど頼んだよ。」



「ヴラヴィはどうするんだ?」



地図をダイチに渡すといそいそと出て行こうとする彼女に俺は声を掛ける。



「他の人たち……つまり冒険者たちに同じ依頼をするんだ。とは言っても、魔女に仮に遭遇出来たとしても戦える者なんて限られているから、捜索だけやってもらうつもりだけど。とにかく、大人数を動かすから、無理はしないでいいよ。それじゃ!」



早口でそれだけ言って、ヴラヴィは家を出て行ってしまった。


……この家の鍵、どうすんだ?


…………。


結局、鍵はそのままにして扉だけ閉めて捜索を開始することにした。



「んで、どっから始めるんだ?」



「待ってくれ。現在地がここだから……隣町との間にある森からにしよう。」



貰った地図を覗き込むと、色んなところにバツ印がしてあった。


沢山調べてあるみたいだけど、結構まばらにやってるんだな。



「ねぇ。ここの近くもそうだけど、どうして町の傍とかはそんなに調べてないのかしら?」



「恐らく、調べやすいからじゃないか?行きづらいところの方が隠れやすいだろうから、そっちの方を優先して調べていたんだと思う。」



なるほど。


俺たち用に近場を残しておいてくれたのか。まぁ俺も隠れるなら人里から離れたところを選ぶだろうし、この近くとかを調べる必要性が薄いってのは分かるな。



「よぉし!それじゃ、やりますか!」



「おー!!」



それから──。


森を歩き回ったり、ドラゴンに乗って上空から見回してみたり、色々とやってみたが見つからないまま時間だけが過ぎていった。



「……この近辺にはいないみないみたいだな。」



その日の夜。


町の食堂で作戦会議という名の夕食。俺たちの他にもヴラヴィに頼まれたであろう冒険者が沢山いる。ここに沢山いるってことは、誰も見つけられなかったってことだよな。



「大体、魔女がどんな見た目かもわからないのに見つけようだなんて……まずそこがおかしいと思う。」



「だよなぁ……。」



ロートの愚痴に俺も頷く。


難易度が高いというか、雲をつかむような話だよな、コレ。魔女がどんな容姿なのかも、そもそも定住先を持っているかも分からないんだ。


普通だったら諦めるような話だけど、ここまで大人数で捜査を続けるってことは、少なからずヴラヴィは神のお告げとやらを信じてるってことだ。多分、国のお偉方を信じてるっていうよりは、念のためにって気持ちが強いんだろうけど。



「でも私たちを頼ってくれたんだから、しっかり頑張って成果を上げたいわね。」



「そうだけど……正直、面倒な話……。」



ロートはそう言ってため息を吐いた。


アテもなく彷徨うなもんだから、精神的な疲労もくる。まだ1日目だけど、こんなのが何日も続いたらイヤになってくるな。



「けど、今日の俺たちの成果と他の人たちの成果を合わせれば、捜してない箇所は限られてくる。そうすればいずれ魔女のいるところが……。」



「魔女を捜してるの?だったら魔法で隠された、それっぽいところがあったよ。」



「えっ?」



声のした方を向くと、いつの間にか俺のすぐ近くに少女が立っていた。


こんなに近くにいるのに、全然気付かなかった……。


っていうか……。



「アカリっ!?」

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