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この世界はバグとフラグで出来ている  作者: 金屋周
第4章 魔法の国
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4-1 空を渡って

「どうしたんですか?私は忙しいので、用がないなら退室してください?」



何故か2人になっていた大臣おっさんが同時にそう言った。というかセリフだけじゃなくて、仕草やら何やらまで全部一致した動きを見せる。気持ち悪っ!


……というか勢いというか、無計画でここまで乗り込んできてしまったけど、なんて言えば良いんだ?この子が神様ですって言っても、絶対に信じてもらえないだろうし……。



「クレーマ大臣。お願いがあります。」



悩んでいると神様が喋り出した。



「とあることを調べるために、ナギトさんとロートさんに協力してほしいのです。ですので、お2人を数日間お借りしてもよろしいでしょうか?」



「なるほど……ところで、失礼ながらあなたは?」



そりゃあそうだ。


急に中学生くらいの女の子にそう言われたって、おかしいとか怪しいって思うわな。



「私は…………シメアと申します。詳しいことは言えませんが、私の身体にはとある呪いがかかっているのです。」



まぁ……嘘ではないかな?バグも呪いも当人にとっては似たようなもんだろうし。それと神様、シメアって名前だったのか。


大臣おっさんはメガネをクイと押して、己の顎をさする。



「そうですか……護衛が欲しい、ということですね。それなら良いですよ。それで、どこまで行くのですか?」



おっ。意外と理解がいいな。


どんな難癖つけたり嫌味を言ってくるかと思ってたから、素直に頷いたことに驚きだ。



「海を越えた先──マギア国まで行きます。」



「随分と遠くですね。でもまぁロートさんが一緒なら大丈夫でしょう。」



俺は?



「それでは、2人はしばらく出張ということにしておきます。」



「はい。ありがとうございます。」



神様──シメアは深々と頭を下げた。



「それでは失礼致します。」



大臣おっさんの部屋を出ると早速質問する。



「マギア国って?」



「はい。このカノナス国が武器や道具に優れた国とするなら、マギア国は魔法に長けた国です。」



魔法の国かぁ……。


そうか。異世界だもんな。魔法があって当たり前なんだな、やっぱ。そういう存在が身近にいないからないもんだと思ってた。



「そこの魔法使いの人に調べてもらうってこと?」



ロートの問いかけに神様は頷いた。



「はい。とは言っても、誰に調べてもらうかは既に決めているのです。」



そういや、アテがあるって言ってたな。



「それと今の私についてですが、この世界の神であることは出来れば内緒にしておきたいのです。宗教があるわけでもないので、存在を認知されていることはないのですが、干渉は避けたいので。ですので、私のことは一般人だと思い、普通に接してください。」



「了解だ。」



それを聞いて安心した。


神様ってことは分かっていたけど、見た目のせいでどう接して良いか分からないというか、困ってたんだよな。少女に敬語で話す騎士団って絵面は、周りから見たら中々異様なものだろうしな。



「フッ……では準備が出来次第、出発といこうか……!我がクリムゾン・ドラゴンで移動も楽勝だろうからな……大船に乗ったつもりで安心すると良い……!」



「ありがとうございます。それでは一つ。お願いがあるのですが……。」



「どうした?」



仮にも神様からのお願いだ。


俺たちでちゃんと解決出来るだろうか……?



「とても暑いので、早く着替えたいです。」



「あっはい。」



黒いロングコートを着てるから、暑いのかなって思ったりもしたけど神様だから平気かと思ったりもして、でも結局のところ暑いんかい。



「あーでも今、金欠だから新しい服を買う余裕はないんだ。ロート、神……シメアに着せられそうなの持ってるかな?」



夏祭りで疲れた後にストレス発散と称して高い料理を食べたり、夏休みだからと新しいマンガやラノベを買い漁ったりしたからなぁ……俺たち2人いるからと調子に乗って散財し過ぎた。流石に反省。



「私の……まぁうん。あると思う。ちなみに他にアテは?」



「ない。敢えて言うなら、ゆりりんくらいだ。でもゆりりんの方が背が高いし、余計にサイズが合わないんじゃないか?」



他に服を貸してくれと頼めるような女性の知り合いはいない。



「……確かにね……背も……胸も……私の方が小さいし……。」



……ロートもそういうトコ、気にしてたんだな。でも、ゆりりんはモデルみたいな体形してるからなぁ。比べることないと思うんだけど……なんにせよ、ここは聞こえないフリをするのが男として正解か。



「えっ!?ナンダッテ!?」



……変に意識して言おうとした結果、めっちゃ大声で棒読みになってしまった。スマン。



「うるさ……黙れェ!今のは独り言だから聞かなくてヨシ!ホントだから!ホントに独り言だから!!」



「お……おう。」



そこまで必死にならなくても。


返事せずに聞き流した方が良かったか。



「時にナギトさん?ゆりりんさんはいらっしゃいますか?」



ロートの服に着替え終わったシメアがそう尋ねてきた。サイズはやはり合ってなくて、袖や裾を折ってなんとか着ている。ダボダボな感じが子供っぽい。



「ゆりりん?仕事だと思うから……どこにいるかな?誰かに訊いてみないと分かんないけど……どしたの?」



「いえ。もしいるのなら、一緒に来てほしいと思ったのです。ですが、絶対にというわけではないので、別にいいです。」



……気になる言い方というか、不安が感じ取れる言い方だったな。この世界の神様なわけだから、ゆりりんがめっちゃ強いことは知ってるんだろうけど(確か国で一番だっけ)、それだけでついて来てほしかったわけでもなさそうだ。



「それでは、ロートさんのドラゴンに乗って向かいましょう。この世界の地理は頭に入っているので、道案内は任せてください。」



「フッ……ならば背中は預けよう……!ナギト、準備はいいな?」



「ああ。行くか。」



どちらかというと、俺は最初からOKで2人が準備し終わるのを待ってたんだけどなぁ……まぁ別にいいか。なんにせよ出発だ。


魔法の国ってのがどんなトコなのか気になるけど、今回は緊張も大きいな。異世界の暮らしに慣れてきたと思っていたけど、正確にはこの国の暮らしにってだけだったんだ。国が違えば文化も考え方も変わってくるわけで、未知の世界に飛び込むようなものだ。テレビでもあれば情報収集出来たんだけど。



「フハハハハ!出でよ!クリムゾン・ドラゴン!召喚!!」



高らかにドラゴンを召喚し、ロートを先頭に3人で乗る。



「では……行くぞ……!」



「出発だァ!」



数回羽ばたくと、ドラゴンは一気に上空に。想像するだけで怖いけど、この時に振り落とされそうだよな。そして上空までくると体勢を安定させて、そのまま真っ直ぐ飛び始めた。



「東の方向にしばらく進んでください。」



「承知……!」



さてさて、しばらくの間どうやって暇をつぶそうか?


バスとか電車とか少し乗るだけならいいけど、長時間乗るとなるとやっぱお供が欲しくなるよな。音楽とかスマホとか。


でもここにはそれらは何もない。だから必然的にお喋りが始まる。



「そういやシメア、マギア国って外国なんだろ?お金とか言葉とかってどうなるんだ?」



「大丈夫ですよ?この世界は全て、共通の紙幣と言語ですので。」



それは助かるな。まぁ異世界だし、そこまで気にならないというか不思議じゃないか。



「……ところで、なんで日本語なんだ?」



日本人としてはありがたいことだけど、こればっかりは異世界だからでは通じないぞ。



「それは分かりません。この世界の管理者様に訊いてみるしか……。」



管理者?


そういやこの神様、新入りだとかなんとか言ってた気がするな。


あれ?だとしたら、今言った管理者ってのは一体……。



「なぁ……その管理……。」



「時にシメアよ?アテのある魔法使いとは一体どのような存在だ?」



質問したかったけど、ロートに先を越されてしまった。まぁ今訊かないといけないってわけでもないし、また今度にしよう。



「──この世界で最強の魔法使いです。私も情報でしか知らないので詳しくありませんが、不可能が限りなくゼロに近い存在であると言えます。」



この世界で最強……!


マンガやラノベで聞くことの多い言葉だけど、実際に耳にすると印象というか、圧倒感みたいなものがあった。


そっか……ゆりりんは国で一番強いってのを聞いて凄いって思ったけど、今度は世界で一番強い人かぁ……。どんな人なんだろ?



「それで、その人に訊けば解決出来るってことなのか?」



「それは会ってみないと何とも……けれど、どうにかしてくださると思っています。」



凄い自信……というか信頼だ。


そんだけ凄い人なら、大臣おっさんが何故か増えてしまったことも相談してみるか。あんなのが2人もいるなんて鬱陶しくて堪らないから、是非とも解決してもらいたいものだ。



「あ、ロートさん。この辺りで右の方に転換してください。」



「フッ……把握した……!」



右に旋回して髪も風に回るように撫でられ、眼下にキラキラと輝く海が見えてきた。そして遠くの方に大陸が見える。



「あれがマギア国です。」



「へぇ~……ん?全部?」



シメアは頷く。



「はい。あの大陸全てがマギア国です。」



「マジか……。」



よく分かんないけど、大陸にあるのが国一つだけって相当な規模なんじゃないか?俺たちが暮らしているカノナス国はどれくらいの大きさなんだろう?



「ところで、その人がどこにいるのか知ってるのか?」



近づいていくにつれて、その広さが見えてきた。パッと見、自然豊かに見えるけど各地に町や城と見られるものがある。



「……えっと、どこか発展した町にいると思うのですが…………。」



知らないってことか。


まぁ神様だって常に全てを把握出来ているってわけでもないだろうし、仕方ない。まぁこっちにいる間は仕事のことを考えなくていいだろうし、地道に調べていけばいいか。



「では、そろそろ着陸するぞ……!」



ドラゴンは徐行し始め、ゆっくりと高度を下げていく。


ドシン……!


と音を立て、森の中の開けた場所に着陸した。近くに町があるのが見えたから、手始めにそこから調査していこう。



「そういや、その最強の人の名前は?」



聞き込みしていくにしても、名前を聞いておかないとどうしようもないや。



「彼女の名前はヴラヴィ。どんな方かと言われると…………会ってみれば分かると思います。」

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