わたし、マラソン得意なんです。
よろしくお願いします。
昨日私が迷い込んだ競馬場のような場所をぬけ、さらに奥に進むと学校の校舎のような飾り気のない角ばった3階建のような建物と、策で囲われた天井だけある吹きさらしの建物が『闘技場』のようだ。
着いて早々、団長が、王様と宰相様にコソコソと耳打ちをしている。
「聖女様、うちの副団長を紹介したいのですがいいですか?あと、できましたら副団長にもこちらのクーマに乗せてもらってもよろしいですか?」
「かまいませんよ。傷つけられるのは困りますが、皆さん好きにしてください」
やってきた副団長と思われる青年は松葉杖をついているが、サラサラ金髪碧眼の王子様。ちょっとタレ目で目元にホクロがある。
この世界の顔面偏差値はだいぶ高い。
「リアム・クグロフと申します。この様な姿で申し訳ありません。」
「リアムは先日出現した魔獣討伐の時、ちょっと怪我をして休みにしていたんですが今日聖女様が闘技場に来る予定というのをどこからか嗅ぎつけて登城してきたんです。
せっかくなので、こいつにもクーマに乗せてもらえたらと思った次第で。」
「わざわざ来てくれたんですか?
ありがとうございます。お怪我はどんな感じなのですか?座れます?助手席より、後ろの席の方が乗りやすいと思います。とりあえずこの建物の周りでも走りますか?」
さて、今度は宰相様が助手席、団長、副団長が後ろ、王様、リュカはお留守番で闘技場から競馬場改め馬場を1周してみた。
到着後、やっぱり団長は王様と宰相様に耳打ちしてる。
「アンドゥ殿、このクーマというものについて教えてもらってもいいだろうか。
人や、ものを乗せる以外にも人を癒したりする力もあるのか?」
「癒す…んーっと、車を走らせて爽快感はあるから気持ちはいいですね。あと、車でできる事は音楽を聴いたり、あっちの世界ならナビ、道先を案内してくれたり、空調を快適にしてくれるくらいですかね」
「聖女様、実はリアムは足の骨が折れてしまって立つこともままならない状態だったのですが、クーマに乗せてもらってこの通り普通に歩ける様になりました。」
「実はな、昨日、と今朝と、アンドゥ殿とこうして一緒にいる時には感じなかったのだが、クーマに乗ってから私もドノルヴァンも今まで蓄積された疲れがなくなって今までにない体調の良さなのだ。
アンドゥ殿から感じられる魔力と似た魔力をクーマからも感じられるので、何かあるかとは思うのだが、おいおい調べさせてもらっても良いだろうか?」
「よくわかりませんが、とりあえず足の怪我が治ったなら良かったですね。
車を調べるのも構いませんが、先ほど言ったように、傷つけられるのは困ります。
丁寧に扱ってもらえるなら医務室がわりにお使いください」
「助かる。さて、とりあえず当初の予定の体力を測るとするか。我々はそろそろ政務に戻る。後は団長、リュカ任せたぞ」
王様達と別れて、いよいよ闘技場へ。
中には50人くらいの人々が綺麗に整列して待っていてくれた。
「今ここには王族の警護についているもの以外の第2騎士団が並んでいます。これから聖女様とは行動を共にしたりする事も多くあるかと思いますので、そのうち個別に自己紹介する機会もあると思うので割愛させてもらいますね」
「わざわざ集まっていただきありがとうございます。
安藤 遥と申します。これからお世話になります。」
「では、早速今現在の持久力を計らせていただきます。総合的な体力はリュカ殿がお持ちの魔石で測れますが、旅などで必要な持久力は実際走ってもらったり乗馬で計測します。とても疲れるものですので、申し訳ありませんが、頑張りましょう」
団長爽やかだ。でも、わたし、マラソン得意です!
「とりあえず先ほどクーマで走ったコースを走ることはできそうですか?結構あるかと思いますが、立ち止まるまで走り続けていただきます。お一人だとつまらないと思うので、リアムと数名で走っていただきます。
反応能力もと言われましたが、特段問題ないと思うので、やりません。
何かご質問はありますか?」
「だいたい何周走れたら合格ですか?タイムも必要ですか?」
「そうですね。可能であれば1周半ほど止まらずに走れれば合格でしょう。タイムはそれほど重要視していませんが、早いに越したことはありませんね」
さて、誰かと走るなんて久しぶり。しかも一緒に走るのが明らかに鍛えてます!って人ばかりだからちょっとドキドキするけど、やるからには負けたくない。
とりあえず2周目指す!
走り始め気になったのが、副団長の怪我の状態。さすがにさっきまで骨折してましたって聞いたら走って平気なのかが気になる。
そして、数名で走る予定がほぼ全員走ろうとしてないか?
「リアムさん、足の調子はどうですか?痛くないんですか?」
「はい、全く平気です。むしろとても調子が良いです。」
「本当に大丈夫ですか?無理して一緒に走らなくてもいいですからね。」
「いやいや大丈夫です。このコースなら10周はいけます。しかも全団員走るのに私だけ留守番は嫌です」
「このコース皆さんもよく走るのですか?」
「毎朝2周してから訓練に入ります。なので、親しんだ道です」
「ちなみに、どのくらいのペースで2周走りますか?」
「今走ってるよりちょっと早いくらいですかね。聖女様も話しながらこんなに速く走ってて大丈夫ですか?」
「はい。私、マラソン得意なんです。時間がある時はジムでよく走ってましたから。もう少しならペースアップしてもいけると思います。
参考までに、皆さんのいつもの速さで走ってもらってもいいですか?もちろん私は無理しないで遅れていきます。
やっぱり皆さん鍛えてるだけあって速いんでしょうね!負けられませんね!」
リアムさんとの会話を聞いていた数名の騎士がいきなりスピードを上げた。
速い!やっぱり鍛えてる人は加速が違う!
そんなこんなでなんとかペースを守り、2周を走りきった。
幸いなことに周回遅れにならずに済んで良かった。
一番速い人は私が2周目の折り返し辺りでゴールしてたようで、もう少しトレーニングしたら同じくらいにはゴールできるようになるかな。
「聖女様はよく走り込みをされてたとおっしゃってましたが、すごいですね。予想以上でした。これだけ速く距離も走れれば、有事の際には安全なエリアまで逃げて頂くことも可能ですね。とても助かります。」
「えっ、旅の体力って逃走の体力ってこと?!
てっきり馬車だ、登山だなんだで、疲れて進めないっていうのが困るからの体力測定だと思ってた。」
「それも大切ですが、基本は馬車で行きますし、ほぼ道のりも整備されているので長距離を歩くこともあまりありませんよ。
ただ、穢れが濃い場所は盗賊がいたり、治安も必然的に悪くなるので、最悪な場合を想定する事も大切なんです」
やっぱり治安が悪いのかぁ、盗賊って最悪命に関わるよね。思ったより危険な旅なんじゃないか?危険はないって言ってたけどやっぱり不安が大きくなる。でも旅する事は決定事項だからもうちょい鍛えて備えよう…。それこそ剣でも教えてもらった方がいいかな。
その日の晩餐で不安だからトレーニングがしたい事と、何か身を守る術を教えてもらいたい事を王様に伝えたら、明日からまた団長たちに面倒見てもらう事になった。
余談だが、副団長の骨折は本当に跡形もなく治っていて、通常の訓練も余裕で参加したようだ。
お腹いっぱい食べて体を動かして適度に疲れた事もあり、お風呂に入っていると湯船でウトウトしてくる。
明日寝坊する気がするので、ベットに入る前に携帯のアラームをセットしようとバックから取り出し、ホーム画面に見知らぬアプリがインストールされている事に気付いた。
【ステータス】【鑑定】【ミニー】【女神の息吹】【第三の眼】
サクサク進まなくてすみません…。
亀ストーリーですが、頑張っていきます!




