旅立ち
王様にラシルと武蔵に話したように、今の自分の思いを包み隠さず伝えた。
王様も宰相様も、国民の事を思えば少しでも早く浄化の旅を本格的に行いたかったようだが、今回の様に、罠が仕掛けられている可能性が高まった事で、予定の変更を考えていた様だ。
「アンドゥ殿自ら行きたいと声を上げてくれた事、とても感謝している。が、しかし、報告であったが、今後の進路に想定外の危険が潜んでいる可能性が高くなったと聞くが、せめて残りの祠の調査を先遣隊に任せて報告を待つことはできぬか?」
先の戦いで天使だなんだが出てきたのがやはりネックになっているようだ。
でも、待つことは得策ではないように思い、私の意思は変わらない。
「皆様が私の心の準備や、この世界に慣れるために時間をかけてくれていた事は分かっています。でも、今回少しの距離でしたが王都から離れただけで空気の質が違う事に気付かされました。
私では周辺を浄化する事は出来なくても、私の車なら多少は周辺の浄化に役立つかもと考えてしまったら、すぐにでも出かけて行きたいと思ったんです。
皆さんの考えの邪魔をする気はありません。ですが、私の気持ちを伝えたくて無理を言って時間を作ってもらいました」
「そんな事は気にせんでよい。むしろそのようにこの世界の事に心を砕いてくれている事に改めて感謝を申したい。
アンドゥ殿の決意は固いようだが本当に良いのか?」
「はい。私がそうしたいんです。この世界にいきなり紛れ込んだ私によくしてくれた人達が住む世界ですから」
そう言うと王様の眉がへにょりとわずかに下がった。一国の王のその表情は、王というより、父親のようだった。
ちょっと嬉しいけれど困った顔。小さいときよく自分の親にも同じような顔をさせてたなと少しだけ…ほんの少し苦笑してしまった。
「はぁ…助けられているのは此方だと言うのに…。
アンドゥ殿の遠征の許可を出す。しかし、出発は二週間後。それまではしっかり休む事。良いな?」
聞き分けのない子に渋々折れたような様子がこれまた苦笑を誘う。
「ありがとうございます。」
思わずこっちも眉を下げて苦笑いだ。
「決まりましたね。
父上、私の言った通りになりましたね。賭けは私の勝ち、約束は守ってもらいますよ」
執務室のもう一つのドアからニコニコと機嫌のよさそうなリュカとエマが現れた。
いきなり現れたのにもビックリしたが、「賭け」ってなんだ?という気持ちが強い。若干ボーゼンと現れた二人を見てしまうのもしょうがないだろう。
「フフっハルカびっくりした?急に現れてごめんね」
「ハルカさんが行動を起こしてくれたおかげで私もやっとお手伝いをする事が出来るようになりました」
「僕たちは別働隊になるけれどハルカの遠征の手助けが出来るように頑張るからよろしくね!
旅のついでに地方の悪徳代官を一緒に成敗しよ!」
小さくファイティングポーズするこの姉弟が頼もしくこちらもつられて笑顔になる。
「なにそれ〜時代劇ハマりすぎだよー」
「だってかっこいいじゃない。身分を隠して周辺諸国を渡り歩いて悪を断つ!」
よし、各地の悪徳代官でも成敗しますか!
今後の展開も少し考えてますが、とりあえず完結します。
また手直ししたり、続編作ったりしたいと思っています。
拙い作品でしたが、読んでいただきありがとうございました。




