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フランスにいくはずが…… 。  作者: カモネギ
17/32

暇な毎日…。

よろしくお願いします。

 



 ついに定職を見つけた!…と喜んでいたが、通訳の仕事はたまにしかない様で、特にやる事がない…

 …。


 未だ雪解けが遅い地域には行くこともできず、日々やる事がない……。



 とにかくやる事がなく、日々朝のジョギングと護身術を習う以外時間を持て余してしまっていて、元の世界でキッチリ、むしろ残業漬けの日々を送っていた身としては時間が有り余っている今の現状が許せなく、何か無いものか考えを巡らせる日々……。



 最近は部屋でジッとしてるのも飽きて、ユノアに護身術を習った後、フランさんに魔術も教えてもらっている。


 リュカが、以前診てくれたら、聖属性魔法、光属性魔法、風属性魔法、水属性魔法、火属性魔法が使えると言っていたので、フランさんと同じ風属性魔法を習いはじめている。


 シシリーにも身体から流れ出る魔力の押さえ方につづき、魔力循環も教えてもらって日々特訓していたので、そろそろ魔法を使う練習をしても良いと言う事になり、一番扱いやすい『周囲に風を巻き起こす』という魔法を練習している。


 ある日、風を操るのに手こずっていたら、自然の突風が起き、鳥の羽ばたきにビックリし、空を見上げた瞬間…視線の先、上空から一筋の雫が落ちてきたのが視界に入った。


 ぶつかる!と、身体が硬直した瞬間私の身体から金色の光が溢れ、ドーム状の膜になった。

 鳥の落とした雫はドームにペチョリと落ち、難を逃れた。


 初めての【シールド】にビックリしたものの、実戦で使えそうだと思っていたシールドが展開できた事に希望が持てた。

今後はフランさんとリュカが、風魔法とシールドを自分の意思で展開する練習などに付き合ってくれるそうだ。


 その後、【ステータス】でシールドの可能性が広がった事と、地味にレベルが上がっていた事を知った。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

【ステータス】

 氏名 : 安藤 遥 / アンドウ ハルカ Lv59

 状態 : 絶好調

 性別 : 女性

 年齢 : 28歳

 所属 : バルダイア

 属性 :《 聖属性魔法》《光属性魔法》《風属性魔法》《水属性魔法》《火属性魔法》


【スキル 】

 《浄化・吸収》…対象に触れる及び狙撃する事で効力が発揮する。

 《祝福》…―――

 《シールドA》…ブロック。瞬間的に発動。


【オリジナルスキル 】《 言語転換》


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー








 昼食も食べ、いつもの何もやる事がない時間……。

 あ、護身術や、魔法の鍛錬などは、一日中何時間もやるものではなく、短期集中でやるのが好ましく、午後も練習する事は禁止されてしまった。

怪我の元らしい…。学生の時よく言われたなぁ……。


 やることもないため、ぶらぶらと城内を散策していたら、紙の束を抱え、疲れ切った様にトボトボと歩くリアムに遭遇。


 いつもムダに爽やかなこの青年がなぜここまで見るからにやつれているのか不思議になり声をかけた。


「なんかあったの?この前の遠征に付き合ってもらった時は元気そうだったのに、体調でも崩しちゃった?」


「あ、ハルカ…お久しぶりです。体調は…ただの寝不足だから心配ないよ…。最近騎士団所属の文官が、次々風邪をひいたらしく、事務処理もやらなくてはいけなくなって寝れてないだけだから…」


 次々風邪ってインフルエンザとかじゃないよね?そういえば、この国の人達ってマスクとかしてないけど、それで感染とかしてるんじゃないの?


「その事務処理って専門知識とかいる?私で手伝えるようなら手伝うよ!」


「いいのか?……助かる。正直、うちの団員が代わりに書類作成してるんだが、計算ミスや、誤字脱字がひどくて、全く進まないんだ…」




 闘技場に隣接している三階建ての角ばった建物が騎士団本部で、騎士団総長と、各団の団長、副団長の執務室に会議室、文官の事務室があるそうだ。


 リアムの執務室に入り、書類作成のお手伝いをする事になった。


 部屋は思ったより広く整理整頓され、大きな執務机と、応接セットが設えられていた。執務机の横の壁に、もう一部屋あり、そこはユニットバスが完備された仮眠室らしい。


 急だった為、応接セットに書類を広げ、作業開始。

 とりあえず山になっている未訂正の書類を分類していく。

 ●単純な計算ミス

 ●担当者のサインがないもの

 ●物品購入に関する依頼書…防具、武器、消耗品…同じ項目でも書き方がバラバラで見にくい。

 ●各団への依頼書…これもフォーマットがバラバラで見にくい。

 ●各種要望書…ミニーに乗りたいって書いてるヤツがいた…。


 とりあえず、担当者サインの無いものは、該当騎士ごとに仕分けておく。


 各依頼書は大まかな種類ごとに雛形を作り、それに沿って書き直していたが、コピー機が欲しいと呟いたらリアムが聞こえていたようで、【転写】という魔法があると教えてくれた。

【転写】とは、まっさらな紙束の一番上に、コピーしたい原本を乗せ、発動すると、まっさらな紙にも原本と同じものが一瞬で描かれる。主に、瓦版などを作るときに使用されるらしい。

 だったら、という事で、雛形を書き込み式にして空欄に該当の項目や、数量、担当者サインを埋める様に作り変え、リアムに大量のコピーをしてもらった。

おかげで書類作成はサクサク進んでいく。


 各書類を提出期限の近い順に仕分けながら未訂正書類を捌いていく。


 こういったコツコツやる仕事、結構好き。

とりあえず貰い受けていた山二つ分の書類を捌いてリアムに持っていく。

リアムは難しい案件だけ持っているから、書類を見つめる横顔はいつになくキリリと険しい。


「とりあえずもらった分終わったけど、他にできそうなものある?」


「もう終わったのか?早いな…。さっきの書類の雛形といい、計算速度といい、ハルカは元の世界で文官の様な事もしていたのか?」


「文官っていうか、普通に毎日仕事していたから書類作成は得意だよ。こっちに来て久しぶりに仕事らしい仕事できたなって思えたよ、ありがとう」


「なら、これからも手伝ってくれないか?」


「もちろんいいわよ」


 それから風邪でダウンしている文官が復帰するまで毎日リアムの執務室で事務仕事を手伝う事になった。

 翌日にはリアムの執務机に向き合う形で私の席が作られていた。


 文官が復帰後、雛形の存在がとても役立った様で、正式に王様から各部署の雛形作成の依頼が来て、暇だった毎日が一変、それなりに忙しい日々になり、充実したものになった。


 リアムとも毎日顔を付き合わせて仕事していたから、今までちょっと緊張たりしてたのも無くなり、自然体で接することができるようになった。


 だってね。やっぱりカッコイイ男の人と接するのってどこか力が入っちゃうよね。でもねここ数日、正面を見ればドキリとするような真剣なリアムの顔。

 でも、コーヒーより紅茶派で、しかもねこ舌だとか、書き損じた書類を丸めてゴミ箱に投げるのが上手いとか、ちっちゃい事だけど、可愛らしい一面も見えて、近親感が湧いてきて…。


 リアムも最初から言葉こそ砕けたものだったが、若干感じていた遠慮も今ではなくなり、遠慮なく軽口を叩いてくるようになった。それがとても嬉しい。


 リアムの執務室に毎日いる事で、第2騎士団の団員とも今まで以上に仲良くなれたし、他の団の人達とも交流を持てるようになった。

 今では書類を持ってくるついでに城下で流行っているお菓子を差し入れてくれる人もかなり増えて、お菓子休憩も日課になった。


 リアムも甘いものが好きだったようで、差し入れが被り、大量の焼き菓子が目の前に並んだ時も、平然と平らげていた。

 甘いものを食べるイメージがなかったからつい、自分でも買いに行くのかと聞いてしまったら、そういうお店は入るのが恥ずかしいから買いにはいかないそうだ。


 なんだその可愛い理由……。


 で、恥ずかしくて買いに行けないから一緒に行く事になり………。


どうしてこうなった………。……。




ここまでお読みいただきありがとうございました。

次話は明日の夜になります。

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