遠足前ってワクワクするよね
よろしくお願いします。
ついに明日クルートへ旅立つ。
同行者は第2騎士団からリアムとアンディーとユノアージュ。
第2魔術師団からアドルとフランチェスコ。
そして、リュカ。
リュカは来ちゃダメなやつじゃないの?王族だよね?
「えっ?リュカも行くの?」
「そうだよー。ハルカと一番の仲良しだもん!ずっと一緒だよ!」
「少数精鋭で行くとなると、リュカの魔力は役に立つ。ハルカの一番の仲良しと言うのは聞き捨てならないが、実力は申し分ない」
「はぁ、そうですか…。リュカがいいならいいんだけどね。」
「ハルカ、後のメンバーを紹介しよう。
右から第2騎士団のアンディー、ユノアージュ。
第2魔術師団のアドル、フランチェスコだ」
全体的に皆さん大柄。唯一リュカだけ目線が近い。
魔術師ってもっとなよっとしてるもんかと思っていたけど、アドルさんなんてローブ着ていなければ騎士かと思う。
出発前に確認・練習する事がある。
それは、アプリ、【第三の眼】。
バーチャルアシスタント のリリが教えてくれたソレは、弟のプレゼントに用意していたドローンだった。
おもちゃおもちゃしていない、ちょっと本格的なもの。ちゃんとカメラの映像も鮮明。コントローラーにスマホを接続して、映像を見ながら操作したり、スマホで直接操作することができる、販売員のお兄さんオススメの一品だ。
操作もスマホでワンタッチでできるので、初心者にもオススメと言われているが、弟と違って私は機械の操作が苦手。もし、旅に出るのに使えそうであれば練習しなくてはと思い今日、持参して来た。
まず、本体にバッテリーを取り付ける。
リリ曰く、地球から持って来ている機械のバッテリーや、電池もミニーと同じで自動的に穢れを吸収してエネルギーに変換しているらしい。
スマホで起動させ、上昇させていく。旋回など、進行方向を変えるときはスマホを行かせたい方へ傾ければいい。操作性はとても簡単。映し出されている映像もとても綺麗。
どんどん上昇させ、シシリーの森が遠くまで広がっている様がスマホに映し出される。
画面上に赤い点が3個映し出され、画面の下にテロップで『鹿の魔獣』と出てきた。その内一頭が真っ直ぐこちらに向かってきているようだ。
「リュカ!シシリーの森から鹿の魔獣っていうのが一頭こっちに近づいてきてるみたい」
「この赤いのだね?このままいけば、10分くらいでここまで来れそうだね。どうする?姿を見てみる?見たくなければ僕が倒してくるよ?」
「魔物を見てみたい。でも危険じゃないかな?」
これから向き合わなければならない相手なら、どんなものか自分の目でみて確かめたい。
「大丈夫だよ。どんなに穢れで大きく膨らんでいても、ここには各団からトップの実力者が揃ってるんだからハルカを危ない目にあわせる事は無いよ」
「ありがとう…」
そして、広場の先から現れたのは真っ黒なモヤのような蠢くなにかを纏った四足歩行の何か。かろうじて大きなツノが鹿だった事を伺わせる。
ソレはゆっくりとこちらに近づき、頭を下げ、おもむろに座り込んで何かを待っているように動かなくなった。
『ハルカ、この子に触れてあげてくれる?今は穢れてこんな姿になってるけど、この森のボクの友人なんだ。大丈夫。彼にハルカを傷つける気は無いよ』
いつの間にか隣に来ていたシシリーが私の手を取って鹿の魔物へ近づいていく。
私達が、近づくにつれ、鹿も足をたたみ蹲った。
あと一歩で鹿に触れられる距離まで来て、足を止めると、鹿も頭を上げ、見つめてきた。その目は想像していたものと違い、私のよく知るツヤツヤした黒い大きな瞳。
『彼に害意はないよ。瞳の穢れが無くなって力が戻ってる。触れてあげて…』
促されて右手を鹿へゆっくり差し出す。
その手に鹿の鼻先が触れた……ぞわぞわした感覚と髪を引っ張られる様な感じがする。
鹿に触れた瞬間はとても冷たいと思ったが、それは一瞬で、すぐに私が知る毛皮の手触りに変わった。
目の前では大きな黒い塊が、金色に淡く光、瞬く間に小さく鹿の形を成していく…。
『ありがとう。もう彼は救われた。でも森にはまだ彼の家族が、ハルカを待っているって言ってる…。救ってくれる?』
「もちろんだよ!シシリー、このまま手を繋いで一緒に行ってくれる?」
シシリーの小さな手がとても力強く、今は離したくない。
その後、家族と思わしき雌鹿と少し小さな子鹿がゆっくりと森からやって来て、先ほどの雄鹿と同じ様に私が触れやすい様に伏してくれた。
「良かった。これで元通りになったんだよね?シシリーは彼らと言葉が交わせるの?」
『森に生きる命あるもの全てと思いを交わすことができるよ。彼らはボクと一緒にこの森の穢れを引き受けていてくれていたんだけど、ボクが浄化された事と、森が少しづつ浄化されているのに気付いて森から出てきたんたって。そしたら空に金色に輝く不思議な物が飛んできて、それを追いかけて来たら金色のハルカが居たんだってさ』
「ねぇ、もしかして、魔獣っていうのはみんな戦闘意識があるわけじゃ無い?」
『んと、たぶんハルカ以外には向かって来ちゃうかも。ボクもそうだったけど、今思えばハルカが近くにいてくれていたからマッテアへの攻撃的な思いが抑えられたんだよね』
「そうだったんだ。それじゃこれからの旅で私が近づけば魔獣は浄化させてくれるかな?」
『大丈夫だよ。なんだったらボクに撃ったようにすればいいんじゃないかな?』
「そだねー。よし、やれる気がして来た!シシリー、ありがとう!」
すぐに守れるように近くで警戒してくれていたリアム達もホッとしたようだった。
「随分髪が伸びたね。ハルカの本当の髪は黒だったんだな」
「あー、ホント、すごく長くなった。これどうしよう……」
「長いのも似合うと思うよ」
ひゃー。リアムの甘い笑顔は心臓に悪い。
今の私は穢れを直接吸い込んだおかげで肩下くらいだった髪が、一気にお尻の下辺りまで伸びていた。長さ的にシシリーとお揃いだね。
明日、クルートへ行くにあたって、魔獣への対応作ができたのはとても喜ばしい。しかし、魔獣は良いとして、魔物は核になる生物がない、純粋な穢れでできているので大人しくなる事は無いだろういう事だった。
「今まで魔物を倒すにはどうしていたの?」
「教会で清められた武器で霧散させる事しか出来ない。奴らは固まった形が無ければそれほど脅威では無いから…」
「そっか、でも、なんか安心した!とりあえず私の敵は魔物ってことだね!」
そうと分かれば、早速、BB弾にスキルを籠めて明日に備えよう!
部屋に戻り、夕食前にアンナにお願い。
「髪が伸びちゃったんだけど、切ってもらえるかな?」
「もちろんお切りしますが、宜しければ切った髪を私に頂けませんか?私の夫は魔術師団で研究職を致してます。もし、ハルカ様の切った髪にも浄化の力があるのでしたら今後ハルカ様の助けになるのではと思うのですが…」
「アンナさん結婚してたの?もちろん切った髪は捨てるもんだと思ってたから再利用できるならありがたいよ!色々考えててくれてありがとう」
アンナさんの手によって肩上までバッサリ切ってもらった。この世界では基本みんな腰くらいまで髪を伸ばす風習があるようで、随分揉めた。でもこれから動き回るのに長い髪は私にとって危険だと言ったら渋々了承してくれた。切った後、サラサラストレートのオカッパが、思ったより魅力的に映ったようで、気に入ってくれてた。なによりだ。
オカッパだが、アンナさんにわがまま言って少し前下がりにしてもらった。ぱっつんオカッパはさすがに抵抗があったからね…!
夕食の席でもみんなにストレートのオカッパ頭は衝撃を与えたが、まずまず好評でした。
いよいよ明日、この世界に来て初めての遠出、クルートへ出発します!!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字訂正しました。教えてくださってありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!




