03 学院修技場
開いた扉の一つからは艶のある銀髪の眼帯の少女アルルが現れ、横目でセナ達の方を見ると近くの柱に背中を預け、瞼を閉じる。
そして、同じ扉から丸眼鏡を掛けた黒髪長髪の壮年男性テイラーが現れる。
「ちっ…」
テイラーはアルルの顔を見ると舌打ちする。
もう一つの扉からは血に塗れた鈍色を帯びた金の短い髪の少年が何かを引き摺って現れた。
引き摺られていたものは罅割れた眼鏡を掛けた青年男子、チェイサー・クロードだった。クロードの羽織っているコートには血がべっとりとついて膠のようになっていた。
グラツとテイラーはその光景に何の反応も見せず、状況を静観する。
「見世物じゃねえぞ」
鈍色を帯びた金の短い髪の少年、ドルフ・アニエストは扉に入る前とは雰囲気も口調も違っていた。
アニエストはクロードを投げ放つとクロードは地に伏せて身動きしない。
アニエストの右手に魔法陣が現れ、魔法陣は風へと変わる。
風は手の周りで渦巻き、風が別の魔法陣を形作ると魔法陣は炎となり、炎を纏った風となる。
「やれやれ…」
クロードはのそっと立ち上がるとクロードの首は有らぬ方向に曲がっていた。
「失礼」
クロードは指先一つで頭を正常な位置へと戻し、人指し指を立ててくるりと回す。
するとアニエストの身体が納まるように黒い輪が縦に並ぶように現れる。そして、輪が一瞬にして収縮し、アニエストを拘束するとアニエストが手に纏っていた魔法が消える。
「あの補佐官、クランチャイスだったのか」
「クランチャイス?」
クルスの言葉にセナが訊ねる。
「クランチャイスは錬魔術師ドォリーの創った魔動人形シリーズの一つで錬金術で造られた素体に魔技が使える程の魔核を埋め込んだ人形だ」
「やけに詳しいね」
「親の仕事の関係上、色々とね…でも、教師が人形だったとはな」
「人形でも、クロードはあくまでもアルベルトの補佐だもの問題ないわよ」
クルスの言葉にテイラーが答えた。
「まさかドォリーの作品を知っている者がいるとはね。貴方、名前は?」
「クルス・シリアル」
「あぁ、なるほどね。あの商貴族の子息ね」
テイラーは納得したように言う。
「畜生、解放しやがれ!」
アニエストは藻掻いて地に倒れる。
「で、何があった?」
グラツはクロードに問い掛ける。
「彼が本性を現して、私を殺した」
「何だと、ゴルティアの王子が何故」
「彼はゴルティア共和国の第三王子ドルフ・アニエストではなかった…というのも入学時の検査で引っ掛かるところがありましたので特選を利用させていただきました」
「そう、それで正体が分かっていたの」
「それはこれから…だから、君達は寮へ帰りなさい」
クロードはセナ、クルス、アルルに向けて言う。
アルルは閉じていた瞼を開け、無言で修技場から出ていった。
「俺達も行こう」
クルスがそう言うとセナはクルスの後に続いて、修技場の出口に向かう。
セナは偽物の王子、ドルフ・アニエストの前を通り過ぎる際、横目でチラリと見て何かを確認すると修技場から出ていった。
最後のセナが出ていくのを確認するとテイラーが口を開く。
「私は遠慮するわね」
「そうですね、敗者には休息が必要ですから」
「貴方に言われたかないわよ」
テイラーは毒気のない言葉を吐き、修技場から出ていった。
「アルベルトはどうされますか?」
「俺はそいつの正体を見届ける」
「そうですか、では…」
クロードは偽物の王子に手を翳すと拘束する輪に術式が現れる。




