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02 学院修技場sideA


アルル・スカーレット、ドルフ・アニエスト、アマギ・セナは三人は学院内東にある修技場に連れてこられていた。


修技場は円形の建物で幾つもの扉を壁に配している。


「教師チェイサー、此処で何を」


鈍色帯びた金の短い髪の少年がクロードに訊ねる。


「それは後ほど、それよりアニエスト君、魔法属性は?」


「火と風ですが」


「ゴルティアに代々継承される王の属性ですね、スカーレット君は?」


「水です」


艶のある銀髪の眼帯の少女が無愛想な態度で答えた。


「後は…」


クロード、グラツ、ドルフ、アルルの視線がセナに集まり、グラツが口を開く。


「アマギ・セナ、お前の属性は何だ」


「属性はありません」


「属性がないだと」


「そのようですね、入学時に行った適正検査の書類にもそう記されていますから」


クロードは手元の書類を確認しながら言った。


「なんだろうとグラツの偽装を認識したのだから、その平民も」


丸眼鏡を掛けた黒髪長髪の壮年男性、テイラー・ガストニアが現れた。


「しかし、平民風情には過ぎた力ね」


「そちらはいかがでしたか、ガストニア卿」


クロードは話を逸らすように訊ねるとテイラーは落胆したように答える。


「全然だめね、あのクロウリー家の当主が入学してくれれば良かったのに」


「それでその当主は?」


グラツはテイラーに聞く。


「挨拶に来ただけだから帰ったんじゃないかしら?」


「そうですね、何せ皇国専任魔術師ですからお忙しいと思いますから」


「いい加減、此処に連れてこられた理由を説明してくれる」


アルルは少し威圧的な態度で話し込む教師達に言う。


「生意気な態度ね、スカーレット」


「まぁ、今は抑えてください」


クロードはテイラーを宥めつつ、生徒三人に向きを直す。


「君達を呼んだのは優秀な人材の力を試させてもらうためです」


「優秀なのは否定しないけど何故俺達が」


ドルフはテイラーに聞く。


「それはアルベルト教官の隠滅術式(ブラインド)に反応を見せたからです」


「あんなもの見えたくらいで呼ばれたわけ」


アルルは些細なことだという風に言う。


「隠滅術式は隠蔽を隠蔽する術式ですから、そう易々と見抜けるものではないのですよ」


「六名家の一角であるのにそんなことも知らないのね」


テイラーの言葉にアルルは睨み付ける。


「同じ目、全く忌々しいわね」


テイラーは思う。睨み付けるアルルの目を見て、別の人物と虚像が重なる。


「では、お前達の力を見せてもらう」


グラツは術式の織り込まれた手袋を両手に着ける。


「スカーレット、来なさい」


テイラーはそうアルルに言うと修技場の扉の一つに入っていった。


「アニエスト君は私と」


クロードはドルフに声を掛け、扉の中に消えた。


「で俺はお前と言うわけだが」


残されたセナにグラツが言う。


「聞くがお前はシルバヌス戦役を知ってるか?」


「名前だけなら聞き覚えがあります」


「そうか」


グラツは少しの間の後に扉に手を掛ける。


「ついてこい」


前者の二組同様に二人も扉の中に消える。


☆★☆★☆★☆


修技場の一室、左目に傷のある中年男性、グラツと長い黒髪を後ろで一つに纏めた男子学生、セナが対峙していた。


「さあ、見せてみろお前の力を」


グラツは術式の織り込まれた手袋を着けた左手を握り締めては開き、握り締めては開きを繰り返しながらセナの出方を待っている。


(さて、どうしようかな…あの手袋に施された術式は力の増幅のようだけど)


セナは考えながらグラツと周囲を観察する。


グラツとセナのいる場所は部屋の中だというのに荒野の大地が広がっている。


足元には一振りの剣が無造作に転がっており、セナはそれを拾い上げる。


魔晶剣。その剣は水晶の刃の中に星が煌めくような粒子が瞬いている。


セナは手にした魔法媒体を構える。


「来ないというならば…」


グラツは左手は動きを止めて強く握り締めると赤い放射光を放つ。


紅い光を放つ握り締めた拳が地面に振り下ろされる。


セナの目の前の地面が隆起し、石の柱が飛び出した。


「土の造型…」


更にセナを囲むように石の柱が飛び出し、セナの姿が見えなくなった。


グラツはセナがどういう出方をするか仁王立ちでセナを囲む石の柱を見据える。


「さて、どうしようか」


セナは閉鎖された中で思案しながら石柱に手を触れ、魔力の本質を見る眼(魔眼)で構築された術式を読み解く。


「命令術式は単純なもの、構造術式は手袋の術式による物質強化」


石柱から手を離し、魔晶剣の刃の腹を指でなぞると術式魔方陣が並ぶように現れる。そして、手の甲で刃の腹を弾くと魔晶剣は凜とした音を響かせながら振動する。


それを軽く振るうと石柱は豆腐を切るようにスッと斬れて、放射状に倒れた。

セナの姿が露になり、手に持っていた魔晶剣の刀身が砕けて粒子となって流れ落ちる。


「このくらいは容易いか」


グラツは術式の織り込まれた手袋を右手にも装着すると左右の拳を突き合わせる。


「土よ、我が身に纏いて力と成せ、ゴレイオス」


すると足元から土が盛り上がり、グラツを包み大きな土塊を造り出すと土塊は形を人形へと変えて表面を石のように硬化したゴーレムとなる。


「これがシルバヌス戦役の悪魔」


セナはゴーレムを見上げながら呟き、手元の刀身のない剣に視線を落とす。


「此処なら他の目も届かないだろう」


セナは眼だけを動かして荒野を見回すが一瞬、動きを止める。


「大丈夫かな」


直ぐに他を見回し、何かを確認し終えると瞼を閉じる。


「我、真実の力によりて生きながらに万象に打ち克てり」


セナは口頭と指を用いて言葉と動作で二重の詠唱する。


「デュアルスペル。まさか、入学したてのひよっ子が、それも平民が使えるとはな…噂は本当かもしれんな」


ゴーレムを中から動かすグラツは呪文を聞き、虚空に書かれた術式を視認すると少し驚いた声を上げる。


「軍功貴族でも…」


セナは残念な表情を浮かべ、刀身のない剣を構えるとゴーレムは両手を振り上げて、地面に叩き付ける。


「クレスト・クエイク」


衝撃により、地表に風が吹き荒れ、砂埃でセナの姿が消える。そして、視界不良の中、地響きが鳴り渡り、中心部から外周に向かって段階的に大地が断層隆起して多数の細い石柱を乱立させる。


「少しやり過ぎたか」


辺りを覆っていた砂埃が晴れるとゴーレムを中心にして大輪の石の花が一輪、咲いていた。


「この空間で死ぬことはないが…」


グラツは何かに気付くと目の前の細い石柱の一本が崩れ落ちる。


「…まさかこれを」


石柱と隆起した地面は塵芥と消え、ゴーレムの目の前には一直線の道を出来る。


その先には刀身のない剣をこちらに向けるセナが立っていた。


「しかも、無傷で…」


刀身のない剣が砕け、粒子となり流れ落ちる。それと共にゴーレム・ゴレイオスを縦断するように真っ二つに一筋の線が入る。


「な、何だと…」


動揺と驚愕が屈強なグラツを襲う。


ゴーレムは崩れ落ち、グラツの姿が露になり、地に着地する。


「此処までだな、力量は十分に見させてもらった」


グラツは気を取り直して言うがグラツの額には冷や汗が滲み出ていた。


そして、グラツは背後に現れた扉の中へと姿を消すと扉も消えた。


それを確認したセナの背後に扉が現れ、セナも扉の中へと姿を消す。


セナが扉を出るとそこには先に出たグラツとクルスがいた。


「クルスがどうして此処に?」


「セナが何処に行ったのか気になってな」


あの視線はクルスの?いやでもあの透視術式は…。


セナは一人の人物が思い当たる


そして、他の二組が使用していた扉が開く。



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