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01 魔術学院


皇都の中央区、城郭からも程近い場所にある魔術士を育成する為の学校、マクスウェル魔術学院。


「あれが例の」


「平民ごときが魔術を学ぶなど烏滸がましい」


聞こえるように言われる陰口の中、入学式典の行われる講堂に向かって歩いている黒髪長髪を後ろで結んだ少年へと後ろから突然、声を掛けられた。


「ひどい言われようだな」


その人物は入学試験の際に偶々隣に座っていた少年、クルス・シリアルだった。


「まぁ、貴族連中は平民を見下しているからな」


黒髪長髪の少年は立ち止まらずに後ろを歩くクルスに言う。


「君もその貴族でしょう?」


「家は貴族と言っても商業上がりの貴族だからな」


突然、周囲がざわめき、先程まで此方にあった視線が別に向けられる。


「おい、あれ」


「どうして六名家の当主が」


講堂の入り口のど真ん中で仁王立ちしている艶やかな金色の髪の十四歳くらいの少女がいた。


「さっすが名門貴族、雰囲気が違うな」


その少女、アナミリス・クロウリーは真っ直ぐに二人の方、というか黒髪長髪の少年を見ている。


「遅いわよ、アマギ・セナ」


セナは深くため息をつくとアナミリスの横を通り過ぎる。


「どうして君がいるのさ、公務じゃなかったの?」


「えぇ、だから此処にいるのよ」


「いったい何の」


「新入生達への挨拶をね」


「今朝気付くべきだったよ。いつもなら外出するときは必ず声を掛けて出ていく君が何も言わずに出ていったんだから」


「二人は一緒に住んでいるのか?」


セナの言葉からクルスはふと疑問が浮かび訊ねた。


「僕はクロウリーの家に居候していたからね」


「セナ、いえ、アマギ・セナ」


アナミリスは改まってセナの名を呼ぶ。


「ミリア、急に何を」


「入学おめでとう、まだきちんとは言っていなかったから。あと…」


アナミリスは一冊の本をセナに渡す。


「お父様から頼まれていたものよ」


「先生から…ありがとう」


セナは呟いた後に心の中で言う。


「クロウリー様、こんなところにおられましたか。もうすぐ始まりますので席の方に」


アナミリスは講堂内から現れた教師に連れられて中へと消える。


「俺達も早く中に」


クルスはそう言い、講堂へとセナを促す。


辺りにはもう二人以外の姿はなく。二人は急いで講堂内へ入る。


☆★☆★☆★☆


小一時間ほどで式典が終了し、学生達は予め通知されていた教室へと歩みを進める。


「よっ、どうやら同じ教室のようだな、セナ。まさか、お前が首席だったとはな」


「身分が身分だし、あまり悪目立ちしたくはなかったけど学院理事長に頼まれて挨拶はしたけど」


「まあ、あの当主様もそれを分かっててうけたんだろうな」


「ほんとに頼りになる幼馴染みだよ」


「そりゃ、頼りになるだろうけどこれからはあまり頼らないほうがいいと思うけどな」


クルスは少し声を落として言う。


「向こうは六名家に名を列ねるクロウリー家の当主であり、国家専属魔術師だ。平民と交流を持つことをよく思わないものもいるだろうからな」


「分かってるよ」


セナはそうクルスに答えると改めて肝に命じる。


「そう、今まではクロウリー家の中に止まっていたから使用人だろうと軽視されていたけど、いまは平民、アマギ・セナという学生として見られている」


「本当に君はいい奴だよ、出会った時から」


「俺も元平民だからな、ただ仲間が欲しかっただけだ。それに爵位を持っているのは親父だしな」


クルスは笑顔で言うとセナは手を差し出し、クルスはそれを握ると握手した。


「改めてよろしく、クルス」


「あぁ、セナ」


二人は教室へ入ると先に席に座っていた者達の視線が集まる。


だが、そんなことは分かっていたかのように二人は入口から程近い席に座った。


教室内の席は段々になっておりまるで大学の講義室のようになっている。


暫くして教室に二人の人物が入ってきた。


「全員、揃っているようだな」


左目に傷のある中年男性は入ってくるなり、全体を一瞥する。


「私の名はグラツ・アルベルトだ。お前達の担当となる教官だ」


「グラツってあの戦場の鬼神…」


学生の一人が呟くと学生達がざわつく。


「私のことを知ってる者もいるようだが…」


グラツは背後にある黒板を平手で叩き付けると入口で全体を見ていたもう一人の人物が三方向を見ると名簿に印を付ける。


学生達は何事かと目を見張る。一部の学生を除いて。


「…私の担当は主に実戦的な戦魔を教える。故についてこれない者は例え貴族であろうとも容赦せん」


「さすがにそれは不味いですよ、アルベルト教官」


入口にいた人物、眼鏡を掛けた青年男性がグラツに宥めるように言う。


「皆さん、私はチェイサー・クロード。補佐官です」


クロードは端的に自己紹介を終える。


「今日はこれで終わりです。本格的な授業は明日からとなります。あと…」


教壇上にある机に置いてある名簿を手に取る。


「これから呼ぶ、以下の三名は私の元に来てください。アルル・スカーレット、ドルフ・アニエスト、アマギ・セナ」


三人は黙ったまま席を立ち、クロードの元に集まる。


「では、私に付いてきてください」


グラツとクロードと共に三人は教室を出ていった。


「あいつら何かしたのか?」


「あの平民ならともかく、六名家の一つスカーレット家の令嬢とゴルティアの王族だぞ、あり得ないだろう」


「そうだな、なら何なんだ」


「しらねぇよ、それより明日から始まるあの教官の授業のほうが気がかりだ」


教室に残っている貴族達はそこかしこで出ていった三人ついてやグラツ教官についての話をしている。


クルスはそういう貴族連中を尻目に無言で席を立つと一人、教室から出ていった。



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