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006 魔物と初会遇(2/3)

 と思って、ヒクイドリ事案に参加したのだが、参加人数が想像以上に少なかった。

 赤髪のアグネータさんをパーティリーダーとする冒険者“疾風迅雷(アウステル)”の3人と、村の自警団(もんばんたんとう)から脳筋(ベンノ)を含めた4人、ヒクイドリの侵入を報告した村人のうち一人が案内人として参加、そして最後に、俺を入れて合計9人。

 少なっ!

 村の存続危機!的な雰囲気が醸し出されていたように見えたんだけど違った?


 目撃場所を目指して急ぐ。

「さっさと、尻尾を出しやがれ。俺のこの槍で一突きにしてやるからよ」

 そして、コイツ。脳筋ベンノ。未だに、俺に向かって敵対心むき出しである。

 事案参加の判断は、失敗だったかも知れない……。大丈夫か、俺。

 村から貸し出された刃長(じんちょう)60cmの剣の腹を軽く叩く。刃がないので、鞘もない。素振りで使ってた奴は貸し出されなかった。


 耕作地は焼畑農業のように森林破壊を伴う規模のものではなく、森の中を切れ切れに開拓して行っているような感じのものだった。

「大丈夫ですよね。私は戦えませんよ」

 俺の後ろで、案内の村人が村の自警団の一人に訴えている。ヒクイドリに威嚇されて逃げ出した時の恐怖を引きずっているらしい。

 そう最初は、俺はこの集団の最後尾を歩いていたのだが、俺の後ろに脳筋が回り込んできたので前に移動したのだ。

 コイツ、目的をはき違えてないよね。


 集団の前では、冒険者たちがヒクイドリとの遭遇時の対処を話している。

 後ろの案内人のドキドキ話には加わる方術(すべ)がない。さらに後ろを振り向けば、にらむように見てくる脳筋と目が合うので気が重い。

 必然的に、修二は廻りの風景を眺めるように歩いていた。

 アグネータさんが案内人を呼んで場所の確認をするためか立ち止まった。この集団も合わせて立ち止まる。


 ふと、草むらに視線を寄せた時に、砂色の丸いもふもふの一部が目に入った。丸いもふもふが隠れた草むらからは、そのもふもふからのものであろう長い耳介(じかい)を覗かせている。

 ん、あれは。

 思わず、道端(みちばた)に寄って姿を確認しようとすると、もふもふに接近を気付かれたのか、ぴょんと草むらの奥の方に移動された。

 が、その際に後ろからではあるが全体の輪郭(シルエット)が確認できた。

 ウサギだ。

 後ろからでも、口元をもぐもぐ、ひくひくと動かしているのがわかる。マジか、超かわいい。

 さらに一歩詰める。奥に逃げられた。

 触りたいが、これ以上のストレスを与えるのも、ちょっとはばかられる。

 もぐもぐ、ひくひくが止まった。

 次いで、こちらを見て、明らかに目を細められた。黒目が赤い光を反射したように見えた。

 そして、額から伸びた角?羊のような角が耳介を巻くようにクリンと伸びていた。

 えぇ~っと、眉毛の見間違いじゃないよね。

 思わず、前かがみに確認の視線を向ける。

 が、その瞬間、イヤな緊張感(プレッシャー)を受ける。と同時に角ウサギが身体をたわめたのがわかった。

 なんか、本来の意味でヤバイ。

 修二は軽くバックステップを踏んだつもりだった。

 それは廻りから見れば飛び退るかの勢いで、修二は道幅を越えて背後の樹に自らの背中を打ち付けることになった。

 呼吸が止まるほどの衝撃。でも、自爆。

 が、修二は同時に腰に帯びていた剣を右手で身体の前に持ってきていた。

 その剣の腹が硬質な音を立てる。

 角ウサギが跳躍をみせ、修二の腹部を目掛けて突っ込んできていたのだ。

 角を剣の腹で弾かれて、宙に浮いた角ウサギの腹部にナイフが突き刺さった。

 弾かれるように、撃ち落された角ウサギ。

「大丈夫?」

 アグネータが、驚いた表情で近寄ってくる。

 角ウサギから、ナイフを抜いて、耳を持ってぶら下げたもう一人の男の冒険者が修二に笑いかける。

「大丈夫っスか。丸ウサギ相手にこれ程の大立ち回りを演じたのを見たのは初めてっス」

「丸ウサギ……」

「そうっス。丸まった角の生えたウサギだから、丸ウサギ」

 俺の呟きに男の冒険者が答える。

 マジか。そいつは丸ウサギなんて言うやさしい名前じゃなくて、本当は鬼ウサギとか言う名前じゃないの。もしくは、せめて、“弾”丸ウサギとか。

 どうやら、彼がナイフを投擲(とうてき)して鬼ウサギじゃなくて、くっ、丸ウサギを仕留めてくれたようだ。

「すみません。助けてくれて、ありがとうございます」

 修二は立ち上がりつつ、礼を述べる。う~、背中が痛い。ちょ~痛い。やっぱ、立てない、座り込む。

「こんなナリでも、一応、魔物だから気を付けないとダメよ」

 アグネータが、背中を擦ってくれる。

 ナイフを投擲してくれた彼=ヘンリクが、「ほら、コイツも魔物だから」と胸元のふさふさした毛をかき分けて硬組織になった部分を見せてくれる。

 そして、その奥から濁った色の小さい石ころをえぐり出し、手の平にのせて見せてくれた。

 魔物には体表面に硬組織になった部分があり(この部分を化石化(タフォノミー)というらしい)、その奥に必ず魔結石というのがあるんだそうだ。

 逆に言えば、それがあるのが魔物ということである。

 強い魔物からは、より大きく、より透明度の高い魔結石が取れるんだとか。

 魔物は通常の獣よりも行動的で、より多くのエネルギーを必要とするためか、雑食性で何でも食べるのだとか。

 この丸ウサギも、草でも木の実でも昆虫でも獣肉でも、ついでに自分のウ〇コも食べる。暴食スキルでも持っているのではないかと疑ってもおかしくない。ちなみに、最後の(〇ンコ)は元の世界のウサギも食べる。

 マジか。と言う事は、たかだか30cmにも満たないウサギに、俺は捕食の対象として見られたってことなの……。

 なんか、今も現在進行形で背中のほうから捕食の対象として識別されているような感じを受けるが、たぶん、気のせい……振り向いちゃだめだ。

 背中が痛い。でも、擦ってもらえると、痛みは和らぐ感がある。でも……振り向いちゃだめだ。


 顔を上げると、脳筋と目が合った。

 不機嫌そうな面で、「ケッ」って言われた。

 なんなんだよ、アイツは。



「ケッ、丸ウサギ相手に何も出来ない奴が、何しにきてるんですかねぇ~」

 あ~あ~あ~、きこえない。

「それとも、何か。僕は丸ウサギにも何も出来ないよ~アピールか。だから、放火なんかできましぇ~ん、ってか」

 あ~あ~あ~、きこえない。

「俺は、だまされないからな、ケッ」

 なんなの、アイツ。ムカつく。やっちゃう。やっちゃていいの。

 待てよ。それがアイツの作戦か。挑発して、俺が逆上するのを待ってるとか……いや、ないな。アイツにそんな頭は無い。

「少し静かにできないか。もうじき遭遇予定(エンカウント・)地点ポイント)に着く」

 アグネータが、暗赤色の眼を脳筋に向ける。

 そうだ。静かにしてろよ。今はそれ、関係ないだろ。

 だいたい、身に覚えのないことをネチネチと言われる身になってみろよ。

 被害者なら、何をしてもいいのかよ。

 そもそも、門番のお前がしっかりと仕事をしてたら、そんなことにはならなかったんじゃないの。

 言葉に出したい。でも、出すのはマズい。

 あ゛ぁがぁぁxx~、イライラする。


 ()(かく)、今は、後、少しで目的地に着くらしいから、集中しないと。

 ん、そう言えば、とにかくって、こういう漢字で書くよな。マジか、ウサギの角は有りなのか。


筆者 注)修二の勘違いです。兎に角は、“問題はあるがそれは取り敢えず置いといて”という場面で使いますが、漢字は“亀毛兎角(きもうとかく)”からの当て字(・・・)のようです。“亀毛兎角”は、亀に毛や兎に角は本来ないもので、現実には有り得ないと言う意味です。


 ウサギ相手に醜態をさらしたのは事実で、ポウル君に聞いた情報から判断すれば、真剣にやらないと怪我だけじゃすまないのがヒクイドリという魔物のようだ。

 背中を擦ったり、身体を左右に捩じったりして、先程の身体の具合を確認しつつ、歩きを再開する。

 自警団の一人がアグネータ達に、ヒクイドリの対処の確認を行っている。

 ヒクイドリは積極的に人を襲ったり、農作物を荒らしたりする魔物ではないらしいが……。

「討伐するしかないよ。そもそも、だから、冒険者(わたしたち)に依頼したんだろう」

「ヒクイドリの羽根は価値もあるっスからね」

 アグネータの話に、ヘンリクが続ける。

 希少価値があるため収集家もいれば、業務用としても漁業者その他に取引があるんだとか。

 ちなみにヒクイドリの炎羽は適切な角度で振ると、燃える。振り続けると燃え尽きてしまうが、わずかの間であれば元の状態の羽根に戻る。本当に幻想(ファンタジー)である。

 どのくらいの数が侵入したのか次第だけどと前置きがあって、神殿の結界を越えても大丈夫なことを覚えた獣は、追っ払っても再度それを越えることにためらいはないだろうとのこと。

 それを聞くと確かに、あとあとの心配を考えたら、村としても、今、対処したほうがいいだろう。

 それにしても数とか確認しないで逃げちゃったんだ。まあ、でも、そうかな。狼がでたぁ~、1頭、2頭、3頭……なんて、冷静に数えないか。

 俺は何をしたら良いのかをアグネータに聞く。

 アグネータ達からは、ヒクイドリには“疾風迅雷(アウステル)”で当たるので、残りの俺たちは廻りの警戒と打ち漏らした時に魔物(ヒクイドリ)が村の奥の方に行かないように牽制してくれるだけでいいと指示された。


 本格的に目的地に近づいたようだ。

 案内してきた村人はここに止まり、ヘンリクが斥候に出かける。

 俺も少し離れてついていく。迷惑かも知れないが、どんな奴かも想像できてないのに、いきなり立ち向かうのはちょっと遠慮したい。さっきのウサギの例もあるし。

 ヘンリクはすぐに修二に気付き、腰を落として近づいてこいと、手の動き(ハンドサイン)で伝えてくる。

 ヘンリクの横に場所をとると、ヘンリクが無言で指し示す方を、茂みから覗き込む。

 そいつらは、畑の中に居座っていた。首を前後に振っている。

 うっ、結構デカイ。

 だが、想像していたフェニックスじゃなかった。ダチョウほど首は長くないがあんな感じの造作で、頭の天辺までの高さが150cmくらいありそうだ。

 待てよ。ダグリッチを小さくした首の細い版と言ったほうが伝わるか。この世界の鳥はもしかしたらアレがデフォルトなのか。

 羽根は緑っぽいけど、頭からのど、胸元にかけては鮮やかな青だ。頭に飾り羽根のようなモノがある。目つきがちょ~悪い。ハシビロコウを超える目つきの悪さだ。

 数は、1、2、3羽か、思ったよりも少なかった。

 一羽が脚で何かを押さえつけて、盛んにクチバシで突いていると思ったら、木かなんかの燃えさしのようなものだった。

 マジか。そんなの食ったら、癌になるぞ。

 ヘンリクに肩を(つつ)かれた。親指で後ろを差す。四つん這いでこそこそと茂みから後ろに下がる。


 皆のところに戻ると、腕を組んだ脳筋からにらまれた。

 まあ、確かに今回は俺が悪い。軽率な行動かも知れないけど、心の準備が必要だったんだよ。

 ただ声に出すのは、なんか、嫌だったので、頭を軽く下げた感じでにごす。

 そして、ヘンリクの報告の後、アグネータの指示を受けて、ヒクイドリの討伐に向かう。



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