表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/175

083 防衛の準備

 翌朝、“燦自由使(さんじゆうし)”のプーラたちが勤める店舗から、城壁に向かう裕樹たちの姿があった。


 当初の予定では、応援で集まった冒険者のために解放された王城の一郭で寝泊まりするはずだったのだが、王城の閲覧室での調べ物の後の夕食時にプーラたちも同じように食事に有りつこうとしたところ、外交部から拒否されたのである。

 もちろん、理は外交部にある。

 ここで用意された食事、それは依頼料に含まれる類のものである。森の都(タナイス)に居を構えるものが食していい訳がない。それでは、国から(おご)られるただ飯になってしまう。


 自宅に帰るように言われると、「それでは、スズネたちの護衛が務まらないニャァ~」と大声で暴れるプーラたち。


 仕方なく、“侍派有倶(じぱんぐ)”もプーラたちと一緒に店舗に宿を移動することにしたという訳である。


 “当然”と言う顔で“紅縞瑪瑙(サードニックス)”のヘヌリさんがついて来ようとしていたが、プーラの「うちは酒を扱ってないニャ」の一言と外交部から「ここでの食事にも酒はつきませんよ。飲むのなら、外でどうぞ」と付け加えられ、口から「ガァーン!」の効果音を出して立ち尽くしていた。



 城門を潜り外に出た後、城壁の具合を目視で点検する裕樹、修二、まさるの建築組と案内役兼通行手形の外交部のポアソンさんと部下の2人である。


「基部が11m、高さも4階建てくらいだから12m弱ってところッスかね、先輩」


「そうだな。これって、どんな設計なんだろ。

 擁壁って訳じゃないだろうし、城壁なんて日本で見ないからなぁ~」


「僕も土木は専門外だけど…。日本の城の城壁は土台だからね。

 自立型となると水圧を受けないダムみたいな感じになるんじゃないかな」


「こっちに来てから、地震にもあってないッスから、長期のみの設計ッスかね」


 刀剣のこじりで城壁の基部をちょっと掘る。外壁の石材が地中にも続いている。

 どれだけの深度にあるのかわからないが、しっかりとした地盤に重量を負担させているのだろう。


「風荷重も問題ない…、あっ、爆風とかの衝撃荷重かな」


 裕兄が苦笑いを浮かべながら、


「軍事施設に当たるからね。後は、水かな。水抜き穴も等間隔くらいで設けられているね。垂れている跡がないから、そっちの心配もないみたいだね」


 ?マークを浮かべるポアソンさんを連れて城壁の上に登る。

 城壁に登る階段前の警備の調べ(チェック)はポアソンさんがいるから、ほぼ素通りだ。


 城壁上部の回廊は幅が3mくらい、外壁部はほぼ垂直、内壁部は勾配60度と言った感じか。


 一定の間隔で側防塔が設けられているのが見える。


「ドワーフの技術士の協力の元、数年がかりでの施工だったと伝わっていますな」


 回廊際の狭間付きの胸壁をペシペシと叩きながら、ポアソンさんが教えてくれた。



「裕兄、どう思う?」


「ポアソンさん、オークが準備している攻城兵器って、破城槌と攻城塔でしたよね」


「そうですな。後は、分析班の報告では組立式の投石器を用意しているかもしれないとのことでしたな」


「破城槌って、丸太をぶら下げて釣鐘を突くように城門を叩くやつッスよね」


「やっぱり、城壁を壊すというよりも、侵入してどうこうしようと言うことなんだろうね。

 多いといっても1万2万の軍勢でこの城壁をどうにかできるように思えないよ」


 うん、うんと満足気に頷くポアソンさん。


「そうだよな~。なら、城門の防衛と攻城塔とかで城壁を直接乗り越えられないような人員の配置かな。

 だけど、この広さを補う(カバー)となると」


 外縁部の城壁は、ただただ長い。


「正門を攻めている間に警備の隙間を狙って、撹乱(チーム)が鉤付きロープで城内に潜入なぁ~んて筋道(シナリオ)もあるッス」


「後は、裕兄が昨日気にしていた潜入(チーム)による内応とか奇襲な」


 ちょっと顔色が青いポアソンさん。


「しっかし、この回廊って何もないッスね」


 まさるの言う通り、回廊の上に防衛設備がない。

 エルムト川にかかっている橋の前の正門上部の防水布の掛けられた2基のバリスタがあるだけである。

 ポアソンさんによると回廊上部の防衛は、魔法と短弓が考えられているとのことだ。

 魔法にも弓にも限りがある。


「今、冒険者って、暇なんですよね。

 この回廊の上に、このくらいの大きさの石(人の頭の大きさくらいを手で示す)と2、3mくらいの長さの丸太を運ばせましょう」


 ポアソンさんが頷くと部下の一人が走っていく。


「後、煮え油を浴びせるなんて言うのもあったんじゃない」


 時代小説の攻城戦にそんなのがあったと思う。


「それは、用意するのも後始末もたいへんそうだし、熱湯でいいんじゃない。

 火矢を使われたときの防備にも転用できるかも知れないからね。

 あっ、オークが弓を使った実績はないのか」


「熱湯って罰ゲームみたいッスね」


 こんな感じで素人によるなんちゃって防衛の準備が進められていく。


      ◆◆◆


 城壁を見終わった後は、城内の街並みを見て歩く。

 区画整備をしてから、建物を建築していったというだけあって街路も広く、焼き討ちによる延焼も有る程度は防げそうだ。

 しかし、オークの最終的な狙いが支配なのか殲滅なのか何なのか明確にできないと今一つ、どのような対策を取ればよいのかわからない。


 取り敢えず、女性陣の待つ店舗に戻って昼食の後、再び、皆で王立の図書庫に隣接している閲覧室に向かう。


 オークに対しては今までのように元となった生物の生態を基に対策をとっても意味はないだろう。

 かと言って、オークを人として見てどういった対策をとるのかと言われても、一般人の俺たちには戦場のイロハでさえわからない。

 オークについて、いろいろな文献を当たって知識を蓄えていくだけである。


 後、内緒で今後の目的である巨人族についてや南方の土地、及び直接、知恵の泉についての記載がないかどうかも調べている。


 別に話してもいいけど、「こんな時に何しているんだ」なぁ~んて怒られる場合もある訳で。


 午後一杯を調べものに費やしたが、オークについての成果は得られず、只、巨人関係についてはいろいろと参考になった。道中の役にたちそうだ。


 続きは、また、明日ということで、プーラたちの店舗に引き上げた。


      ◆◆◆


 翌日も朝に外交部のポアソンさんと部下の2人を店舗に出迎えて、城壁に向かう。


 すると早速、城壁では作業が始められていた。


 城壁上部に向かう階段の下に石が積まれているので、ついでなので皆で脇に抱えて登る。


 上部の回廊に出ると、城壁の外側から、整形された丸太が滑車で吊り上げられて運ばれている。


 城壁の外を見ると、城壁の外側の樹木を伐採して、枝葉を取り払い、丸太に整形している。

 冒険者だけではなく、街の住民である獣人たちも率先して手伝ってくれているようだ。

 聞いたら、昨日の午後に王自身が見回りに来て、鶴の一声で予算がついたようだ。

 暇をしてた避難民が率先して手伝っているらしい。日当も付くしね。

 裕兄が取り払った枝葉も乾燥させて薪にして、城壁上部に運び上げて欲しい旨をポアソンさんに伝えている。

 あの罰ゲームを本当に用意するつもりのようだ。水を沸かすための薪に使うんだと。

 ついでに、土も滑車で運び上げて欲しいと伝えている。何に使うんだろう。


 裕兄は次に胸壁の際に置かれた丸太について、胸壁にロープで結いつけて、敵が近くまで進軍してきたら、城壁外に吊るし鉈でロープを切断してすぐに落とせるように指示していく。

 ポアソンさんが後ろについて、裕兄の指示を作業をしている人に徹底していく。

 その光景は建築の現場の検査の時の設計者と現場監督と職人の関係と重なる。


 側防塔の辺りまで行くと、やはりこの出っ張っている部分にバリスタとかが設置されていた方が絵になる気がするけど、実際はここからだと射撃の対象が森の中にあるはずで、そこには攻城兵器などが運ばれてくる可能性も低いのかも知れない。


 そこに土は運ばれてきたので、それで裕兄が横5m奥行1m高さ2mの水槽を造る。

 真ん中の下部が半円状に窪んでいる。ここに薪を入れて燃やしてお湯にしようということだね。

 後は、ワームと呼ばれる銅製の蛇管(ホース)をポアソンさんに手配してもらう。

 水の用意はオークが迫って来てからでいいしね。



 そうして、午後はまた、閲覧室で調べものを続ける。


 少しの間はこんな感じが続くのかなと思いきや、翌日の昼過ぎに先日、出かけた奇襲部隊が船の数を減らして帰ってきた。


 オークの侵攻が始まったとの連絡を携えて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ