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久我崎ちゆりのレシピ帖  作者: 時田シューゴ
1/2

1.茄子と豚肉でスタミナ丼

「ふー、こんなもんかな」


春うらら、サクラサク季節。世間はいわゆるお引越しシーズン。

そんな事を考えているオレ、田辺 飛鳥(たなべ あすか)も、荷解きに勤しむ一人である。故郷の愛知県(といっても、金の(シャチホコ)のいる所ではない、マイナー地域)から、大学進学の為(といっても、赤門有する所ではない、マイナー大学)東京に引っ越して来た。


それにしても、父母姉二人、荷物に色々忍ばせすぎだろう。入れた覚えのない品物が次から次へと出るわ出るわ…夜のオカズまで入ってるとはどういうこっちゃ。てか入れたの誰だよ、ありがとうございます!と心の中で五体投地。

そんなこんなで想定以上に荷解きに時間が掛かってしまった。進学祝いに親戚の叔父さんに買ってもらった限定モノのG-SHOCKを見ると、時間は午後2時半。


「腹減ったなぁ」

そして絶妙にタイミングの悪い事に、隣の部屋から漂ってくるメシの匂い。ダメージ80、ライフ残り20ってか?


疲れてるし、近所のファミレスでも行こうかと思ったが、仕送りが期待できない苦学生の身であることを思い出した。

こういうのは最初に挫けたら負けなのだ。しかもオレ、体格の割に結構よく食べるし。初めて一緒に食事したツレには毎回驚かれている。


「とりあえず買い物にでも行くか…」

使い込んだ黒の長財布をジーパンの尻ポケットに突っ込み、外に出た。

ついでにいい匂いの発生源である隣の部屋のネームプレートをついジト目で見てしまう。407、百合崎(ゆりざき)



結果的に試みは失敗に終わった。目的地であるスーパーマーケットと真逆の方向に30分歩き、空腹の限界に堪えかねて牛丼屋へ突入、大盛り3杯を平らげた。

(それでもトッピングは我慢したんだ…!)

誰へとも知れない言い訳を繰り返しながら、スマートフォンを頼りに目的地へ赴き、買い物をして帰宅する。たまたま特売日にかち合ったのをこれ幸いと、両手に持った袋いっぱいに買い物をしたから、下手したら専業主夫にでも間違われたかも…なんてな。


買ってきた食材を冷蔵庫に詰め込み、冷やした麦茶で一息つく。腰を下ろすと、一日中動き回っていた所為で、身体に気怠さが回ってくる。

「いかん、このまま眠ってしまいそうだ」


ふと思いついて、テーブルのスマートフォンを手に取り、夕食に何を作ろうかとレシピを探してみる。一般的な男子同様、実家では自炊する機会が限られていたので、レパートリーは心許ない。


しばらく写真付きのレシピを繰っていくと、ひとつの画像に目が留まった。

「おっ、これ旨そう」

タイトルは『簡単!茄子と豚肉のスタミナ丼』。

丁度茄子も豚肉も今日の特売で買い込んだ食材に含まれている。投稿日は去年の夏、投稿者は『久我崎(くがさき)ちゆり』となっていて、「旬の茄子と豚肉で美味しい丼にしてみました!美味しく食べて元気をつけましょう!!」というコメントが、いかにも女の子らしい顔文字と一緒に添えられている。


流れで記事の発信元であるブログを開くと、他にもレシピが上がっていたので、ざっと目を通す。どうやらお手軽に美味しいものを!というコンセプトでやっているらしく、記事の一つ一つに決して少なくはない読者からの『お気に入り』マークが付いていた。


一人暮らしは始まったばかり。今後もお世話になるだろうと、オレもそのブログ『久我崎ちゆりのレシピ帖』をお気に入りの一番上に登録した。

茄子と豚肉のスタミナ丼・レシピ


【材料】

茄子

豚肉(薄切り)

サラダ油

胡椒

焼肉のたれ(エ◯ラ黄金の味 中辛がお薦め)

白飯


【手順】

1.豚肉は一口大に切る。茄子はヘタを落とし、縦半分に切り、スライスして7ミリ位の厚みの半月切りにする。

2.多めの油をフライパンに熱して茄子を焼く。油が染みて両面が焼けたら、一旦取り出す。

3.豚肉を焼く。途中で胡椒を少々入れ、臭みを取る。両面がしっかり焼けたら、茄子を戻して炒め、タレで味付けする。

4.温かい白飯の上に盛り付ける。

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