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傲岸不遜の王改め、最強チョロイン?

もう寝る。流石に無理。

 



 想像以上に、牢屋での生活は暇だった。


 牢屋の内部は、結構綺麗に掃除がされていて、ご飯は2食だがちゃんと食べれる物が出てくる。


 あれっ?結構快適?


 それに隣の牢屋に入ってるおじさんと、仲良くなってずっと喋ってるから、寂しくは無い。

 たまにゼルも顔を出してくれるので、それなりに牢屋ライフを満喫していた。


 隣の牢屋に入ってるおじさんは、アゼルさんと言い、元はあのエイアスの臣下であったそうだ。


 他の貴族の策略に嵌まり、牢屋に入れらているそうだ。ご愁傷さまである。

 私だったらあんなバカ王に仕えるとか、勘弁してもらいたいもんな。


 アゼルさんからこの国の事を簡単にだが、教えてもらった。


 この国の名前はエテルマーナ王国といって、大国のハインツ帝国ってのに領土を狙われているそうで、そのハインツ帝国との領土の境目にある結界を補強する為に、聖女の神力が必要なのだと言う。



 まぁ…私には関係が無いことですがね?



 そしてシャルドネさんですが、本人が地下牢などに来るのは、周りの人たちに大反対されてしまった為、シャルドネさんと同じ神官の人が、私の様子を時々見に来ますが、蔑んだ目で見てきます。


 被害妄想じゃ無いですよ?だって彼女、毎回私に文句を言って来ますし、口振りからどうやら私と一緒に召喚されたシオリに、傾倒しているらしく「シオリ様は素晴らしいっ!」とか「シオリ様は流石、選ばれし聖女!」などと褒め称えて帰って行くからね。

 隣で聞いていたアゼルさんも、グッタリする程の傾倒ぶりだよっ!


 因みに私は端から右から左に、彼女の話を聞き流していましたが、何か?


 でもお陰で名前を覚えましたよ、シオリってね。


 まぁ…どうでもいいんですけど。もう会うこともないでしょうしね?



 ***



 暇な私は今日も肥らない様に、牢屋の壁を使って倒立とかしてみる。


 限界を超えてやるっ!私の現在の倒立の限界は13分程度……今日こそは15分を越してやる。

 私はアゼルさんに頼んで、時間を計ってもらう事にして、倒立を開始した。


 アゼルさんには5分単位で時間を教えて貰っている。


「10分経過………」


 うげっ!まだ10分か?後5分か……ちくしょうっ!腕がプルプルしてきたっ!それに頭もクラクラしてきた。


 頑張れ私っ!負けるな私っ!!


「15分経過………」


 アゼルさんのその言葉を待っていたっ!


 私は力尽きると、身体を元に戻しながら、その場で倒れ込みながら叫んだ。


「いよっしゃ~!!15分持たせたぞっ!やった~!!」


「うんうん。頑張ったねぇ。凄いね~」


 アゼルさんが褒め称えてくれる。嬉しさもひとしおだっ!


「アゼルさんも時間を計ってくれて、ありがとうございます!」


「いやいや、私は時間を計っていただけだよ?頑張ったのは君自身だよっ!」


 この緩い牢屋ライフも2ヶ月も続くと、慣れちゃってね。快適だし、働かなくても食事はきっちり出てくるし………ニートの気持ちが良くわかる。

 ここはパラダイスだ。


 3日に一回は数時間ですが、外で日光浴できるし、お風呂は無理だが、浄化魔法で身体を綺麗にしてもらえるしで、至れり尽くせりだ。


 何だこの駄目人間製造場所は?


 ここを終の住みかにしたくなるから、困る!



 通りで、他の牢屋の住人たちは、牢屋番に「釈放だっ!出ろっ!!」って言われて泣き叫んで居たのかが、今なら理解できるっ!できてしまうっ!


 入れられたばかりの頃は、早く出たいとあんなに思って居たのに……。って、あれ?思ってたっけ?最初から快適だったからそんなに出たいと思わなかったかも……。記憶すら曖昧にするな、この環境。


 はっ!これがエイアスたちの策略だったとしたら、私はモロに引っ掛かってしまってるぞ?


 うわあ……どうしよう。


 私が悩みながら左右に頭をブンブン振っていると、突然背後から聞き覚えのある声に、話掛けられた。


「貴様っ!グネグネと気味の悪い動きをしやがって!」


 あん?この尊大な話し方は………。


「はあっ……。エイアスか……今さら何の様?」


 この国の王にして、私を快適な空間で駄目人間にする為に、この牢に入れたと推測される野郎だ。


「ぐっ……。貴様、全然懲りて無いな……。こんな薄暗い地下に閉じ込めたら、直ぐに泣き言を言って来ると思ったが、全然言って来ないし……。もしや……狂ったのか?だから先程は、グネグネ動いていたのか?」


 コイツの方こそ、相変わらず失礼だな。断じて私は狂ってなどいないっ!


「それで?ここから出してくれるの?」


 う~ん……出してくれと聞いたけど、出してくれたら、出してくれたで寂しいかも。アゼルさんも一緒に出してって頼んでみるか?


「………そう思っていたんだが、全然反省の態度が見られんし………。よっ……よし!ひとつ貴様に条件があるっ!それをクリアしたら牢から出してやるぞっ!」


 何だコイツ……。今閃いたみたいに装ったが、バレバレたぞ?ここに来たのも多分それが理由だな。


「分かりました………と、言いたい所ですが、私からもひとつ条件が……」


「何でだっ!貴様ごときが俺に条件を付けると言うのか!ふざけるなっ!!」


 私には条件を付けるくせに、自分には条件が付けられないと思ってたのか?


 本当に脳内がお花畑の奴だな?


「私は……どちらでも構わないけど?」


「ぐぬぬぬぬ~」


 エイアスの奴、唇を噛んでやがる。それほど嫌かよっ!?


「で、どうします?私の条件を飲むんですか?飲まないんですか?」


「ぐぬぬぬぬ………。じょっ…条件にもよるっ!」


 ほお……唇を噛むほど嫌だが、背に腹は変えられんって事か?

 しかし…私もエイアスの条件をまだ聞いてないので、お互い言い合えばいっか。


「ではエイアスの条件からどうぞ?」


「なん……何でだよっ!何か企んでるのか?」


「失礼な!私はだだ、高貴な身分の貴方に、先に発言する権利をお譲りしたまでですが?」


「んっ?そうか……高貴な俺の為か……そうかそうか………じゃあ言うぞ?」


 おい、おま…ちょっと待てっ!そんな社交辞令にもならない慇懃な態度で、騙されてどうするっ!


 コイツ……実は最強のチョロインじゃね?この国……こんなのが王で大丈夫かよっ!!


 私の心配にも全く気付かず、機嫌良く条件を喋るエイアスに、他人事ながら頭が痛くなる。


「で、俺の条件っていうのが、その……な?」


 うげっ。気色悪い。真っ赤な顔をして、モジモジしてるっ!


「………はい?何ですか?」


「……えっと……その…シオリ……ボソボソ……」


「全く聞こえませんが?男ならばもっと潔くはっきりと言ってくれませんかねぇ?」


 私が嫌みを言うと、怒ったようで怒鳴るような声で、聞いてきた。


「っ!だから!貴様が邪魔をした、シオリの恋の相手とは、どの様な奴なのだっ!!」


 ああ、そう言うことか。まあこんなにチョロインだし、あの腹黒なシオリに完全に誑し込まれてんな。


「教えても良いですが、こちらの条件を飲んでからですよ?」


 エイアスは、早く言えと顎で命令してくる。

 せめて会話はしろよっ!!と、イラつきながらも、今度はこちらの条件を告げる。


「隣の牢に入っているアゼルさんも、私と一緒に牢から釈放して上げて下さい。それが私の条件です」


 エイアスは私のその条件を聞いて、キョトンとしている。

  私は何を言うと思われてたんだ?


「そっ…そんな事で良いのか?分かった、直ぐに釈放してやるっ!それで、シオリの好きな男はどんな……………」


 私は急ぐエイアスの顔の前に、自分の手を出して話を遮るとこう言ってやった。


「釈放が先です。悪いけど私は貴方をそこまで信用してないから」


「なっ…何だと?ぶっ…無礼なっ!!」


「何が無礼ですか?か弱い少女を地下牢に入れたんだよ?そんな自分を地下牢に入れた相手を、どうやって信用しろと言うの?貴方が逆の立場だったら、信用するの?無理でしょ?」


 隣から、アゼルさんの「か弱い………?」という声が聞こえて来たが、無視する。


「なっ!王の俺が約束を守らないと言うのか?愚弄するなっ!!」


 はあっ……伝わって無いな。もう面倒になって来ちゃった。


「はあっ……。貴方が王なのは関係が無いよ。王とかは抜きで、一人の人間として私が貴方を信用して無いってだけ!だから先に牢から出してって事!」


 まあ牢屋ライフは快適だから、まだ出れなくてもいいし。もうなるようになれよっ!!


「ぐっ…ぐう………………良いだろう。だが牢から出たら絶対にシオリの好きな男の情報を教えてもらうからなっ!」


 悔しそうにそう言うと、エイアスは牢屋番に言って私とアゼルさんの牢屋の鍵をあけたのであった。






チョロインに成り下がった王の恋患い。

童貞?違いますよ。やることはやってますが、初恋だったってだけで……。

どうでも良いですが、いい歳した男の初恋って拗らせると厄介ですよね。

まあ相手の紫織も腹黒いし大丈夫か?

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