遂には牢屋に入れらた
誤字脱字…以下略。
ゆっくりと開けられたドアの中から、あの……えっと……やっぱり名前を思いだせんから、女が出てくる。
不安そうな表情でフラフラとこちらに近寄って来る。う~ん。あんな出合い方でなけりゃ、儚げだなとか思ったかもね?
と、そう思ったのは私だけじゃ無い様で、私には傲岸不遜な態度を取ったエイアスが、ふらつく女の腰を抱き寄せて支えてやる。
おい?私の時と随分態度が違うんじゃないか?
「あの……すみません…。こちらはどこでしょうか?私は一体………」
苦しそうに掠れた声で、弱々しく話す姿に胸を打たれない男は居ない。
「貴女は我が国に、聖女として召喚されたのだ。ふらついているのは、召喚のせいだ」
はあっ……。もうエイアスの中では彼女が聖女で決定みたいですね。どうでもいいけど。
そんなヤレヤレって空気を醸し出した私を、女が見てくる。
「あら……?貴女は確か……私の恋路を邪魔した酷い人………闇さんだったかしら……?」
おいっ!お前、わざと間違えただろ?
「…………夜だけど」
不機嫌に私がそう返すと、なぜだか知らんがエイアスが噛み付いて来る。
「おい、貴様っ!記憶が混乱して心細い女性に対して、もう少し気遣い出来んのか?」
庇うように女の前に出てくるエイアス。
マジでうぜぇなコイツ…。
私も混乱して額を床に擦り付けたけど、止めに入るどころかゴミを見るような目をしていた癖に………。なんたる差別だ。
「その言葉……そっくりあんたに返すがなっ!!」
指を突き付けて、叫んでやったど~!!けっ!スッキリしたっ!
私に指を突き付けられたエイアスは、ブルブル震えると大声で衛兵を部屋に呼び、こう叫んだのであった。
「このっ!無礼者めがっ!!ここまで品位が無い者が、聖女であるはずが無いっ!衛兵っ!この慮外者を捉えて、牢に入れておけっ!!」
バタバタと駆けつけた二人の兵士は、エイアスの命令通りに私の両腕を拘束すると、ズルズルと引き摺って行こうとするが、流石にシャルドネさんに止められる。
「貴方たち、お待ちなさいっ!兄様!まだ彼女が違うと決まった訳では…………」
「黙れっ!これは王命だ。逆らうことは、例えシャルでも許さんっ!!」
そうピシャリとシャルドネさんの意見を退けると、エイアスは、短く「連れて行けっ!」と、兵士に命令した。
部屋を出るときに、私は見てしまった。女の口元が醜く歪むのを。
そして理解した。ああ、ヤッパリわざとだったのかと。
まんまと乗せられてしまった訳だ。とんでもない強かな女だったのだ。
ちくしょう。
私はそのままズルズルと廊下を引き摺られた後、階段をどんどん降りていく。
「ちょっ!待って!どこに連れてくのよ?てか、引き摺るなっ!足がっ!足が超痛いっ!」
私が余りにも叫ぶので、二人の兵士は両側から持ち上げながら階段を降りてくれた。
「ふうっ。痛かった……。どうもありがとう!」
捕まえた人間にお礼を言われたのに驚いたのだろう、二人の内の一人が、話掛けて来る。
「何でこの状況でお礼が言えるんだ?」
もう一人が「おいっ!」って、たしなめる様に注意するが、私に話し掛けてきた方は止めるつもりは無いみたいで、私の答えを待っている。
「ん?だってそう思ったから!その気持ちを素直に言ったまてまだよ?」
「そうなのか?俺だったら捕まえてる相手には、言わないな……」
「そうか~。うん、まあそれが普通でしょ?私は普通と違うみたいだから……」
「そうだな…。俺も普通ならば捕まえた相手に話し掛けたりしないしな……」
そうだね。私は昔から変わってるって言われてたからな。
しかし家族も大分変わってて、濃ゆかったから別にそこまで気にならなかったな。
離れて再確認したよ、私の家族……濃いって。
喋っている間にも、歩いていて、私は薄暗い地下に連れて来られたようだった。
「ここは……?」
分かってるが、確認だ。
「地下牢だ。あんたみたいに王に逆らった臣下や、王城で犯罪者を犯した者を入れて置くんだ。薄暗いが、外の牢屋よりは清潔で飯も一応朝と夜に出る」
この兵士の人説明のお陰で、若干ほっとした。
「本当にありがとねっ!あっと………私の名前は夜っ!貴方のお名前は?」
「………………………………………」
あれっ?無言?何で………って、あっ!そうか……これから牢屋に入る囚人に名乗んないよね、普通。
私がショボーンと落ち込むと、彼は慌てて名乗ってくれた。
「俺はゼルだ…。じゃあな……ヨル……」
そう言うと、ゼルは牢屋番に私を預けると、もう一人の兵士と一緒に踵をかえして、去っていった。
私は知らなかったが、この二人の兵士は持ち場に戻る間に、こんな話をしていたのであった。
「おい、ゼルッ!囚人何かと話したりするなよなっ!」
「………分かってる…分かってるが、今回のあの子……ヨルが一体何をしたって言うんだよ!」
「お前………肩入れし過ぎだろ? まぁ話を聞いていた限りじゃ、悪い奴ではなさそうだったな……なんかバカ正直な感じはした」
「そうだろっ?」
勢い良くゼルは友人のディンの肩を掴む。
少し眉を寄せたディンであったが、ゼルを落ち着かせる為に、静かに語りかけた。
「だが、我が国では王の言うことは絶対だ。俺たちはしがない衛兵に過ぎないんだからな」
「分かってる………どんな理不尽にも耐えねばならない事ぐらい……分かってる」
「本当に分かっているのならいいんだが…な?」
ディンはゼルのほの暗い瞳の輝きに、コイツ……絶対分かって無いな……と、思ったのであった
牢屋って環境が整っていると。ニートにとっては最高の場所なのでは?とか考えたり。
まあ…ネット環境は無さそうだし、ゲームも出来ないけど、飢えて死ぬことはないよね?




