逃亡するなら今しかない
明けましておめでとうございます?
私がつまずいたトラップは私のお手製ツギハギ袋であった。
ヤバイ……ヤバイぞ。よもやイフラフト本人の目の前でネコババした金貨が飛び出て来やがるとはっ!
いや、飛び出て来たのではなくて、自分でつまずいた拍子に金貨が飛び出してしまっただけですが。
先見の明(冗談)がある私を持ってすら見通せてなかったよ、こんな結末…………。
って、ん? これってもしやコントか?コントなのか? 壮大な自作自演コント的な。
「………………………ヨル?」
「うひっ………………はひ?」
あっ噛んだ………イフラフトに名前を呼ばれただけで噛んじゃった。
でも恐いんだから仕方ないよ。物凄い低い声だったから間違いなくイフラフトは怒ってる。
流石の私もイフラフトの反応が恐くて顔を上げられない。
ただ口から意味もない渇いた笑いしか出てこない。
「あはあはあはは…………………………」
笑って何とかこの場の重い空気をうやむやに出来ないかと思ったが、ううっ………む、無理かな。
その時、どうにもならない空気を打開してくれる可能性のある人物が落ちてきた。
ミシミシッ…バキバキドサッ………………。
「うっ……痛っててぇ………………っお?」
そう、天井にめり込んでいたラギスタルが、自重で落下してきたのだ。
「…………おい、イフラフト!てめぇ……何しやがるっ!痛ってぇじゃねーかよ!」
お、おうっ。あんなにやられたのにまだイフラフトに突っかかる勇気………というか気力があったんだね。うん、あんたは勇者か?
「………………痛くしたんだから当たり前だろう? それで痛くなかったら、そっちの方がおかしいだろ?」
「うん?…………そうだな……それはおかしいか………な?」
ラギスタルの奴、単細胞……否っ! この脳筋めっ!超お手軽に丸め込まれてどーするっ!?
サルでも分かるぞ? イフラフトはあんたを痛めつけたって言ってる様なもんだ。
「ああ、おかしい。だから俺が行った事は正しいって事さ」
「そっかそっか。なら納得だなっ!!!」
「「わっはっはっはっはっ」」
コイツら何を笑い合ってるんだ? 何も笑える話なんてしてなかったけど?
私にはイフラフトの良いように丸め込まれたラギスタルの憐れな姿が浮き彫りになった感じしかない。
ラギスタル本人が気付いてないから良いんですけどね………別に。
まぁ両者が笑い合ってる間に私はトンズラさせて頂きますかね。
そ~おぉぉっとその場から離れる準備をする。床に散らばってしまった金貨は泣く泣く諦めるとして、私のお手製ツギハギ袋は旅には必要だからゆっくりとこちらに引き寄せる。
1番重い金貨がほぼ袋の中から出てしまったので、難なく引き寄せる事に成功する。
おまけに袋を持っていないもう片方の手で、机の上に置いてあったサンドウィッチをゲットするのも忘れない。
そして私は静かに気配を殺しつつ、部屋から逃走した。
フフフ………。イフラフト恐るるに足らん!魔獣を出し抜いてやったどーーーー!!!
私は意気揚々とイフラフトの家の中から脱出を果たしたのであった。
半額って言葉に大変弱いです。
つい余計な物を買い込んでしまいます。




